ゲーム業界衝撃のオチ!隠れた名作RPG『moon』は、RPG好きに送るアンチRPGだった

ゲーム業界衝撃のオチ!隠れた名作RPG『moon』は、RPG好きに送るアンチRPGだった

ポップ&アイロニー。王道RPGを痛烈に皮肉りながら、強烈なラブを放つ異色のゲームとして有名な、ラブデリック製作のプレイステーション用ゲーム「moon」の紹介です。だいたいいつも高値のプレミアが付いていることでも知られている隠れた名作です。いや、もう有名すぎて隠れていませんね。


概要

「おやめ下さい!」「あるじゃねえかよコインと剣がよ!」「おやめ下さい勇者様!」

『moon』パッケージ

Amazon | moon(ムーン) PlayStation the Best | ゲームソフト

アンチRPG・アンチゲーム 従来のRPGでは、「勇者」は英雄だった。 しかし、MOONの世界に登場する「勇者」は罪の無いモンスター(ゲーム内では「アニマル」と呼ばれる)を殺し、他人の家に押し入り色々な物を強奪していくような、非常に迷惑な存在として登場する。 放送されていたCMのキャッチコピーは「もう、勇者しない。」。内容は“岡本信人演じる勇者が、「おやめください勇者様!」と追いすがる主婦を押しのけ強引にタンスを開け、「有るじゃねーかよ! コインと剣がよ!」と叫び奪って行く”という、RPGの通例的部分を風刺したものだった。 主人公である「少年」の役目は、勇者に殺されたアニマル達を救い出し、奇妙で暖かい住人達と心を通わせることだ。そうすることで「ラブ」と呼ばれるものが集まりレベルアップできる。 また、ストーリーの中に大きなテーマが隠されており、それに気付かなければ真のエンディングを見ることは出来ない。それはゲームそのものの存在を否定しかねない皮肉なものである。真のエンディングの最後に表示される文章はそれを露骨なまでに表現している。 キーワードは「扉を開けて」。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Moon_(%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0)

moon (アスキーのゲーム) - Wikipedia

キャッチフレーズは「もう、勇者しない。」

1997年に数多の「ゲームっぽくないゲーム」を世に放ったラブデリックが開発アスキーが発売した、プレイステーション用ゲームソフトです。当時王道だった西洋風ロールプレイングゲームの形を成してはいますが、「モンスターと一切戦闘しない」「モンスターのタマシイを助けてラブを獲得し、それによりレベルアップする」という風変わりなシステムが話題となりました。
他に例を見ない独特な世界観のRPGです。宣伝CMでは一世を風靡したRPG『ドラゴンクエスト』でのゲーム内行動をリアルに再現した上で暗に否定するという挑戦的な行動に出ました。

アンチ勇者、殺生なしの「オールラブアンドピース」という今までのRPGの概念を覆した意欲作です。グラフィックは粘土ジオラマを模したCGで構成されており、この世界観と合わせた独特な温かみが感じられる描画が大きな特徴となっています。
音楽はMD(ムーン・ディスク)をゲーム内のショップで購入し、プレイヤーが好みに選曲できるという手法が取られています。
RPGという名前ではありますが、ゲームジャンル的にはアドベンチャーに近いです。

当時のCM

あらすじ

竜に食べられた、失われた月を取り返す。そのために勇者は、数々の冒険をくぐり抜け、最大レベルに上がった。そして月にある竜の城、そのラスボス、ドラゴンに挑んだ―――が。
「ゲームなんかやめて早く寝なさい」
RPGが大好きな少年(プレイヤー)は、母に叱られてゲームを消した。しかし、消したはずの画面がなぜか起動し、プレイヤーは吸い込まれてしまう。プレイヤーが落下した場所には、先ほどまで遊んでいたゲームの世界が広がっていた。
ゲーム上と印象がまったく異なる勇者や、強烈な個性を持った町人たち。彼らにプレイヤーの姿は見えなかったが、唯一、目の見えないおばあちゃんだけが主人公を見つけてくれた。おばあちゃんの孫の服を借り、やっと人に見える姿となったプレイヤーは、「ラブ」を集める旅に出る。勇者とは違った方法でも、失われた月の光を取り戻すため、光の扉を開くために。

