
両肩のキャノン砲が炸裂する! これぞガンキャノン!
今回紹介するのは、『機動戦士ガンダム』(1979年)主役メカトリオの2番手で、ファン人気も高いカイ・シデンの愛機でもあった、RX-77 ガンキャノンのHGUC REVIVE版の紹介です!
ガンキャノン 1/144 HGUC 190 2015年6月 1200円

HGUC 190 ガンキャノンのボックスアート。迫力あるポーズだが、よく見ると肘関節等は、今回のキットでのアレンジのディテールで描かれている
ガンキャノン WowWow ガンキャノン WowWow
ガンキャノン WowWow ガンキャノン WowWow
キャノン キャノン ガンキャノン
死ぬか 生きるか ガンキャノン
戦の地獄 ガンキャノン
巨大な敵は 砕けて散った
轟然 一発! キャノン砲!

完成したREVIVE版ガンキャノン。小顔だが、全身のたくましさのメリハリは強調されている。
……いや、失礼しました。
笑いを取りに行ったわけではなく、なぜだか大河さん、ここ数十年間、ガンキャノンという名前を聞くと、必ずこの、『大鉄人17』(1977年)エンディング『ワンセブン賛歌』の替え歌というか空耳が、頭の中で鳴り響く病に侵されています。
たぶんこれは、脳外科か心療内科へ行った方がいいんだと思いますが、冷静に考えると、ガンキャノンとワンセブンって、韻を踏んでいるように思えるけど、字面的には二つの「ン」しか合ってませんね、気を付けましょう。
というわけで、ガンキャノンだ!
『機動戦士ガンダム』(1979年)主役ロボットトリオの1機、ガンキャノン!
子どもが好きな、真っ赤な機体、ガンキャノン!
でも、赤いからって、悪い敵の仮面男の専用ロボットじゃないぞ! 正義の味方だガンキャノン!
今にして思えば、白兵戦用のサーベルどころか、シールドすら装備されていないのに、その左手はなにゆえ指まであるのか、無駄すぎるぞガンキャノン!

再現画像より。REVIVE版ガンキャノンは、細身に見えるが、肩のキャノン砲の幅は旧HGUC版よりも広くバランスをとられている
というわけで、HGUC ガンキャノンだが、実はHGUC ガンキャノンは、一度シリーズトップバッターである、HGUC商品化第1号のプラモデルとして、1999年にガンプラ史にその名を刻んでいる。
しかし、ガンプラの、技術や設計能力の壁は日進月歩。『機動戦士ガンダム』(1979年)が35周年を越える頃合いには、既に1999年に最新技術を導入して開発生産されたHGUC 001 ガンキャノンは、古い遺物と化してしまっていた。

ジャブロー内部で、襲い来るジオン軍を迎撃するガンキャノンのビーム・ライフル
そもそも、なにゆえガンキャノンがHGUC第1号に選ばれたのか。詳しい理由や実際のところなんぞは分からんが、まぁ「一番最初にガンダムを出しちゃうのは、芸がなさすぎる上に、ユーザーの興味がその後引っ張れない上に、結果的に投入技術が一番古くて拙いモデルになってしまう可能性が大きい」といった辺りが思いつく限り。
だからといって、栄えある新生ガンプラシリーズ第1号と2号が、ギャンと旧ザクでは、盛り上がるべきスタートが盛り上がる気配も見れなくなる。
“その合間”を取って「主人公側主役レギュラーの右大臣格」でありつつ、肝心のガンダムではない、という絶妙の塩梅さから、HGUC第1号に、ガンキャノンが選ばれたって辺りが順当ではないだろうか?

地上から、対空砲火で、ガンダムのドッキングを支援するガンキャノン!
確かに、ガンダム35周年を迎えて、主役のガンダムは何度も1/144 HGではリメイクがされてきた。っていうか、このタイミングでまたリメイクしたいらしい。
それと比べると、アニメでの「V作戦トリオ」のうち、ガンタンクはまぁ、HGUC立ち上げ初期の2000年版で、あれ以上どうしようもないっていう、良い意味でも悪い意味でも(笑)
むしろ、ガンタンクはあの時点で、1/144で出来る範囲のブラッシュアップを完璧にやり終えてしまった感がある。
そうなると、そのガンタンクや、その後のガンダム 021やHG Ver.G30thなどへの進化と比較すると、HGUC 001 ガンキャノンは、一軸90度の肘関節や、ホイルシールのカメラアイ、各関節の可動範囲や細かいパーツの色分けなど、並べてしまうと見劣りしてしまうのは確かだろう。

劇場版『めぐりあい宇宙編』冒頭。キャメル艦隊に向かう、カイとハヤトのガンキャノン、108と109
しかし、ガンダム以外で、HGUC枠内で、一度商品化されたモビルスーツが、バリエーション以外でリメイクされた例は、ガンキャノン発売前まではまだなかった。
“そういう意味”では、ガンキャノンと同期のHGUC最初期の商品である、ギャンもキュベレイも百式も、今の目で見ればリメイクすべき箇所は多いし、特に百式やキュベレイは、ファンの人気も高い機体である。

テキサス・コロニー。アムロを探すカイとハヤトのガンキャノン
加えて、ここまで、バンダイは、ことHGUCブランドに関しては、『機動戦士ガンダム』(1979年)DVD発売(劇場版特別版2000年発売 TV版2007年発売)や、『機動戦士Zガンダム』(1985年)映画化(2005年)と連動するようにして、間にOVA版やMSV版のモビルスーツを軸に商品化を展開してきたが、さすがに元原作作品登場モビルスーツネタ切れや、バリエーション展開の先細りに、先行きの不安を抱かざるを得ない状況にあった。

