1976年2月に明るみになった、アメリカの航空機製造会社「ロッキード社」をめぐる汚職事件、通称「ロッキード事件」。これにより、田中角栄元首相が収賄容疑で逮捕、つまり「総理の犯罪」という、空前絶後のスキャンダルだったために、当時、大変な騒ぎとなりました。
田中元首相の逮捕を伝える号外
◇東京新聞 号外◇昭和51年7月27日 田中角... - ヤフオク!
事件発覚から7年後の1983年10月に、田中元首相には実刑判決が下るのですが、それより1年前の1982年7月にサザンオールスターズ5枚目のオリジナルアルバム『NUDE MAN』が発表されました。その表題曲である『NUDE MAN』は、明らかにロッキード事件について皮肉っている楽曲。
1分ちょっとの佳曲ながら、なかなか風刺が効いています。
NUDE MAN(サザンオールスターズ)
前夜(桃花鳥)(さだまさし)⇒トキ
桃花鳥とは、学名ニッポニア-ニッポン、つまり、トキのこと。かつては日本中の空を飛びまわっていたものの、明治期以降は、乱獲に次ぐ乱獲で激減。2003年10月10日に最後の個体が死亡したことにより、日本産のトキは絶滅しています。
以下は、さだまさしの『前夜(桃花鳥)』における歌い出し。
最後の日本産トキ「キン」の剥製
トキ - Wikipedia
80年代といえば、ディズニーランドが開園され、マクドナルドに代表されるファーストフードがすっかり日常化していた時代。ファッションも文化も、アメリカ的なものばかり嗜好する若者たちを見るさだの目は、どこか皮肉めいています。
しかし、この曲。単純に、トキのことなどどこ吹く風で、西洋かぶれに躍起になっている世間をただ批判したいだけの歌ではありません。
後半の歌詞には、「世界では紛争などが起こっているけれど、僕はこの狭い部屋の平和で手一杯」というフレーズが出てきます。つまり、トキの減少やそれに無関心な世間への問題意識を十分に感じながらも、何も、できないし、何もしない、ちっぽけな自分を嗤っている歌なのです。こういう一般感覚があるからこそ、さだは息の長いミュージシャンであり続けているのでしょう。
(こじへい)