大島渚13年ぶりの監督作であり遺作となった『御法度』松田優作の息子・松田龍平のデビュー映画
1999年に公開された『御法度』(読みはごはっと、英題は「Taboo」)。
監督は”松竹ヌーヴェルヴァーグ」の旗手と称され、映画「愛のコリーダ 」(1976年)や「戦場のメリークリスマス」 (1983年)で知られる大島渚監督でした。

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司馬遼太郎のふたつの短編『前髪の惣三郎』と『三条磧乱刀』が原作となっていて、大島監督が脚色し、映画化しました。
舞台は幕末の京都で、新選組を男色の視点から描いた時代劇となっています。ビートたけしや浅野忠信など個性的な面々を揃えながらも、どこか淡い雰囲気が印象的な映画でした。
また、同作は大島監督の13年ぶりの監督作であると共に遺作となりました。

松田龍平、ビートたけし、武田真治、浅野忠信、崔洋一、大島渚
『御法度』と聞いて思い出されるのは、日本を代表する名優・松田優作の息子である松田龍平がデビューした作品という事。当時、話題となっていたのでご記憶の方も多いのではないでしょうか。

まだあどけなさの残る松田龍平。淡々とした演技や表情が中性的な印象を与えました。
あらすじ
御法度 - 作品情報・映画レビュー -KINENOTE(キネノート)

松田龍平
惣三郎の入隊後、徐々に新選組の猛者たちの空気が徐々に変化していく。
そして、衆道(男色)の気を持つ田代が、惣三郎を衆道に引きずり込もうと試み、他にも言いよる者が現れるなどし、新選組内の秩序を重んじる土方には風紀が乱れているように感じ、危機感を感じていた・・・。
松田龍平 プロフィール
1983年5月9日、東京生まれ。
俳優松田優作と女優松田美由紀の長男で、弟には同じく俳優の松田翔太がいます。ほかに妹も。
1989年の「ブラック・レイン」でハリウッドデビューを飾った父親の優作でしたが、1989年11月龍平が6歳の時に膀胱がんの転移により40歳の若さで亡くなっています。

松田龍平(左)、大島渚(右)2000年、第53回カンヌ国際映画祭にて
龍平は小学校からサッカーを始め、イタリアでサッカー留学も経験するなど、将来はサッカー選手を目指していました。
しかし、大島渚監督からの熱烈オファーを受け、高校受験を理由に一度は断るものの、「受験が終わった後なら出来るか?」と聞かれ、断る理由が無くなってしまったそうです。その後、自ら俳優の道へと進み、中学3年生ながら間接的に男性と絡むシーンを見事に演じました。
2002年には漫画家・松本大洋の短編集を原作にした映画「青い春」で主演。以降もコンスタントに映画や舞台、ドラマに出演しています。

松田龍平
また、2011年には『御法度』から縁があったプロデューサー孫家邦に声を掛けられ、映画「まほろ駅前多田便利軒」に出演して自身の代表作のひとつとなりました。
父親の優作に関しては、記憶は薄いものの父親の話していたことは全て覚えていると語っています。「松田優作の息子」という事実を隠したい気持ちがあった一方で、芸能一家だという意識は無かったそうです。
大島渚監督の遺作となった『御法度』
1996年に10年ぶりの作品となる『御法度』の製作を発表するも。同年に脳出血で倒れ、3年にも及ぶリハビリを経て、1999年に『御法度』を完成させました。
また、同作には土方歳三役で出演したビートたけしや崔洋一といった二人の映画監督が出演しています。これは撮影現場でのサポート役を、大島監督が託したものと言われています。

大島 渚(おおしま なぎさ)監督
2001年以降、大島監督は病状が悪化してリハビリに専念していきます。公の場にはほとんど姿を現しませんでした。
2013年1月15日に、神奈川県藤沢市の病院で肺炎により80歳で亡くなりました。
その訃報に際して『御法度』で主演した松田龍平はコメントを求められるも、「憔悴しきっており、コメントできる状態ではない」と事務所から発表がされました。その後、葬儀に出席した松田は藤竜也の弔電を読み上げ棺を運んでいます。
『御法度』に関連したエピソード
松田龍平は『御法度』で共演した浅野忠信を尊敬し、影響を受けたと語っており、デビュー当時からインタビューなどで話していたため、事務所へファンからよく浅野のブロマイドが送られてきていました。
浅野と共演するまで主に洋画を観ていた事から、邦画で何を見て良いのか分からず、この作品で出会った浅野忠信の作品を見始めたそう。
また、同作でアイドル的人気を獲得し、バレンタインにはダンボールに何箱もチョコレートが届いていたとも言われています。

浅野 忠信
神田うのにとって、初の映画出演作となった『御法度』。輪違屋で一番の売れっ子太夫を演じました。
また、相当高い遊郭の売れっ子と推測される人物設定でしたが、神田うのは台詞の無い短い出演シーンながら、見事な花魁歩きと高級花魁らしい男を虜にするような色気を醸し出し、強烈な印象を残しています。

神田うの
作品データ
監督:大島渚
脚本:大島渚
音楽:坂本龍一
公開:1999年12月
配給:松竹
時間:100分
出演:松田龍平、ビートたけし、崔洋一、浅野忠信、武田真治、神田うのetc.

『御法度』 試写会の試写状
松田龍平のデビュー作だった『御法度』。当時”あの松田優作の子供”の触れ込みが注目され、さらに繊細な男色というテーマを扱う映画の主人公という事にも驚かされた記憶があります。
松田龍平は、同作で見せた色白でクールな青年のイメージは今も残っていますね。これからの活躍にも期待しています。