学校が終わると急いで帰り、15時から始まるサスペンスドラマの再放送を観ていた。
そして見応えのある濡れ場をビデオに録るのが日課。
タイマー予約はできるが、録画した後に編集することはできないんでリアルタイムで録画ボタンを押す。
そうやってお宝を録りためていった。
濡れ場はいつくるかわからないので画面から目を離せない。
濡れ場が来てから録画ボタンを押したのでは大事な部分が録れない可能性があるので、常に予測しながらみないといけならない。
濡れ場と思いきや、ベッドの横から犯人が出てきてお目当ての女優さんが殺されるシーンを録ってしまったり、濡れ場は必ずあるとは限らず、ずっとスタンバイしながら空振りに終わることもあった。
1年間、録りためた映像は10分程度。
友人から借りて初めてAVを観たとき、自分のやってきたことがどれだけ無意味だったか痛感し、サスペンスドラマは卒業となった。
スポーツだけでなく、「ビーバップハイスクール」や「ろくでなしブルース」などの不良マンガにも影響され、短ラン、ボンタンなど変形学生服に憧れた。
しかし制服がブレザーだったので、変形したものは販売されておらず、そこで針と糸を使って自分の制服を縫い始めた。
裾を部分を細くしようとしたがやり方がわからず、家庭科の教科書で必死に調べ、何度も針で指を刺しながら、失敗とやり直しを繰り返し、徐々の上達。
不良っぽくなればなるほど裁縫上手になっていった。
ある朝、学校に行くと顔に絆創膏を張った友人を発見。
話を聞くと昨夜、同じ塾に通う他校の同級生とケンカしたという。
1対1なら問題なかったが、友人1人に対し相手は大勢だったと聞いて怒りがこみ上げ
「敵を討とう」
仲間も合意したが、不良風の5人では太刀打ちできないと判断し、急遽、徴兵することにした。
「部活やってる生徒は全員」
と号令をかけると100人以上集まって、本物の部隊になってしまい、陸上や水泳など戦闘に不向きな部を外し、30名に絞った。
メンバーが決まり、不良マンガなら、イザッ!出陣となるが、部活動をやっているメンバーに支障がないように数日後、部活が休みの土曜日の午後に出陣することにした。
もちろんそれまで計画は口外禁止だったが、モテたくて仕方ない男どもが黙っていられるはずがなく
「こわくないっていったらウソだけど、やっぱりオレにとって大事な友人だからな」
複数のメンバーがあちこちでそんな会話をした結果、両校の教師にバレて敵討ちは中止。
「誰がいったんだよ!」
メンバーの1人が悔しそうにいう中、劇団ひとりを含む大勢が
(俺だ)
と思った。
根本的に大事なのは
「カッコいいかカッコ悪いか」
ある日の授業中、校庭から大きな音がして、先生を含めて全員が窓際へ。
鉄の校門をなぎ倒し、1台に車が校庭に侵入していた。
誰もが事故だと思ったが、車のドアが開いて、数名の男が飛び出し、学校へ向かってきた。
生徒が騒ぐ中、教師は職員室へ。
しばらくすると騒がしい声が聞こえてきて、いってみると車から降りてきた男たちが1人の生徒を袋叩きにしていた。
男たちは大人や高校生で、標的となった中学生はなす術もなくやられていた。
恐怖心で体が硬直したが、女子の叫び声を聞いた途端
(ここで出ていったらカッコいい)
体は自然に突進。
すぐに腹を蹴られ、床にうずくまり、立とうと思えば立てたが、気絶したフリをした。
助けたりやっつけるのではなく、カッコつけることが目的で
「1人で立ち向かったことでそれは十分に果たされた」
しばらくすると教師がかけつけ、男たちが逃げていくとゆっくりを瞼を開け、不思議そうに周りを見渡し
「そうか、俺、やられちまったんだな」
中3になると周囲はみんな最後の試合、夏の総合体育大会に向けて汗を輝かせて練習に取り組んでいた。
柔道部以降、運動から遠ざかり、寂しさと嫉妬を感じていたとき、バスケットボール部が人数が足りずに体育大会に出られないという情報をキャッチ。
バスケ経験はまったくなかったが、マンガ「スラムダンク」も好きだったので職員室のバスケットボール部の顧問を訪ねた。
「先生、人数が足りなくて困ってるんでしょ?」
「そうなんだよね」
「俺、入ろうかな」
「えっ本当に?」
「ただ1つお願いがあるんだ」
「なに?」
「キャプテンやりたい」
うれしそうだった顧問の顔が曇る。
「えッ?」
「いやだからキャプテンをやりたいんだ」
「いや、いくらなんでもそれは」
「ではこの話はなかったことに」
4人しかいなかったバスケットボール部は、新キャプテンを迎え、始動。
数ヵ月の準備期間を経て試合に出場。
しかしドリブルさえまともにできない素人キャプテンが率いるチームが勝てるはずもなく、あっさり1回戦負け。
ロッカールームで着替えているとき、みんな泣き始めたので、本当はそこまで悲しくなかったが、
「泣かなきゃ青春に置いてけぼりにされそうな気がして」
無理やり涙を流した。
そして顧問の総括があった。
「鈴木は誰よりも努力していた。
田中は背が小さいのに頑張った。
竹田は、チームのムードメーカーだった。
・・・・」
そして最後に
「えっと川島は・・・・声が出てたかな」
修学旅行の出発日、父親のT字カミソリで眉毛を細くしようとした。
最初の一剃りで右の眉毛の1/3を失ってしまい、バランスをとるために左眉毛をあわてて剃ったが、少し多く剃りすぎて、再び右眉毛へ。
繰り返した結果、眉毛は半分に。
泣きそうになりながら、だけど休むわけにはいかず、下を向きながら登校。
案の定、平安時代の貴族かとバカにされ、不良マンガの主人公のようになるはずがナメられすぎのお笑いキャラに。
