『ガンプラり歩き旅』その25 ~弱きジムよ! これが本当の量産型だ!~

『ガンプラり歩き旅』その25 ~弱きジムよ! これが本当の量産型だ!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第25回は、『機動戦士ガンダム』(1979年)後半から登場した地球連邦の量産型モビル・スーツ、ジム!


質より数だ! いけいけぼくらのジム軍団!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、『ガンダム』劇中での「ガンダムの廉価版」を、メタ的に再現したともいえる傑作キット、HGUC ジムの紹介です!


ジム 1/144 HGUC 020 2001年4月 700円

ボックスアート。初登場のジャブロー構内を見立てた背景をバックに、まるで強そうなカッコいいジムがポーズ決め!

ジム! 主人公メカの量産型=全編登場ロボットの中で最弱、を打ち立てた金字塔だよジム!
ジム! ネーミングだって、ガンダム(GUNDAM)の、最初と最後の一文字ずつでGM=ジム!
ジム! 一応連邦軍の正式量産型だからって、後付けのOVAや模型雑誌企画などで、山ほど派生型がでっち上げられるんだけど、そのたびにどんどん格好良さがインフレを起こしていって、挙句の果てにはジムクゥエルとかジムカスタムとかジムストライカーとかパワードジムとかジムスナイパーⅡとか、誰がどう見ても、後の世界を先に描いたはずの『機動戦士Zガンダム』(1985年)のジムⅡよりも、高性能にしか見えない逆転現象まで起こしたジム!
っていうか、もはや、ガンダムMK-Ⅱよりも、普通に強そうだぞ、ジムスナイパーⅡ!

実際のジム初登場時では、作画現場が混乱していたのか、ジムはいきなりガンダムのビームライフルを手にしてシャアのズゴックに向かっていった!

というわけで、『機動戦士ガンダム』に登場したジムです。
もうね、百歩譲ってジムコマンドは、デザインした出渕裕氏的には「ガンダム本編に登場したジムを、アニメ技術の進歩で解像度を上げて描いただけ」というモチベーションがあったからまだ許せるけど。
パワードジムとかジムクゥエルとか、どう頑張っても進化論的に、ジムとジムⅡの間に入らない時点で、確実に拒否反応を起こします大河さんです。

大河原アングルで立たせてみると、案外威風堂々としておりますジムの雄姿です

だってね?
みんな、ガンダムマニアの皆さん、知ってました?
ジムは、その後のOVA乱立時代に、連邦軍の主戦力としてカッコよさと強さがインフレを起こしますけどね。元々の『機動戦士ガンダム』では、劇場用映画『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)でこそ、ジムがリック・ドム相手にサーベルで勝つシーンが2つありますけどね。テレビ版ではジムは、あれだけ大量に戦局に投入されておきながら、敵機を撃墜した描写が1カットもないんですよ!?(描かれてないシーンを含めて、戦争全体で1勝もしてないとは言っていない)

最終決戦で、リック・ドムを切り裂くジム!

同じく、リック・ドムに白兵戦で斬り勝つジム!

お前らがどんだけ歴史を上書き修正しようとも、ジムは弱いんだよ! むしろジムは、弱さが魅力なんだよ!
ショッカーの戦闘員が、全身にフルアーマー武装を着込んで、10人ライダーをぶち殺してまわる図とか、見たくない以前にあっちゃいけないだろう!?
9年連続優勝するクラウンライターライオンズとか、普通に嫌だろう!?
『3年B組金八先生』(1979年)と『夫婦道』(2009年)との杉田かおるの間に、「1990年頃は壇蜜でした」とか、それはもう入れちゃいけない時系列だろう!?

ジャブロー基地で、生産された量産型が並ぶ、当時のロボットアニメでは革新的な画であった

というわけで、ノーマルジムの1/144プラモデル化としては、たった一回の1981年4月以来、ちょうど20年の月日が流れまして発売になりましたHGUC版ジム。
一応、HGUCのコンセプトの中に「アニメデザインを極力尊重しつつ、可動領域確保のためのデザイン変更を行う」というの“も”あったらしく、それはHGUC第1号と2号の、ガンキャノンとギャンで明快にエンドユーザーにアピールされて、ズゴック、ガンタンクなどで、少なくとも初作『機動戦士ガンダム』のモビルスーツに関しては、原点回帰尊重で商品化がハイレベルで進んで商品展開が始まったHGUC。

ボール群と共に(いや、いちゃいけないロボットが何機かいるけど)大量の部隊でア・バオア・クーに攻め入るジムたち!

しかし、技術的熟成進歩をあえて待つためか。それともバンダイお得意の、脱ぎ風俗のようなじらし商法ゆえか。肝心のRX-78ガンダムが、いつまで経っても出てこない。
それはザクも一緒で、HGUC展開2年目を終えようとしても、ガンダムGP01とか、グフとかハイザックとかザクⅢとか、微妙に掠るモビルスーツは商品化されるのだけれども、肝心のガンダムとザクは、なかなか商品化されない。
むしろ、なんでか先にガンタンクまで出ちゃってる始末で、いい加減にしろよと誰もがツッコミたくなったタイミングで、ジムとガンダムの発売がアナウンスされた。

地球連邦のジム大量部隊と、ジオンのリック・ドムの大量部隊が、今正面から激突しあう!

そりゃ誰もが、ついに登場する、1/144HGUC決定版のガンダムの方に心を奪われるよね?
ここへ来て、真打登場に胸をときめかせるよね。
むしろ、露払いで直前に発売されるジムのことなんか、翌月発売のガンダムの設計や完成度を、事前に予測しておきたい層にしか求心力はないよね?
むしろむしろ、「ジムを待ってた」ガンプラファンは、一足先に量産型色替えで発売されたばかりの、シャア専用ズゴックを買っていて、“あのシーン”に見立ててジムとの絡みを再現したい人が殆どだよね?

完成したジムのポージング。撃つはビーム・スプレーガン!

いや、それでこそジムなり!
ジムは雑魚なのだ! 雑魚は雑魚らしい扱いこそが相応しいのだ!
ロボットアニメの主人公サイドの脇役のロボットの中でも、最も素敵な雑魚、それがジムなのだ!
一機辺りの雑魚指数は、『マジンガーZ』(1972年)のボスボロットやロボットJrなどもっと高い前例があったが、あれだけ大量生産されておいて、あれだけ集団で負け続けた「主人公ロボモドキ」は、後にも先にもジムぐらいのものだろう。

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