必殺シリーズ(70年代前半)
「チャララァ~ン」という特徴的な効果音でお馴染みのテレビ・ドラマ「必殺シリーズ」。1972年9月より放送が開始され、もしかすると、これからも新作が作られるかもしれませんが、多くのシリーズを生みながら2009年1月まで続いています。
この「必殺シリーズ」には原作がありまして、時代劇小説の第一人者だった池波 正太郎の「仕掛人・藤枝梅安」がそれです。

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1972年に小説現代で連載がスタートし、作品としては全7作(7作目は作者死亡の為未完)。タイトルを「仕掛人・藤枝梅安」から「必殺仕掛人」と改め日本の時代劇ドラマ史に残るシリーズが生まれたのです。
それでは70年代前半の「必殺シリーズ」を追ってみましょう!
必殺仕掛人
記念すべき「必殺シリーズ」第1作目「必殺仕掛人」は、1972年9月2日から毎週土曜日の22:00から放送されていました。闇の殺し屋という設定が秀逸です。しかも殺し屋とは言わずに「仕掛人」ですからね、さすがは池波 正太郎というところですなぁ。そこにもってきてテレビではタイトルに「必殺」。これまた素晴らしいアイデアですよねぇ。

必殺仕掛人
内容は、まぁ、言ってみれば、金を貰って人を殺すという殺し屋たちの一話完結の物語です。林与一がニヒルでクール。色男ですねぇ。しかし、緒形拳。緒形拳がカッコイイです。
やっぱり雰囲気あります。時代劇だからでしょうか、古さを感じさせません。いえ、むしろ古ければ古い作品ほど雰囲気が出るってなもんです。とは言ったものの、時代劇は今や地上波では観る機会が激減していますからねぇ。残念ですよね。
ところで、必殺シリーズといえば、藤田まことの印象が強いですよね?実は「必殺仕掛人」には、藤田まこと演じる必殺シリーズの名キャラクター中村主水は、まだ登場していなんですよ。
必殺仕置人
「必殺仕掛人」の放送終了から間髪明けずに始まったのが「必殺仕置人」です。法で裁けない悪に対してお仕置きしようというわけです。基本「必殺仕置人」に限らず、この構図はシリーズを通して同じですね。
そしてお待ちかね、「必殺仕置人」で藤田まこと演じる中村主水が登場します。

必殺仕置人
ただ、中村主水は出ていますが、主人公は山崎努演じる念仏の鉄です。主人公なだけあって山崎努が流石にカッコイイ。念仏の鉄の殺しのシーンで使われるレントゲン映像が話題になりました。
しかし、まぁ、ここまで来ると原作の池波 正太郎の作品とは別物ですね。裏稼業として殺し屋をやっているというコンセプトだけが残っている感じです。
中村主水には後に人気となるコミカルな面がまだありません。嫁、姑に嫌味を言われてはいるのですが、まだいびられるという感じではないですね。なんというか、まじめ。そう、シリアスなんです。
助け人走る
「必殺仕掛人」、「必殺仕置人」ときて、3作目は「助け人走る!」です。タイトルから「必殺」が抜けています。当然「必殺助け人」としたかったのでしょうが、問題が起こったんです。
当時テレビで「必殺仕置人」を観ていた男が興奮して女性を殺害するという事件を起こしてしまいました。ドラマとの関連性があるわけではなかったのですが、事件として大きく取り扱われたために自主規制としてタイトルから「必殺」を外したんですね。

助け人走る
事件の影響は大きく、タイトルだけではなく作風も大きく変わっています。殺し屋稼業という設定は同じですが、コミカルというか明るいんです。初めて観た人は田村高廣が演じる中山文十郎の陽気さに違和感を覚えるかもしれません。が、徐々にそれが良くなってくるんですけどね。
元締め役は山村聰。1作目の「必殺仕掛人」と同じ役どころですが、別人を演じています。
中村主水は1話のみの出演です。中村主水は助け人と戦うのですが、結局は自分の裏稼業の事は伏せて「儲け話があったら一口のせろ」といって去っていきます。面白いですね。ゲスト出演ですが、それだけ「必殺仕置人」の人気が高かったということですね。
暗闇仕留人
中村主水が復帰してのシリーズ第4作「暗闇仕留人」です。これも「必殺仕留人」で良かったのでしょうけど、例の事件の影響がまだ強く残っていたということですね。

暗闇仕留人
主役の糸井貢を演じるのは若き石坂浩二。相変わらず線は細いですが色男です。優男というべきですかね。優しさゆえに最後は殺されてしまいますからね。これが必殺シリーズ最初の主人公の殉職となります。
工藤栄一が監督を務めているのも嬉しいところですが、何よりも驚いたのは西崎みどりが歌った主題歌「旅愁」が大ヒットしたことでしょう。
女掏摸(スリ)で、仕留人の密偵を務める鉄砲玉のおきん。演じる野川由美子が美しいわけですが、この鉄砲玉のおきん、「必殺仕置人」に続いての登場です。「必殺仕置人」では最終回で江戸を離れたのですが、戻ってきてくれました。野川由美子は前作の「助け人走る」では同じ密偵ながら芸者のお吉を演じていましたが、これは別人です。
「暗闇仕留人」以降、最終回で主人公たちの多くは悲惨な死を迎えるようになります。まぁ、言うても毎週毎週殺人を犯してますからねぇ。主人公とは言え悪は栄えないということでしょう。
必殺必中仕事屋稼業
シリーズ第5作目にしてようやくタイトルに「必殺」の文字が戻ってきました。「必殺必中仕事屋稼業」、長いです。しかも、厳密に言うと「必殺」ではなく。「必殺必中」。まだ事件に対する後ろめたさが拭いきれていないようですね。
主演は緒形拳と林隆三という豪華版。緒形拳は1作目の「必殺仕掛人」に続いての登場ですが、役柄は藤枝梅安ではなく、知らぬ顔の半兵衛という全くの別人を演じています。

必殺必中仕事屋稼業
中村主水はお休みですが、ナレーションで藤田まこと が起用されています。タイトルは長いわ、中村主水は出てこないわで、ご覧になられたことがない方は不安になられるかもしれませんが、この「必殺必中仕事屋稼業」近畿地区で過去最高の視聴率を記録し、シリーズ最高傑作との呼び声も高い作品なんですよ。
緒形拳も林隆三も上手いわね。中尾ミエだっていい味出してます。
以上が70年代前半の必殺シリーズです。必殺シリーズといっても5作中「必殺」のタイトルがついていないものが2作品。更に1作品は「必殺必中」だし、純粋な「必殺」は2作しかないとは。。。
さて、70年代後半は、これまた手を変え品を変えて必殺の数々が登場します。が、それはまたの機会に。