独創的なシステム

主人公はゲームの外の世界(現実世界)から迷い込んだ少年

迷い込むまでに少年が現実世界でプレイしているRPGが「Fake MOON」。実際にプレイヤーが操作します。ファミコンRPGを意識した劇中劇ですが、これはこれで作りが深いです。
ゲーム内のmoon世界では現実世界での姿は住人に認知できないのか、少年は透明人間になってしまいます。服を着る事になりようやく他人にも認識されますが、別に透明人間だからといって少年が特別ヘンな生命体というほどでもないです。それ以上にアクが強い住人が多すぎるため…。
少年は後述するラブの力がなければ長時間行動すらままならない状態です。簡単に言えば睡眠欲みたいなものですが。

「敵を倒して経験値を貯め、レベルアップしてラスボスへ」というRPGのお約束を根底から覆す

経験値は「ラブ」として表記され、これは勇者によって殺されたアニマルのソウル(魂)を元の肉体に戻してあげる(生き返らせる)事で蓄積します。ついでにお金ももらえます。
他にも困っている住人の願い事や頼み事を聞き届けたり、お使いしたりミニゲームをクリアしたりする事でもラブは蓄積されていきます。
ラブが一定数蓄積されるとレベルアップしますが、それによる恩恵は「少年の行動時間が増える」のみ。とはいえかなり重要ですが。

住人はすべて「生きて」いる

moon世界は城、城下町、森、砂漠、孤島、未来都市などいろいろな地形や地域があるがそこに住む住人たちはタイムスケジュールに則って動いています。
朝になれば店を開け、昼になれば散歩に出かけ、夜になれば酒場で呑み、深夜になれば怪しい研究に精を出す…。一週間の範囲で行動が決まっていますが、少年の行動で変化することも。
この時間概念はソウルキャッチ(アニマルソウル救出)にも大いに影響し、○曜日の○時頃に○○で○○するとソウルキャッチ可能など細かく決まっています。

BGMは自分で選曲する

ゲーム内のMDショップで販売されているディスクを購入するとメニュー画面のサウンドプレイヤーに曲が追加されていきます。
数曲を設定しておいてのプログラム再生や単曲のみを設定してのリピート再生など普通の音楽プレイヤーとインターフェースが似ており、使いやすいです。もちろん無音にして少年の足音や鳥の声など、環境音だけをBGMにもできます。
MDは全40曲近く存在し、さまざまなアーティストが多岐に渡るジャンルのBGMを提供しています。それぞれ人気が高いです。
サウンドトラックは存在しましたが2012年に廃盤となりました。復刻を望む声も多く、オークション等では高値で取引されています。

プレイ動画

評価点

普通のRPGとは違った意味での「自由度」

好きなBGMで気ままにmoon世界を歩き回り、住人たちの生活を垣間見て頼まれごとをしたら解決し、帰り道でソウルキャッチしながらおばあちゃんの家でベッドに入ります。
新しい場所に行けるようになればそれだけ行動範囲が広がり、新たな住民の頼み事や問題解決、アニマルのソウルなどを発見できます。
このように一日の生活を自分でスケジュールしつつ自由に歩き回ることができるため、普通のRPGとは違った意味での「自由度」を満喫できるのです。これらを繰り返しながらmoon世界を踏破していきます。

もちろん既存のRPGが好きだという人もお断りというほどの内容ではありません。むしろ『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』等を遊び尽くした人こそ共感、理解できる部分もあるでしょう。

あの人があんな事を。こんなところにあんなものが。びっくりイベントは多数

単なるお使いだと思わせない仕掛けが施されたイベントの数々は何度プレイしても作業に感じにくいです。moon住人のすべてに存在するこのイベントを体験すれば、その住人の意外な一面が覗けたり実態に迫れたりして、より一層とmoon世界に浸れるはずです。

童話のような色彩で描かれる世界を舞台に、同じく童話のような生き方をする住人たち。いつの間にかプレイヤー自身もそこに入り込んでいるのです。

音楽に関するイベントが深い

前述したMDによる選曲システムも勿論のこと、ゲーム内にダンスクラブが登場しそこでもまたアーティストやバンドチームたちが手がけたBGMを流しています。
ダンスクラブではバンドクラブのアニマルたちなどによるコンサートが開かれるイベントも。

