ピアース・ブロスナン
5代目ジェームズ・ボンドに抜擢されたピアース・ブロスナン。歴代最高といってもいい甘いマスクの007です。しかも、何というかスタイリッシュなんです。身のこなしとか、服装の着こなしとか。こりゃ、女性がほっとかんでしょう。

ピアース・ブロスナン
ピアース・ブロスナンが登場するのは1995年11月に公開されたシリーズ第17作 目の「ゴールデンアイ」からで、2002年11月公開の「ダイ・アナザー・デイ」まで続きます。全部で4作品。人気が高い割には意外と少ない。ピアース・ブロスナンのファンには寂しい限りですが、出演した4作品はどれも大ヒットし、シリーズの中でも高い評価を得ています。
ゴールデンアイ
007の原作はご存じイアン・フレミングの小説ですが、ピアース・ブロスナンがジェームズ・ボンドに抜擢されたときには既に原作の小説をほとんど使い切っていました。
わずかに残っていたのは、短編の「ナッソーの夜」だけだったのですが、記念すべきピアース・ブロスナン主演の第1作には使われませんでした。よって、映画「ハルク」や「パニッシャー」、「ファンタスティック・フォー」などの脚本で知られるマイケル・フランスが原案を担当し完成したのが1995年11月に公開された「ゴールデンアイ」です。

ゴールデンアイ
007シリーズ第17作「ゴールデンアイ」において役者が代わったのはジェームズ・ボンドだけではありません。
ジェームズ・ボンド役をピアース・ブロスナンに交代した以上に驚かされたのは、ジェームズ・ボンドの上司であるM役が本作より女性になったことです。原作ではMはマイルズと呼ばれていたんですけどね。
しかし、原作を大きく外れたことで映画ならではのオリジナリティは出ましたよ。演じたのは名女優ジュディ・デンチです。

ジュディ・デンチ
また、そのMの秘書そのでありジェームズ・ボンドに恋心を抱いているミス・マネーペニー役も今作からサマンサ・ボンドに代わっています。
更には、シリーズ5作連続で監督を務めていたジョン・グレンからマーティン・キャンベルへと変更。1962年の「007 ドクター・ノオ」から13作も脚本を担当したリチャード・メイボームも降板と、監督、脚本及び中心となる登場人物が一新されてて心機一転って感じが強く漂う作品です。
そう言えば忘れるところでした。「ゴールデンアイ」は、シリーズ当初からの製作者だったアルバート・R・ブロッコリも退いてるんですよね。
なので、当然と言えば当然です。心機一転どころかシリーズとして大きく生まれ変わりました。アクションシーンの方向性やカット割などが過去のシリーズから大きく変更され、何より世界観が大きく変わりました。近代化に成功した作品ということでシリーズ中の傑作の一つとして非常に高い評価を得ています。
実際問題として007シリーズは下降線を辿りつつあったのでした。それは1962年の第1作以降ほぼ毎年制作されていたシリーズが、前作の「消されたライセンス」から6年半近くも間が空いたことからも何となく分かりますね。
しかし、007は「ゴールデンアイ」によって復活しました。アメリカでは「消されたライセンス」の3倍ものチケットが売れ、1995年の映画の世界興行成績で第3位となり、インフレ率を勘案しない場合にはシリーズ歴代最高の売り上げを記録したのです。
ところで、大人気の映画シリーズ「ミッション:インポッシブル」の主人公イーサン・ハントを演じているトム・クルーズは、役作りにピアース・ブロスナンのジェームズ・ボンドを参考にしたのだそうです。
トゥモロー・ネバー・ダイ
大成功を収めた「ゴールデンアイ」は、ピアース・ブロスナンが演じた007シリーズの中で最高の作品。いえ、それどころか、シリーズ全体を通しての傑作との評価もあります。確かに、そう言われるとそんな気もします。確かに面白いです。しかしですよ、それではピアース・ブロスナンが出演した他の007シリーズが面白くないのかといえば、そんなことはありません。
主演2作目、007シリーズとしては第18作目にあたる1997年12月に公開された「トゥモロー・ネバー・ダイ」もまたバツグンに面白いんですよ。そう、実はこれぞピアース・ブロスナン=ボンドの代表作といえる作品です!

