『ビートたけし殺人事件』そのまんま東が執筆した小説が原作のたけし軍団勢揃いのサスペンスドラマ!
1983年に正式に結成されたたけし軍団。ビートたけしがオフィス北野を退社し、久々にスポットが当たったたけし軍団だが、その個性的な面々は80年代のバラエティをがっちりと支えてくれた。

「たけし軍団」写真集
たけし軍団がビートたけしのもとに弟子入りした芸人らにより構成されているのはご存知の通りであるが、その一番弟子であるそのまんま東(東国原英夫)が執筆した推理小説があった。
ビートたけしとたけし軍団(一部)が起こしたフライデー襲撃事件により芸能活動を自粛していたそのまんま東が書いた作品で、タイトルは『ビートたけし殺人事件』と何とも衝撃を伴うものとなっている。それを映像化したのが本稿で特集する作品である。

そのまんま東 (著)「ビートたけし殺人事件」
放送は1989年1月。深夜に約30分ずつ4回に分けて放送された。
また、1989年10月には「ビートたけし殺人事件2 失われた魔人の伝説」も放送されている。こちらは全1回138分の作品となっていた。
《おさらい》フライデー襲撃事件
1986年12月にビートたけしを筆頭に、たけし軍団ら12名が写真週刊誌「フライデー」を発刊する講談社の編集部を襲撃した事件。
当時、ビートたけしが交際していた専門学校生の女性へのフライデー契約記者による過剰な取材により、女性が怪我を負った事をきっかけに前述のメンバーが編集部へと抗議しに乗り込んだ。
当初、暴力は振るわないようにしていたが、その場が険悪な状況となり、編集長及び編集部員らに暴行を加える事になってしまった。
これによりビートたけしらは住居侵入・器物損壊・暴行の容疑で、大塚警察署によって現行犯逮捕された。

事件が起こった東京都文京区の講談社本館
これによりビートたけしらは住居侵入・器物損壊・暴行の容疑で、大塚警察署によって現行犯逮捕された。
その後、ビートたけしには懲役6か月、執行猶予2年の判決が下された(東京地方裁判所、確定)。当時たけしのレギュラー番組への出演については、執行猶予判決が確定するまでの約8か月間謹慎する事になり、本人やたけし軍団、芸能界にとっても大きな痛手となった。
しかし、1988年には当時のフライデー編集部と神宮草野球場で草野球の交流試合が行われ、正式な和解の場が持たれている。また、1998年2月の同誌に、ビートたけしが同誌編集部を訪れるという設定のカラーグラビアが掲載されている。
ビートたけしもテレビ番組でフライデー事件を自ら語るなどしている。
『ビートたけし殺人事件』の製作経緯
原作は推理小説ではあるが、作者・そのまんま東がビートたけしにどのように弟子入りしたかなどが序盤に描かれるなど、予備知識を必要としている点がタレント・そのまんま東が書いた作品というのをより印象付けた。
また、ビートたけしに「お笑いは常に戦国だ」とアドバイスされた経験と、読書を勧められた「平家物語」が事件のヒントとなっている。特に平家物語は事件を暴いていく(もしくは犯人に誘導される)のに非常に重要なキーアイテムとして活用された。
内容に関しては「たけし軍団の1人」の目線で描かれ、さらに「オレたちひょうきん族」末期にビートたけしが収録を休んでいた理由までもが記述されている。

