エロ過ぎる!手塚治虫の暗黒面炸裂の異色作『奇子』とは?

エロ過ぎる!手塚治虫の暗黒面炸裂の異色作『奇子』とは?

手塚治虫は、たしかに、漫画界の巨匠です。『火の鳥』『ブッダ』を手掛けた教養漫画の大家でもあります。しかし、それだけでは語りきれない魅力があるのも事実。今回は、一般的にあまり知られていない手塚の黒い部分が濃縮還元された怪作『奇子』を紹介していきたいと思います。


田舎の封建的名家を扱った作品

奇子…。これで「あやこ」と読みます。なんとも独特なセンスではありませんか。物語の舞台は、昭和24年の日本。太平洋戦争から復員してGHQの諜報員となった天外仁朗が、地元に戻ってくるところから始まります。仁朗の実家・天外家は東北地方の大地主。天外家の当主で仁朗の父・天外作右衛門が絶対君主として君臨する、田舎の封建的大家族を絵に描いたような家柄です。ちょうど、『犬神家の一族』を想像してもらうと分かりやすいでしょう。

というか、復員した長男以外の子供が波乱を巻き起こす展開も、大広間で家族一同集まり、それぞれの思惑・策略を抱きながら家族会議をするシーンがあるところも、『犬神家』にそっくり。雑誌『キング』における『犬神家の一族』の連載が1950年~1951年、小学館『ビッグコミック』における『奇子』の連載が1972年~1973年という事実を鑑みると、もしかしたら、少なからず手塚は『犬神家』に影響を受けたのかも知れません。

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『奇子』の主要人物を紹介!

大家族モノの難点は登場人物が多すぎて、誰が誰か分からなくなること!ということで、ここで『奇子』の主要人物を整理しておきたいと思います。

■天外仁朗…GHQの諜報員であり、天外家の次男。後述の自分が起こした殺人事件をきっかけに村を出て、祐天寺富夫(ゆうてんじとみお)と名を変え、朝鮮戦争特需の影響もあり、裏社会でのし上がります。

■天外奇子…初登場時は4歳。表向きは天外作右衛門と天外すえの子とされていましたが…。

■天外作右衛門(てんげ さくえもん)…天外家の当主。傲慢不遜で放蕩淫乱なクズで、諸悪の根源的人物。物語中盤で脳卒中になり、しばらく植物人間状態でそのまま死亡。

■天外ゐば…作右衛門の妻。典型的な滅私奉公型の奥さんです。

■天外市郎…家督相続に拘泥し、そのためには手段を選ばない極悪漢。というか、天外の男はほぼ全員クズです。

■天外すえ…市郎の妻。どこか影のある女性。

■天外志子…天外家の長女。天外の中ではかなりマトモなほう。

■天外伺朗…天外家の三男。子供の時は正義感の強い常識人だったのですが…。

4歳の少女・奇子。その出生の秘密とは?

さて、天外仁朗が実家に戻ると、新しい家族が待っています。それが4歳の少女『奇子』です。仁朗は、この奇子のことを、父・作右衛門と母・ゐばの子供、つまり、自分の妹だと知らされていました。お袋も年なのによく頑張ったな…そう思っていたのですが、なんと、奇子は、作右衛門が兄・市郎の嫁・天外すえと関係を結んだことによって出来た子供、つまり仁朗にとっては腹違いの妹だったのです。それを知った仁朗は、腐りきった天外家の現状に絶望するのでした。

そんな忌み子・奇子は、GHQのスパイとして殺人事件を犯した仁朗が隠ぺい工作をしているところを目撃してしまいます。警察の調査が及んだ際、まだ幼い奇子は犯人が仁朗であることを話してしまう可能性があるわけです。そこで、市郎によって、奇子は病死したことにして、天外家の土蔵の地下室に以後20年間にわたって幽閉されることとなったのです。

かわいそうな奇子…

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禁断のきょうだい愛が描かれている!

ここからが、この漫画のエロいところ。土蔵に閉じ込められた奇子は、人との付き合い方、社会的規範・禁忌に疎い女性へと成長します。まぁ、物心ついたときから、ひたすら闇の中に放置されてきたのだから、無理もありません。
特に常識外れしていたのが、性への意識。初潮を迎えたあたりから、少しでも「いい人」だと思った異性と、身体の関係を結ぶようになるのです。友情・家族愛…そういったものを感じることなく、「LIKE」と「LOVE」の区別も出来ないまま大人になった奇子にとって、男性への「好き」という感情表現は、SEXだけだったのでした。

エロく成長していく奇子…

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最初の相手は、血のつながったきょうだい三男の伺朗。奇子を心配して、ちょくちょく様子を見に来ていた伺朗に、彼女は「男の人好きになりたいんだよう!」と関係を迫ります。最初は拒否した伺朗でしたが、何の楽しみもなく一人不遇の人生を送る妹を不憫に思い、「一度だけだぞ!」といって、近親相姦を交わすことに。暗い土蔵の中に住む奇子にとって性行為とは、唯一、陰の世界から解き放たれて自由になれる瞬間でした。それからも、奇子はことあるごとに伺朗へ関係を求め、次第に伺朗のほうも奇子を求めるようになるのです…。

この『奇子』、手塚を『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』などを手掛ける児童漫画家として認識している人や、『火の鳥』『ブッダ』などの教養作品を得意とする作家だと思っている人に、ぜひ、読んでもらいたい作品です。その後、奇子は蔵から抜け出し、祐天寺(仁朗)にも再会してさまざまな出来事に巻き込まれていくのですが、まったく救いのない終わり方をしているのです。これぞまさに、黒手塚!気になる方はぜひ一読してみると良いでしょう。

(こじへい)

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