「勇者シリーズ」の5作目

1994年から放送された「勇者警察ジェイデッカー」は、「機動戦士ガンダム」制作として有名なサンライズの手によるアニメです。
「勇者シリーズ」というものの第5作目になるのですが、このシリーズは1990年の「勇者エクスカイザー」から始まりました。視聴者の年齢が上がりすぎた複雑なロボットアニメから路線を大きく変更し、低年齢層をメインターゲットとした単純明快な展開で、完全懲悪を基本としたストーリーとなっています。
またスポンサーは、玩具メーカーのタカラでした。そのため出てくるロボットたちを玩具として売りたいという明確な目的があり、ロボットは車などから人型に変形し、かつ合体もするというものでした。
シリーズを重ねるにつれて、その対象年齢もどんどん拡大されていくことになるのですが、そんなところも含めて面白いシリーズです。
スタッフはきっと刑事ドラマが好き!?

「勇者警察ジェイデッカー」の舞台となるのは「七曲市」です。主人公・友永勇太が通う小学校は「七曲小学校」。説明は野暮になりますが、あの「太陽にほえろ!」に出てくるのが「七曲警察署」ですね。
他にもいろいろと影響が感じられるのですが、最大は特殊刑事課ブレイブポリスに所属する刑事ロボット達に、あだ名がついていること。
本作には、たくさんの魅力的な刑事ロボットたちが登場しています。あだ名と共に、そのメンバーの一部を紹介しましょう。
勇者刑事デッカード
勇者で刑事というのが最初から謎ですが、とにかく主人公の最大のパートナーでブレイブポリスのリーダー。警視庁が製造したロボットで、その開発途中に主人公と偶然出会い、そのAIに心が芽生えます。シボレー・コルベットに似たパトカーから変形して、人型になることができます。こういう玩具的なギミックも、このシリーズの魅力ですね。
騎士刑事デューク
騎士と書いてナイトと読みます。ナイトで刑事というのも謎ですが、ブレイブポリスのサブリーダーポジション。彼を設計したのは、イギリスのスコットランドヤードの天才少女レジーナ・アルジーン。たった12歳の機械工学博士。騎士道を重んじ、プライドが高かったり融通が利かなかったりするのは、英国生まれだからなのでしょうか。救急車から変形しました。
サッカー刑事ドリルボーイ
放送の1年前、1993年にJリーグは開幕していますね。ドリルが付いていたり、胸にサッカーボールが付いていたり、きっと子供は大喜び。性格も少し幼かったです。
忍者刑事シャドウ丸
忍者で!刑事!ステルス機能がありました。犬型にも変形できます。しかし犬と呼ばれると怒ります。
白バイ刑事ガンマックス
名前通り白バイに乗ってました。
ちなみにイギリスのブレイブポリス4体はジョン、ポール、リンゴ、ジョージでした。ビートルズですね。
ボスは小学4年生

そんなブレイブポリスたちを率いるのが、世界初の少年警察官である友永勇太です。階級は警部ですから「太陽にほえろ!」のボス、藤堂俊介(石原裕次郎)と一緒ですね。
明るく元気で正義感は強いですが、性格はごく普通の小学4年生に設定されています。
このキャラクターをデザインしたのは石田敦子。元気で可愛らしいキャラクターを描くのが上手く、友永勇太は一部のお姉さま方にも大人気でした。ファンサービス?で女装もしました。
ちなみに余談ですが、のちに「魔法騎士レイアース」でも活躍する石田敦子は大の広島カープファンで「球場ラヴァーズ」というマンガを描き、始球式にも出たことがあります。
本作の魅力

小学生4年生の友永勇太が特殊刑事課ブレイブポリスのボスとなり、刑事ロボットたちと事件に立ち向かう、というのが大まかなあらすじです。
これまでの「勇者シリーズ」では、敵は地球征服を試む等のひとつの大組織が普通でした。例えばシリーズ第3作「伝説の勇者ダ・ガーン」では、敵はオーボス軍。
しかし本作では、そういう大きな敵組織は存在せず、個々の犯罪者や災害等が相手でした。
他、刑事ロボットたちには超AIが搭載されているという設定で、人間たちと変わらない心を持っていました。悩んだり、成長したり、人間に恋をしてしまったり。そういうキャラクターたちの個性こそが、本作の最大の魅力でしょう。
もちろんそれに負けない、個性の強い人間キャラクターたちもたくさん出ています!
挑戦的な内容

監督の高松信司は当時33歳。
脚本のすべてを束ねたシリーズ構成の川崎ヒロユキは当時29歳。
ちなみに脚本で参加しているあみやまさはる(「新世紀エヴァンゲリオン」綾波レイ役で有名な林原めぐみの夫)は当時24歳。
本作に関わったスタッフたちはまだみんな若く、様々な挑戦ができたと聞いたことがあります。単純な勧善懲悪な話ではなかったことも、その結果なのでしょうか。
以降の「勇者シリーズ」も子供向けという枠から徐々に外れ、たくさんの挑戦的な作品たちが生まれていったのですが、その先駆けのひとつとなった「勇者警察ジェイデッカー」。
もし機会があれば、見返してみてはいかがでしょうか。
新しい発見があるかもしれません。