『ビートたけし殺人事件』の執筆の頃は、誰が彼の政治家転身を予想していただろう。
『ビートたけし殺人事件』のあらすじ ※ネタばれあり
そのまんま東は弟弟子のラッシャー板前から、「殿がいなくなった」と連絡を受ける。そのまんま東は、「いつものことだ」(これは製作当時、オレたちひょうきん族や他の番組を、ビートたけしが色々な理由をつけて頻繁に休んでいた為)と軽くあしらう。
しかし、数日経っても一向に、ビートたけしの行方が分からず、徐々に不安感を覚えるたけし軍団の面々。そんな中、女に弱いそのまんま東が、取材に来た美人記者(かとうかずこ)にポロっとビートたけしの失踪を漏らしてしまう。
すると事態は一変、マスコミが事務所を取り囲み、一大スクープとなっていく。
そして、そのまんま東が自宅に帰ると、警察の人が待ち構えており、井口 薫仁(ガダルカナル・タカ の本名)が転落死したと告げられる。
また、数日前に公園で死亡した浮浪者がたけし失踪に大きく関わっていた事が徐々に明らかになっていく。
そのまんま東は頭のキレるダンカンと共に謎解きを始める。「平家物語」にヒントが隠されている事を突き止め、フジテレビのスタジオに何かある事が分かる。
到着した面々の目に飛び込んできたのは、ビートたけしの遺体だった・・・。慌てふためくメンバー達。
芸能スクープから一転、殺人事件となり、連日ニュースで取り上げられる『ビートたけし殺人事件』。
そして、その後もそのまんま東は犯人探しをするが、謎に包まれたまま、なかなか真相に辿り着けない。さらに不幸は続き、次々とたけし軍団のメンバーが謎の死を遂げていく。
ラッシャー板前までが死に、疑惑の目が一番弟子のそのまんま東に向けられ始める。しかし、失踪をリークした美人女性記者が贖罪(後半はそのまんま東への恋愛感情)から手助けをしてくれる。

ビートたけし殺人事件 [VHS]
そして、焦点はたけしの大学時代の脳科学の研究へと向かっていく。なんと、ビートたけしと友人が手術で脳を交換していたのだ。
以前に見たビートたけしの遺体は別人であり、大学時代に同じ研究をした仲間であったという。
それを突き止めたそのまんま東は、逃亡する容疑者という立場ながら記者会見を開き、ビートたけし自身がまだ生きていて、犯人であると涙ながらに告白する。
しかし、直後に美人記者から「カット!」の声が掛かり、会見会場にビートたけしが満面の笑みで現れる。この物語が全てドッキリで、そのまんま東を騙したのだと告げる。自体が呑み込めないそのまんま東。
その事を多くの軍団員をはじめ、女性記者もが知っていたという。それだけでなく、女性記者こそが敏腕プロデューサーであったとオチが付いた。
ある意味での美人局として、騙された格好となったそのまんま東であった。
ドラマきっかけでそのまんま東と交際を開始した「かとうかず子」
『ビートたけし殺人事件』の劇中、美人記者として出演したかとうかず子。
その大人の色気を伴ったどこかミステリアスな美貌は、画面を彩ったが、そのまんま東とこの撮影をきっかけに交際を始めたという。
かとうかず子は劇中、徐々にそのまんま東と恋仲になっていくが、プライベートでも惹かれあっていたのだ。
その後、二人は結婚。美人女優とお笑いタレントの結婚として話題となり、後に1男1女をもうけている。
1998年にそのまんま東が不祥事の影響から芸能活動を自粛。収入が激減したが、後に早稲田大学に入学。その間、かとうかず子が一家の生活を支え続けたという(現在は離婚)。

映画パンフレット「なんとなく、クリスタル」(主演:かとうかずこ)
《プロフィール》
1958年2月20日、愛知県名古屋市生まれ。
つかこうへい構成・演出「サロメ」のオーディションに応募し合格。1979年大学在学中につかこうへいの舞台「広島に原爆を落とす日」でデビュー。
1981年には田中康夫の小説を原作とした映画『なんとなく、クリスタル』には主役で映画デビューを果たし、初ヌードを披露している。
1989年「ビートたけし殺人事件2〜失われた魔人の伝説」に矢野涼子役で出演している。
2017年、当時在籍していたスタッフ・ポイントからenchanteに移籍した。

映画ポスター「なんとなく、クリスタル」