血の轍
ディランは気難しいとはよく言われていますが、ホントに人騒がせな男ですね。しかし、そうして発表されたアルバム「血の轍」こそが、70年代の、いえ、全キャリアを通しても代表作となる名盤中の名盤なのです。
11月のリリース直前になってディランは待ったをかけ、急遽レコーディングし直し5曲を入れ替えて、ようやく完成させたと言う人騒がせなおまけがついています。
この差し替えによってアルバムはグンとアコースティック感が増し、味わい深くなっています。
因みにこの年、もう1枚、アルバムがリリースされています。
地下室(ザ・ベースメント・テープス)
この「地下室(ザ・ベースメント・テープス)」は、当時はホークスと名乗っていたザ・バンドとの1967年のセッションを収めたものです。ゴールドディスクを獲得していますが、内容はリラックスしているというか、気ままというか、当初はリリースするつもりもなかったのでしょうが、一般的にみて完成度は低いです。が、そこが何とも味があるという不思議な魅力を持ったアルバムです。
欲望
1976年2月5日にリリースされたアルバム「欲望」は、全米5週連続1位となりキャリア最大のヒットを記録しました。
欲望
確かに良い曲が多数収められています。サウンド的にはラグタイムとラテンミュージックのハイブリット。バックを務めたのは当時は無名のミュージシャンばかりでしたが独特のサウンドを作り上げています。特にエミルウ・ハリス(コーラス)とスカーレット・リヴェラ(バイオリン)。この2人の女性の貢献が大きいです。
日本でスマッシュ・ヒットとなった「コーヒーもう一杯」。ヒットしただけあってキャッチーな曲ですね。で、このディラン、なぜ顔を白くしているのかと言うと、白人に対する抗議なんですね。収録曲「ハリケーン」は、白人によって無実の罪を着せられた黒人ボクサーのことを歌っているのですが、ディランの抗議はここからきています。
アルバム「欲望」と同時に繰り広げられた顔を白くしたディランのライブツアー「ローリング・サンダー・レヴュー」は 1976年9月13日にリリースされたライブ・アルバム「激しい雨」として記録されています。
激しい雨
ストリート・リーガル
ボブ・ディラン18枚目のスタジオ・アルバムとなる「ストリート・リーガル」は、1978年7月15日のリリースです。前作から2年程間が空きました。落ち着いた。そんな感じでしょうか。まぁ、流石のディランも慌ただしかったツアーで疲れたのかもしれません。
ディランにしては長いインターバルを経てリリースされた「ストリート・リーガル」は、ゆったりとしてスケールの大きなアレンジがなされています。
ストリート・リーガル
アルバム「欲望」でのエミルウ・ハリスとはまた違った、大げさともいえる女性コーラス。大掛かりなバンド編成。好みの分かれるところでしょうね。しかし、曲自体は非常にポップなものになっています。
スロー・トレイン・カミング
70年代最後のアルバム「スロー・トレイン・カミング」は、キリスト教徒となったディランを反映してか、なんかもう宗教くさいアルバムとなっています。ファンにとっても好き嫌いがはっきりするアルバムといっていいでしょう。
スロー・トレイン・カミング
好き嫌いがはっきりするアルバムとは言え、ディラン自身が「プロのアルバム」と語っているように、ダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーやピック・ウィザースが参加した音作りはまさにプロって感じです。
シングル・カットされた「ガッタ・サーヴ・サムバディ」はディランにしては珍しくヒットし、この曲でグラミー賞のベスト・ロック・ボーカル(男性)部門を受賞しています。