トゥモロー・ネバー・ダイ
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監督はサム・ペキンパーの名作「わらの犬」や「ビリー・ザ・キッド」で編集を務めていたロジャー・スポティスウッドです。「48時間」で脚本を担当したことでも知られていますね。
ピアース・ブロスナンだけでなく、女性となったM役のジュディ・デンチやマニーペニー役のサマンサ・ボンドなど前作から入れ替わった俳優もすっかり馴染んで絶好調です。
また、毎回楽しみなカーアクションですが、今作のボンドカーはBMWです。BMWの750iLが使われています。バイクもBMWで、当時市販されたばかりのR1200Cが出てきますよ。
「トゥモロー・ネバー・ダイ」は、米国では前作「ゴールデンアイ」の収益を上回る大ヒットとなりました。
余談になりますが、実は1997年9月1日にダイアナ元王太子妃が「トゥモロー・ネバー・ダイ」の撮影を見学に訪れる予定だったのだそうです。ところが、前日の8月31日、パリで事故死してしまったという悲しいエピソードが残っています。
ワールド・イズ・ノット・イナフ
出ました!1999年に公開された007シリーズ第19作「ワールド・イズ・ノット・イナフ」。
またまた言わなければなりませんね。そう、実はこれぞピアース・ブロスナン=ボンドの代表作といえる作品なのかもしれません。と言うのも、インフレ率を考慮しなければ「ゴールデンアイ」を超えるシリーズで過去最高の興行成績をあげた作品だからなんですよ。

ワールド・イズ・ノット・イナフ
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ピアース・ブロスナン=ボンドの特徴はと言えば、ボンド役として最も人気の高いシリアスな演技のショーン・コネリーと、ユーモアを持ち込んで人気となったロジャー・ムーア=ボンドの中間と言ったところでしょうか。つまりはバランスが取れたジェームズ・ボンドということになります。その魅力のほどは本作でも十分に楽しんでいただけるかと思いますよ。
魅力と言えば、ボンド・ガールのソフィー・マルソーですよ。ソフィー・マルソーといえば、日本でも大ヒットした1980年公開の映画「ラ・ブーム」。

ラ・ブーム
ソフィー・マルソー、可愛かったですよねぇ。当時14歳です。それがいつの間にか立派なセクシー女優となっていたんですよ。驚きました。
ソフィー・マルソーは、言うまでもなく「ワールド・イズ・ノット・イナフ」の大きな見どころのひとつです。
ネタバレとなりますが、実は「ワールド・イズ・ノット・イナフ」は、ボンドが自らの手でメインのボンドガールを射殺するというシリーズ史上初めての作品なんですよ。マンネリにならないようにと出演者を一新するだけではなく、こういった新たな試みがヒットにつながってるんでしょうね。
タイトルの「ワールド・イズ・ノット・イナフ」とはボンド家の家訓です。「世界を手に入れてもまだ足りない」とは、こりゃまた何ともスゴイ家訓ですよね。
ダイ・アナザー・デイ
2002年公開の記念すべき作品「ダイ・アナザー・デイ」。なぜ記念すべき作品なのかと言いますと、「ダイ・アナザー・デイ」は、通算20作にして、シリーズ40周年作品でもあるのです。更にはピアース・ブロスナンが演じた007最終作ですね。当然力が入ります!

ダイ・アナザー・デイ
捕虜となり朝鮮半島の情勢を悪化させてしまったボンドが、その汚名を返上すべく、背後にうごめく巨悪の実態を暴く。
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「ダイ・アナザー・デイ」の見どころは、何と言っても過去の作品をオマージュしたシーンの数々でしょう。ファンであれば思わずニヤリとしてしまうこと間違いなしです。もちろん、マニアックなファンでなくても楽しめるように作られているのでご安心ください。
監督はリー・タマホリ。映画「狼たちの街」などで知られている監督ですが、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」の助監督だったんですよね。
「ダイ・アナザー・デイ」は、前作「ワールド・イズ・ノット・イナフ」を超え、シリーズ過去最高の興行成績を更新する大ヒットとなりました。と言うことは、またしても言わなければなりません。真のピアース・ブロスナン=ボンドの代表作とは本作ではないのか?!
ただ、ボンド・カーが透明になるなど、やりすぎた感が漂う作品でもありました。現実的ではなくなったことを反省し、ダニエル・クレイグがボンドを演じる次作「カジノ・ロワイヤル 」からは原点回帰することになります。
ダニエル・クレイグ主演の新作「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ 」は2020年11月公開予定です。新型コロナ・ウイルスの影響が心配されますが、ファンには待ち遠しいですねェ。