「噂の二人」は、いわば当時にあっては、タブー視されていた同性愛を扱ったシリアスな物語です。道徳諸団体や、「良識」あるファンから危惧や反対が当然あったでしょう。
それでも、そうした圧力のなか、この「噂の二人」に敢えて、出演しようとした意気込みは並大抵なものではなかったろうと思います。
(そこらへんに「お姫様女優」というイメージから脱しようと、懸命に意欲的な作品を模索した彼女の焦りもあったかもしれませんね。)
当時はたとえ噂話としても同性愛をほのめかすのは憚られ、
「ヒロイン2人と男性の三角関係」に脚色されたとのこと。
これは“作品の根幹を変えてしまう”変更ですが、
ヘルマン自身がこれを承諾した事実からも、
80年前のアメリカでは同性愛というものがどれほどのタブーであったのがうかがい知れますね。
その風潮は25年後の1961年でもまだ強く、登場人物の誰もが口にするのをためらうほど。
例えば騒ぎの発端となる少女は、2人の関係を有力者である祖母に告げ口するとき、
「大きな声ではとても言えない」と言って耳打ちします。その瞬間に祖母は目を剥いて驚愕しています。
ここら辺、唐突ですが、
不意に筆者は、
江口寿史さんの『ストップ!!ひばりくん!』のひばりくんのお父さんを思い出します。
こちらのお父さん、ひばりくんの女装癖を「異常だ!」とか「その性根叩き直してやる!」とか、
息まいて矯正にかかるんですよね。
ひばりくんの連載が1980年代でしたから、これでも偏見が強かったこの頃。
1962年に公開されたとき、日本人はどんな反応だったのか気になるところです。
何にせよ、人を愛するのに、ただ愛することだけでも
タブーとされていた時代があり、
人としての尊厳もかかわっていた上に自己否定にすら走らざるをなかった、
というのは何とも切ないことですね。
無理に愛を押し付けるのはいけないことですが、
何れにせよ、今時代は
ただその人が生きていることを喜ぶことを許してくれる時代であってほしいものです。
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