むしろ気になるのは、肩関節の構造で。
肩関節は、なぜか肩アーマーと内部肩ブロックが一体成型の1パーツで成立していて、肩アーマー内で上腕部が独立して開く動きが出来なくなっているという謎の構造。
問題の肩ブロック。アーマーの外装に肩フレームのブロックが一体成型の1パーツで成り立っている
確かに簡易キットなのだから仕方がない、GFT版よりははるかにマシだろうと言われてしまえばそれまでだが、一方で他所箇所にはさまざまに、ボールジョイントや二重関節まで装備したキットでありながら、「肩アーマー内で腕が開けません」は、それこそ先のGFT版を除けば、少なくとも正規商品版の1/144 RX-78 ガンダムでは、ガンプラの歴史の中で初めての珍事となる。
面白いのはその謎仕様のフォローの仕方で、肩アーマーとボディの接続が、HGUC 191 REVIVE版と同じボールジョイント構造(ただし、ジョイント受け部はポリキャップではなくプラ材質だが)になっているので、そこで角度をつけることで、左右方向斜め上に向かっては脇を広げることが出来、しかしその角度は惜しいところで水平までは届かないという、なんともチグハグなフォーマットに落ち着いた(いや、パーツ分割的にもプレイバリュー的にも、普通にここはアーマーと上腕肩ブロックを、パーツ分けしておけばいいのにとは本気で思うが)。
肩の構成。ボディ側のボールジョイント受け部が上方向にはかなり動くので、これで肩脇の開きをカバーする。上腕はただ、肩アーマーに刺さるだけで、肩の動きはボールジョイントのみ頼り
股関節も、スカート分割がされていないだけではなく、両脚の付け根の接続が一軸関節(要は、初代1/144 ガンダムと同じ)なので、開脚も出来ず、スカートが固定なので前後にもあまり動かせず、足首がボールジョイント接続である意味性が全くなくなってしまっていて、ここもチグハグ。
簡易キットなのに肘が二重関節なのは、驚かされるところ
色分けも、GFT版以上に、白、赤、青、イエローはもちろんのこと、そこに手首やバックパックや関節、ビームライフス用のグレーが加えられて、ランナー内パーツ単位で色分けされている。
その中でも特筆すべきは、額のメインカメラが、カメラアイ下の隈取と、顎と、三位一体で赤い1パーツで構成されているために塗装不要で、これまでの1/144 ガンダムの多くでは、メインカメラはカメラアイとセットでクリアパーツで造形されることが多かっただけに、ここは密かに評価に値する部分と思われる。
その分、ふんどしのフロント部分が、ここは普段、赤成型パーツでV字マークだけシールや塗装というケースが多いが、このキットではフロントスカートの四角いブロックと共にイエローの1パーツで成型されているので、付属のシールを貼るか塗装しないと、そのままだと違和感が半端ないという弱点もあり。チグハグだなぁ。
足の前後可動幅(開脚は出来ない)。スカートアーマーは固定なので開かないが、クリアランス的にはまずまずだろう
合わせ目は、HGUC 191 を意識して、脛パーツなどは簡易キットなのに前後アーマー分割でパーツ分けをしていたりする一方、腕やボディや太腿は、ガッツリ接続線が出るようになっているなど、こちらもやはり、チグハグ。
肩のボールジョイントを活用することで、ボックスアートのようなポーズもギリギリ可能に
武装は、ビームライフルこそ付属しているものの、サーベルどころかシールドがない。
ないない尽くしだったGFT版よりはマシかもしれないが、ライフルだけ握って、シールドがないガンダムという姿もなかなかしまらない(しかも、ライフルを両手で構えられるわけでもない)。
しかもそのビームライフルも、1パーツなのは簡易キットなので仕方がないにしても、なまじHGUC 191 REVIVE版を基にしてしまったため、同じ1パーツライフルでも、初代1/144やFG1/144と比較して、肉厚に作られてしまったため、逆に右片面に肉抜き穴が多数発生してしまって見栄えが悪くなるという、あぁチグハグ。やっぱりチグハグ。
左側面から見ると普通に出来の良いビーム・ライフルだが……
右側は肉抜き穴だらけで見る影もない。このキットを徹底改修するのであれば、ここはぜひ手を加えたい部分
……とまぁ、ところによっては最新HGUC以上、ところによっては初代キット以下と、まぁチグハグ連呼の、なんともおかしな設計概念のキットなのだが、それもこれも、GFT版のように、ゼロから簡易キットを設計したのではなく、HGUC 191 REVIVE版をベースに、よりHGシリーズに近い仕上がりで、なおかつ初心者の子どもでも組み立てられる難易度で、なおかつ無料で頒布してもバンダイに負荷がかからないコストで……と、様々な要素が絡み合い過ぎた結果、このなんともいえない「チグハグガンダム」が出来上がってしまったというのは、ガンプラの歴史を見渡していく中では、ある意味珍事でありながらも、決して失望やイライラを呼ぶような現象ではなく、実に微笑ましい状況であるとも言えるわけだ。
トリックアートのようだが、こちらの角度から、こういうポーズをとらせれば、肩のボールジョイントの可動範囲のおかげで、ライフルを両手で持っている「ように」見せることは可能
その“状況”とは、現状「1/144のガンダム」の選択肢がこれだけ広がっていることそのものであって、確かに2017年現在で、手に入る1/144 ガンダムが、このキットしか選択肢がないとなれば、ふざけるなバンダイ、責任者出てこいという気分にはなってしまうかもしれないが、上記したGFT版と共に「イベント限定」で「ガンプラ未体験の子どもに、ガンプラの楽しさを体験してもらおう」という主旨で配布される素材としてのみ見た時には、どちらもそれなりの、拘りと割り切りがあって趣深いのではないだろうか。
なんにせよ、今回紹介した2つも、れっきとした「バンダイ」の「1/144 RX-78 ガンダム」の「ガンプラ」のバリエーションである。
今回は、そうした「背景の事情」「商品成立の事情」を体現するため、どちらも未塗装、素組で組み上げたものを撮影に用いている。
市川大河公式サイト