『めぐりあい宇宙編』のこのシーンでは、3機目のガンキャノン203が確認できることでも有名
そこで。
そこで状況を打開するための新機軸案が、この時期二方向から展開された。
一つは「歴代主役ガンダムを、統一フォーマットでリメイクする」をキャッチフレーズに始まった、“オールガンダムプロジェクト”。
そしてもう一つの企画が、「過去に一度、HGUC化されたモビルスーツを、最新のHGUC技術とフォーマットで、再生する」という目的の“REVIVE”であった。

『めぐりあい宇宙編』で、ア・バオア・クーに取りついたカイとハヤト
確かに、相対的に古くなってしまったモビルスーツを、再生という名目で新たに最新技術で作りなおせば、商品化のネタは二週、三週と無限にビジネスを続けることができるようになる。
擁護ではないが、この時期既に、HGUCはシリーズ開始15年を経過していて、それは初代ガンプラから、『新機動戦記ガンダムW』(1995年)までの時間経過に匹敵するのだ。ガンプラファンであれば、その間のガンプラの技術革新を覚えているだろうし、その間においても、正式なリファインではないが、ザクやドム、ガンキャノンなどを含めた初期のモビルスーツ達は、既にOVA版デザインなどで、リファイン、リメイクはされて当然のスパン、それが15年という時間であることは理解できよう。

REVIVE版ガンキャノンの上半身。ゴーグルがクリアパーツ化されたことと、キャノン砲の接続が、肩幅よりもオフセットされたことで、頭部の可動のクリアランスと、キャノンのボリュームを確保していることが分かる
そこまでのエクスキューズがあって、まるでネタのように、HGUC REVIVEも、この年、ガンキャノンから再始動した。
それはおそらく、主役のガンダムを再々リファインするためのアリバイでしかなかったのかもしれないが、それでもこの“REVIVE”というビジネスターンは、ガンキャノンというキャラクターにとっては僥倖であったと言えるだろう。

1stガンダムのモビル・スーツにはあまり似合わないが、イマドキ風アクションポーズを取らせてみてもしっかり決まってくれる
REVIVE版のガンキャノンは、既にガンプラの素材世代が、ABS樹脂を排してKPSを導入し始めていた時期なので、このキットもその恩恵を十二分に受けこんでいる。
プロポーションこそ、頭身が高くなり、足も伸びて、ヒーロー体型になりすぎて、大河原邦男氏デザインとも、『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)などでの、安彦良和氏作画版とも違った現代的シルエットになってしまったが。
その代わり、HGUC 001版で、違和感のある六角形アレンジにされてしまっていたバックパックのダクトの形状が治された他、全身の可動範囲が劇的に向上。

REVIVE版のバックショット。バックパックのダクトがちゃんと円形に直されているのがわかる
HGUC 001版では付属していたスプレーミサイルランチャーがなくなったが、その代わりにゴーグルはクリアパーツになり、ビームライフルのサイトもイエローで別パーツ化され、HGUC 001版の金型流用は一切ないなど、15年の技術差をこの商品一つで知らしめて、REVIVEシリーズのインパクトを、強烈にガンプラユーザーに焼き付けることに成功した。

肘関節のアレンジの仕方は、好みが別れるかもしれないが、二重関節で120度以上曲げられるメリットの方が高いと感じる。
確かに、アニメプロポーションに近かったのはHGUC 001版ではあるし、機体色の関節部分の成型色も、個人的には今回のダークグレーよりも、HGUC 001版のダークグリーンの方が“昔のアニメ版っぽい”という意味では好みである。

もちろん膝関節も二重関節構造
なので今回は、この傑作REVIVE版をストレートに組みつつ、もうABS樹脂に気を遣う必要もなくなったので、全身のグレーを濃緑色に全塗装して、ライフルとキャノン、そしてバックパックを、ミディアムブルーで塗装して仕上げた。
あ、あと、ここだけはさすがにパーツ色分けが無理だった、こめかみのバルカンのイエローは、しっかりと塗り分けておいた。

フロントアーマースカートは、HGUCでは基本左右1パーツだが、定番のお手軽改造として、パーツの真ん中で左右を切り離すだけで、こうして独立可動が可能になる
当初から、HGUC 190 REVIVE版ガンキャノンは2機用意しておいたが、劇場版Ⅱまでの再現ではナンバリングシールを貼らずに撮影し、『めぐりあい宇宙編』撮影クランクイン時に、2つのガンキャノンにそれぞれ、108、109のシールを貼って、カイ機、ハヤト機に設定して撮影で使い分けた。

カイ・シデンの108、ハヤト・コバヤシの109。2機のガンキャノン
オールガンダムプロジェクトと新生REVIVE、共にガンプラの方向性を一気に広げるカンフル剤的効果があると同時に、縦横無尽な商品化可能性を、2つの枠に閉じ込めてしまう危険性を孕んだ企画ではあるが、一方ではやはりこちらも2013年からスタートした『ガンダムビルドファイターズ』なるアニメ連動ガンプラ企画とも、絶妙なコラボレートを見せているシリーズも生まれていて、バンダイの柔軟さを味わうことが出来る。
とりあえず、最初の『機動戦士ガンダム』が好きな人は、HGUCシリーズから、これとガンダム(お好きなのを)とガンタンクとザクとドムとズゴックの、敵味方で6つ程度を買っておくだけでも、充分「良い時代になったなぁ」と、感慨に浸れるということ請け合いである。
市川大河公式サイト