「アリー」は4つめの「スタア誕生」
リメイク作品と聞くと
前の作品と比べて劣化したとか、全然違う内容になっちゃってるとか
いろいろと厳しめの評価があったりします。
リメイク元の作品が評判いいほど、そうなりがちですが
「スタア誕生」は、どのリメイク作品もかなりな評価を得ている、希有な映画です。
今回のリメイク、ノミネート数がすごい
ゴールデングローブ賞5部門
アカデミー賞8部門にノミネートされていますね。
ゴールデングローブ賞では、主題歌賞を獲得しています。
リメイク元「スタア誕生」とは
「傑作から傑作を」とまで言われるリメイク元の「スタア誕生」
どんな作品だったのでしょう。

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1937年公開の映画です。
主演:ジャネット・ゲイナー フレドリック・マーチ
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
あらすじ
成功し、名声もあるが、落ちぶれ気味の有名男優が
ひょんなことから出会った、芽の出ない新人女優の才能に気づき
かなりごり押しをしながら表舞台に引っ張り上げる。
そして彼女はブレイクしますが、彼女と結婚した彼は
以前にも増して酒におぼれて行き、業界でも敬遠されはじめます。
そして、彼女の晴れの舞台に失態をしてしまいます。
夫である彼を支えるために、活動を休止しようとする彼女を見て
彼は、彼女の今後の成功のために、自ら身を引いていく
というストーリーです。
文字通り「スター」が誕生する話です。
そして、往年の「スター」が没落する話でもあります。
その「登るスター」と「堕ちるスター」との対比が
くっきりとしたコントラストを与えているんですね。
カテゴリ的には「ハリウッド内幕メロドラマ」
(って言っちゃうと身も蓋もないけど)
だけど、こういったバックステージものは、この当時はとても珍しくて
舞台や映像の豪華さや、共感を呼ぶストーリーが好評を博して
かなりの興行成績を上げ
第10回アカデミー作品賞を受賞しています。
最初のリメイク版「スタア誕生」
1954年公開。
主演:ジュディ・ガーランド ジェームズ・メイソン
監督:ジョージ・キューカー
ジョージ・キューカーは当時のトップスター女優からの支持率NO.1の監督だそうで
グレタ・ガルボやへプバーンからとても信頼されていたようです。

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あらすじ
酔っ払ってチャリティー上映会場に来たスター俳優を
上手にカバーした、それほど売れていない歌手。
彼は彼女が気になり、探し出した先の店で彼女が歌うのを見て
ぜひスクリーンテストを受けろと勧めます。
紆余曲折の末受けたテストで好評を博した彼女は
どんどんスターダムを駆け上がっていきました。
彼と彼女は結婚、だが酒におぼれ仕事に穴をあける彼を
業界は見捨て出し、オファーも少なくなります。
荒れた彼は、彼女の晴れの舞台を台無しにして後悔し
療養に専念しようとするのですが、失敗して、警察沙汰を起こしてしまいます。
身元引受人になり、彼のために引退すると言う彼女を見て
彼は身を引くのです。
基本的なあらすじは、リメイク元とほぼ一緒です。
違うのは、前回が俳優、スクリーンの世界だったものが
今回はミュージカル、ショウビジネスであること。
主演がジュディ・ガーランドであればそれも当然ですね。
2度目のリメイク版「スター誕生」
2度目のリメイク版は、日本語名は「スタア」ではなく「スター」
「スタア」というと「銀幕のスタア」とか、ちょっとレトロなイメージ
「ザ・ハリウッド」といった響きがありますが
今回はハリウッドとは全く別設定になります。ミュージックシーンです。
それが理由で「スター」になったのかもしれません。
1976年公開。
主演:バーブラ・ストライサンド クリス・クリストファーソン
監督:フランク・ピアソン
製作総指揮:バーブラ・ストライサンド

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あらすじ
破滅的な行動をするロックスターが、深夜のクラブで魅力的な声の歌手を見つけます。
翌日のコンサートで彼女を連れて会場入りするも
舞台でバイクを乗り回して設営を破壊し、彼女は置いてきぼりに。
やっと探し出した彼女と、曲作りをしていくうちに、ふたりの間に愛が芽生えます。
彼女のための曲作りに没頭する彼に周囲は困惑しますが
コンサートで彼女に歌わせると、観客は熱狂。
一気に有名ミュージシャンの仲間入りをします。
彼と彼女は結婚、しかし彼女の人気とはうらはらに、彼の人気は凋落を始め
さらに彼女の晴れ舞台で失態を演じ、後悔。
彼女は彼とツアーに行きたいと言いますが
彼女の足を引っ張っている自分を痛感した彼は、愛車の赤いフェラーリで暴走します。
最新作「アリー」の中で
「鼻が大きいから、整形しないとデビューできないと言われた」
というシーンがあるのですが
これはガガ自身の実体験だそうです。
でも、上の画像を見れば一目瞭然ですけど、
バーブラもそんなことを言われていたんじゃないかな。
実際、「サウスパーク」というバラエティアニメでは
バーブラの鼻のことをめっちゃ揶揄されてましたからね。
元作品とリメイク作品、共通するプロット
あらすじ3編を見れば
(さらに、もう「アリー」を観た方ならおわかりと思いますが)
内容に共通項があるのがはっきりしていますね。
落ち目の兆しのある男性スターと、まだ駆け出しの女性タレント
やや強引にすぎる男性からのアプローチ
お約束のごとき女性の才能と開花
ふたりの結婚
男性の凋落は止まらず、彼女の晴れ舞台での失態
彼女の「彼をささえるため」の献身と
それを回避するための彼の決断。
バックボーンとなる舞台が違っても、扱われる素材が違っても
これらのプロットはすべて変わりません。
また、主人公二人の名前もある程度踏襲されていました。
タイトル | 男性主人公 | 女性主人公 | 女性の芸名 |
---|---|---|---|
「スタア誕生」 | ノーマン・メイン | エスター・ブロジェット | ヴィッキー・レスター |
「スタア誕生」リメイク | ノーマン・メイン | エスター・ブロジェット | ヴィッキー・レスター |
「スター誕生」 | ジョン・ノーマン・ハワード | エスター・ホフマン | なし |
「アリー/スター誕生」 | ジャクソン・メイン | アリー | なし |
また、あらすじだけではなく、プロデュースする内容としても
主人公の女性を演じる女優は、すでにショウビジネス界で実力の確立している人であること
その女優の魅力を最大限に活かせる舞台装置であることも
共通していますね。
ですが、同じようなあらすじ、同じようなプロデュースで
前作を凌ぐような印象を観客に与えるのは
並大抵ではないと思うのです。
その難しいリメイクを何度も重ねて、なお
毎回興行成績を残している、すごい作品群なんじゃないでしょうか。
印象的なラストシーン 最新作も
そして、ラストシーンが印象的なのも、共通しています。
元作品とリメイク2作は、スターである彼女が大衆に向かい
「ノーマン・メイン夫人です」とイントロデュースします。
自分をここまで引き上げてくれた彼がいたからこそ
スターとなった自分を
「彼とともにある自分」として宣言するところで、映画は終了します。
最新作「アリー」はどうでしょうか?
ぜひご自分の目でご覧になってみてください。