賛否両論点

強調される「アンチ○○」

衝撃的なCMを始めとした(当時の)アンチRPG要素。いわば毒を面白さに転化させている手法であり、当然ながら眉をひそめる人が少なくないでしょう。特に露骨に一部のRPGを狙い打ちした演出はそれぞれのゲームに思い入れを持つ人が嫌悪する可能性は高いです。CM等プロモーション戦略の側面から見れば、しばしば「知る人ぞ知る」「隠れた」名作といった枕詞がつく原因となったのも、このアクの強さの為でしょうね。
この点は対戦格闘やシューティングといったジャンルのように、特定のプレイヤー層への宣伝が功を奏した好例でもあります。逆にピンとこない人にとっては何が面白いのか伝わらず、好意的な見方をするプレイヤーのみが購入し、アンチが少ないがゆえに名作と謂われているとも捉えられますが…。これは世間のレビュー、感想情報の少なさやその偏りが物語っています。

問題点

高すぎた自由度

少年は時間が許す限りどこまでも放浪できます。イベントをクリアしないと先に進めない場所もありますが、そういう場所を抜きにしてもかなり広大な世界です。
AのイベントをするにはBとCを見た上でDを行わなければならない、といったようにイベントは一本筋ではなく複雑に構築されており、ノーヒントであることもあり、攻略本等がなければ高確率で詰まります。

ひとつのイベントをクリアするのに幾つかのイベントを経由しなければならないなどザラです。同時発生したりする場合もあります。
少年の生存時間との戦いになるためにイベントフラグを発見しても一旦戻らなければならないなども多いですが、曜日や時間帯が違うとイベントそのものが発生しないケースがほとんどでした。

マップ切り替えでBGMが切れる

マップを切り替えた瞬間に一瞬ですがBGMが途切れます(途切れないマップもあります)。途切れると言ってもごくごく短いものですが、音楽をウリにしている以上少し残念でした。

エンディングでの選択肢が極めて不条理

エンディングの一歩手前で、プレイヤーである少年は最後の選択をすることになるのですが、ここで間違うとかなり悲惨なバッドエンドに陥ります。
ネタバレ濃厚なため曖昧な言い方になりますが、これは「見てすぐ正解が分かるような選択肢」ではなく、そこまで『moon』というゲームをプレイしてきた上でもつい選んでしまいそうな選択肢でした。何人もの人が泣いたことでしょう。
ただ、実際は丁寧にゲーム中の会話や「ラブ」とは何かを考えていけば理解できる正解ではあります。他の懇切丁寧なゲームに慣れたユーザーが誤ってしまうような設定はテーマ上意図的なもので、テーマを理解して初めて納得できるエンディングといえます。

戦闘が存在しないRPGをRPGと呼ぶか否か

厳密に言えばアドベンチャーと前述したとおり、少年の行動内容に「戦闘」の文字はひとつもありません。故に、普通のRPGだと期待して購入した人は肩透かしを喰らい、中にはRPGに否定的な中身に幻滅することも。
昨今ではこうしたタイプのRPGは増えてきましたが、プレステ時代のこの当時はRPGといえば『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といった大手RPGを連想する人のほうが多かったためですね。

総評

余談ですが、本作は現在ではプレミアが付いており、当時の定価価格よりも高い値段で取引されていることが多いです。新品のソフトに至っては1本100,000円というあまりにも法外な値段がつけられているのも何処かで見つけて驚きました。

『moon』攻略本

ムーンオフィシャルブック | ファミ通, CB’s PROJECT |本 | 通販 | Amazon

圧倒的な没入感。この世界に少しでも足を踏み入れた瞬間に、『moon』住人の仲間の一人になっている自分が分かります。寧ろ、仲間になりたくなるでしょう。
『moon』世界に住んでいる人々はケンカもするし腹黒い一面もあります。そんな住人に現実世界の少年がどう関わっていくのでしょうか。殺されたアニマルたちの魂を救うことで経験値を得ます。普通のRPGとは真逆の行動は『moon』世界にどう関わっていくのでしょうか。
そして最後の光景を見た人だけが感じ取れる“何か”。とてもではありませんが文章では表現出来ないので、見て感じるしかないと思います。
しかし、電源を入れてコントローラーを持ちゲームをプレイする。そんな当たり前の行動のひとつひとつも、この『moon』のエンディングを見た時に、プレイヤーはそれまでとはまったく違う感覚を抱くはずです。
ゲームの中だけで完結しない本作の主題は、本来の「遊び場としてのファンタジー世界」との関わり方をプレイヤー自身に思い出させてくれることでしょう。

本稿で記載しております情報は、ゲームカタログ@wikiから引用させていただきました。

出典元はコチラです。

moon - ゲームカタログ@Wiki ~クソゲーから名作まで~ - アットウィキ

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