思い出の「昭和有名人伝記マンガ劇場」:第12回 燃える闘魂!『アントニオ猪木物語』80年代編

思い出の「昭和有名人伝記マンガ劇場」:第12回 燃える闘魂!『アントニオ猪木物語』80年代編

プロレスラーの象徴ともいえる「アントニオ猪木」前回は、新日本プロレス旗揚げ直後の1974年に、「別冊少年チャンピオン」に掲載された伝記漫画をとりあげたが、今回はタイガーマスクの登場に沸いた1980年代のプロレスブーム期に発表された、『実録まんが・アントニオ猪木』を振り返ってみよう。


前回取り上げた、新日本プロレス旗揚げ直後の1974年に、「別冊少年チャンピオン」に掲載された伝記漫画『アントニオ猪木物語』。
1974年当時のアントニオ猪木への社会的な関心度が良く分かる内容だったが、格闘技世界一決定戦に挑む前の時代に描かれた物だけに、やはり内容的に物足りなさを感じてしまうのは、ファンとしては仕方がないところだ。

燃える闘魂、アントニオ猪木!

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そこで今回は、タイガーマスクの登場に沸いた1980年代のプロレスブーム期に発表された、『実録まんが・アントニオ猪木』を振り返ってみようと思う。

『実録まんが・アントニオ猪木』概略

コミックスの表紙と裏表紙

実は雑誌への掲載ではなく、学研が当時出版していたアイドルコミックスの中の一冊として、1983年に単行本として出版されていた本作。作者は、いけうち誠一先生。新日本プロレスの全面協力で描かれるその中身は、アントニオ猪木の自伝部分だけでなく、当時の人気レスラーへのインタビューや、猪木への30の質問、猪木年表にトレーニング密着ルポなどなど、今見返してもプロレスファン大満足の内容となっているのが素晴らしい!

見よ、このラインアップ!

実はこの学研のアイドルコミックスシリーズの中には、当時の人気アイドルだった松本伊代や掘ちえみ・早見優などに加えて、何故か当時の人気プロレスラーであるタイガーマスクや藤波辰巳・長州力の自伝漫画も含まれていた。
当時のプロレス人気が、どれほど若者の間に浸透していたかが良く分かるこのラインアップだが、果たしてこの伝記漫画の中では、一体どんなエピソードが披露されていたのだろうか?

『実録まんが・アントニオ猪木』内容紹介

本作の扉絵

現在の猪木の視点からも、その生い立ちが語られる。

当時の横浜でも1,2を争う大金持ちだった猪木の実家だが、70年代版伝記漫画で描かれたいかにも現代風の裕福そうな描写とは違い、本作では昭和20年代という時代背景に忠実に描かれている。父の急死や祖父が家族の面倒を見ることになる部分は、前回紹介した70年代版の伝記漫画とほぼ同じだが、猪木一家がブラジルに渡る理由が、父が亡くなって家業が上手く行かなくなり、生活の建て直しのためのブラジル行きだったことが語られている。

祖父の命を奪った、青いバナナ!

70年代編と同様に、父を亡くした猪木一家はブラジルへの移民を決意することになる。
長い船旅で祖父の容態が悪くなり、船旅の途中で急死するのは同じなのだが、本作の特徴はその死因が描かれている点だろう。元々慣れない船旅で体調を崩していたところに、猪木たちが上陸して買い込んだ青いバナナを食べて当たってしまった、という衝撃の死亡理由!
祖父の遺体がそのまま海へと流されてしまったというエピソードは登場しないが、こうした他のアントニオ猪木伝記漫画と違う独自の情報が描かれている本作。
さすが、新日本プロレス全面協力で描かれただけのことはある。

電気もトイレも無い家とは!

ブラジル着いた一家を待ち受ける過酷な現実!

やはりこのエピソードが無いと、猪木の自伝じゃ無い!

軍手が破れて血だらけの手でコーヒー豆を収穫。

寝る間も惜しんで働き、ついに独立!

実はここも70年代版とは違い、ブラジルに着いてからの過酷な農場での労働に多くのページ数を割いている本作。
希望の新天地だったはずのブラジルでの生活が、実際は奴隷並の扱いを受ける農場の小作人でしかなかったという事実に加え、コーヒー豆の収穫で軍手が破れて手が血だらけになるという、ファンには良く知られたエピソードもちゃんと登場するのが嬉しい、
やはりこのブラジル時代の苦労話が描かれないと、この後の力道山からのシゴキに耐える猪木に説得力が生まれないのだ!

日本人なのに、ブラジルの日系二世にされていた・・・。

帰国した猪木のプロフィールがとんでもないことに!

あまりに過酷な先輩レスラーたちのシゴキ!

実は本作最大の特徴は、70年代版とは違って完全に同期のジャイアント馬場の存在を無かったことにしている点!
そう、共に力道山の元で修行しライバルとして切磋琢磨しながら、日本のプロレス界を共に盛り上げた盟友ジャイアント馬場が、本作には一切登場しないのだ!
80年代プロレス界の複雑化した人間関係を象徴する本作の描き方は、今見ると実に興味深いものがある。

後半は当時の新日レスラーの証言も飛び出す展開に!

漫画以外にも、様々な猪木情報が満載!

力道山先生への本音が飛び出す名回答!

猪木への30の質問コーナーに、気になる答えが!

アントニオ猪木の自伝漫画でありながら、当時の新日本プロレスの人気レスラーや若手、それに猪木にゆかりのある外国人レスラーの証言を加えることで、単に過去のエピソードを並べた伝記漫画以上の内容となっている本作。
幸い単行本での発行のため、雑誌掲載の物と違い現在でも比較的入手しやすいので、機会があれば是非見つけて読んで見ては?

最後に

いかがでしたか?
70年代の物とは違って、ファンにとってはお馴染みの燃える展開が楽しめるのが、やはりこの80年代版『実録まんが・アントニオ猪木』の最大の魅力だと言えるだろう。
ブラジル時代の過酷を極めた農園生活に先輩レスラー達からの容赦ない特訓、そして数々の強敵レスラーとの名勝負や新日本プロレスの後輩レスラーが語る猪木のエピソードまで、正にファン必見の内容となっている本作。

ただ、前述した通りジャイアント馬場とのライバル関係やエピソードが一切描かれないその内容は、やはりファンにとっては寂しいものがあるのも事実。
次第に激化する各団体間の対立構造を象徴する様なこの描き方に、80年代プロレスブームの熱気を感じ取って頂ければと思う。

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