休憩のためにバスがパーキングエリアに入ったとき、下を向きながらトイレへ向かう途中、サングラスが売ってあるのを発見。
眉毛を隠し、不良アピールもできるというスーパーアイテムを即購入。
帰り道、他校の修学旅行バスを通りがかったとき、リーゼント、茶髪を決め、眉毛もキレイに剃ったホンモノの不良たちがいて
「おい、見ろよ。
なんだアイツ。
バカがいるぞ」
「キミ、カッコいいね。
ダハハツ」
「どこで売ってんだよ、それ」
バスから身を乗り出して挑発された。
悔しさと恥ずかしさで顔が真っ赤になったが、立ち向かうことなどせず、かなり無理のある距離だったが聞こえてないフリ。
幸いサングラスは、剃りすぎた眉毛だけでなく潤んだ瞳も隠してくれた。
高校は
・家に近い
・制服が学ラン
という理由で工業高校を選んだ。
中学3年間をブレザーで過ごし、やっと変形学生服が着れると思ったが、実際に入学してみると校則が厳しく、毎朝、校門で教師がいて服装検査に引っかかると校舎に入れないどころか、高価な変形学生服は没収されて卒業式まで返してもらえないというルールがあった。
それでも変形学生服を着たい生徒たちは、数人の真ん中に匿ってもらったり、学校近くの公衆トイレで標準の制服に着替えたりして、なんとか服装検査をくぐり抜けけようとした。
彼らにとって茶髪も制服と同様、絶対に譲れないポイントで、一部分だけ染めて教師の前では隠したり、学校の手前で黒いスプレーをかけたり、
「おじいちゃんがアメリカ人なんです」
とウソをついて通過する者もいた。
中学校では違反しても叱られるだけだが高校では停学や退学という処分があるため、劇団ひとりは学校指定の標準服を着て
「これじゃ何のために、この高校に入ったんだ!」
と憤った。
入学直後、体育の授業で柔道をやることになった。
共学とは名ばかり、全校で女子生徒数名という実質、男の世界で自分の力を誇示すべく授業とは思えない熱戦をくり広げた。
そして男ばかりの学校に通いながら「合コン」を初体験した。
他校の女子と合コンが決まると1ヵ月前から服を買ったり、髪を脱色したり、ホテルに連れ込む話を童貞同士でして盛り上がった。
待ちに待った当日、JR千葉駅で待ち合わせをした女子メンバーに会うと、全員、一気に緊張。
放心状態のメンバーもいた。
カラオケ店まで女子と50mほど距離をとって移動。
店に着くと男女交互ではなく、完全に男子チーム、女子チームにわかれて着席し、まず自己紹介をすることになったが、ただ名前を言い合うだけ。
カラオケが始まっても葬式のような空気が漂った。
やがて男たちは勝負を捨て、男だけで盛り上がり、歌い続けた。
こうして初合コンは終わったが、ファーストキスは高1、場所は花火大会、相手は他校の女の子だった。
あるとき、言葉遣いで教師に叱られた劇団ひとりは、その日のうちに学校をやめた。
1年弱で退学した息子に両親は
「辞めるのは自由だけど高校ぐらいは卒業しろ」
といって各高校の次年度の入学パンフレットを渡した。
その中で服装自由、バイク通学OKというのが気に入って夜間高校に入った。
1時限目は、17時20分開始。
それが終わると食堂に行って給食。
すべての授業が終わるのは、21時過ぎ。
全日制に比べ、夜間は年齢層は幅広く、50代の女子高生もいた。
一見自由で楽しそうだが、様々な理由で続けることは難しく、卒業するのは入学した人数の半分程度。
机やイスは全日制の生徒と共用だった。
ある日、机に
「目玉のおやじの体部分をナイスバディにした目玉のネエさん」
の絵を落書きすると、翌日、
「なにこれ!かわいい!」
というメッセージが書かれてあり、字から女子であることは明白だった。
ラブコメのようなシチュエーションに胸がキュンとして、それから毎日、落書き。
絵を描いたり、クイズやなぞなぞを出していたが、ある日
「今度は君から問題出してよ」
とメッセージを書くと、翌日、
「2x>yのとき3(2x-3y)>4(-2y)を証明・・・」
と問題が書かれてあって、
「答えられるわけがない」
恋は終わった。
ある日、「ごっつええ感じ」が終わった後、フジテレビから日本テレビにチャンネルを替えると「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で高校生がネタを競い合う「お笑い甲子園」の出場者募集の告知が流れた。
10秒くらいの映像だったが、面白半分で友人とハガキを出した。
するとテレビ局から連絡があってオーディションを受けることになり、友人と一緒に向かった。
「最近は熟女ヌードが流行ってるね」
「あんなババアが脱いで気持ち悪ぃな」
という悪口から
「俺も有名人になりたいな」
「どんな人になりたい?」
「やっぱりC.C.ガールズかな」
「おい、俺がいってるのはなりたいだよ。
それは「やりたい」だろ」
という下ネタまで、生まれて初めてつくった1分程度のネタを披露し、合格。
「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」でテレビ初出演。
「お笑い甲子園」に「バーテックス」をいうコンビ名で出場し、関東代表に選ばれた。
「お笑い、本気でやるなら紹介するよ」
といわれ、太田プロダクションに入った。
しかし相方は
「トラックの運転手をやりたい」
といったため、「バーテックス」は解散。
別の友人を誘って新しく「スープレックス」というコンビを組み、千葉県の実家から新宿区四谷にある「泣く子も黙る太田プロ」まで片道1時間かけて通った。