『ガンプラり歩き旅』その21 ~「20年目の300円ガンダム」~

『ガンプラり歩き旅』その21 ~「20年目の300円ガンダム」~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第21回は、ガンダム20周年を記念して発売された「最新デザインの『1/144 300円ガンダム』」!


そのジレンマの中から、一時的な救済措置のような流れも含めて、企画されたのが、今回紹介するFGガンダムだったのではなかろうか(だから発売タイミングが、ガンプラ20周年ではなく、『ガンダム』放映20周年なのは、HGUCシリーズ展開開始と歩調を併せた為だとも解釈できる)。

腕の可動範囲の比較。上がFG版で、下が旧キット1/144版。あまり曲がらない印象のFG版だが、さすがに20年前のキットと比較すると進歩している

このFG、一応謳い文句としては「栄光あるガンプラの歴史は、技術や価格のインフレで現在が築かれており、MGシリーズの恩恵で出戻りモデラーが増えた今こそ、一度初心に戻って、ガンプラの始祖である1/144 300円ガンダムと、価格も素材も同じ商品を作ることで、改めてガンプラ20年の進化を、安価で作りやすいガンダムで手に取って感じてもらおう」というのがあった。
また一方では「ヘビーユーザーの要望を取り入れ続けて、難解に進化し続け過ぎてしまったガンプラを、一度初心者でも組み立てられる商品までハードルを下げよう」という意図もあったと聞く。

塗装が汚いながらも(汗)、新旧の顔の比較。右が旧1/144で左がFG版。こうして見ると、FG版もなかなか安彦顔で男前である

そうして出来上がったFGガンダムは、確かに価格も300円、パッケージ等はむしろ確信犯的に、最初の1/144 ガンダムに似せてデザインされていて、中身を見ても、むしろイマドキは斬新なまでに白一色の成型色と、割り切り方が半端なく、なるほどと思える仕様に仕上がっているが、しかし実際にこのキットを手にしていると、湧き上がってくる違和感が半端ない。

バックパックの比較。上がFG版で、下が旧1/144キット。FG版バックパックは噴射ノズルがあるだけではなく、シールドをマウントする穴が開いている

まず、デザインのリファインは良いのだろう。
筆者はカトキアレンジは基本的に好みではないが、初代ガンプラ第1号の1/144 ガンダムと20年の差を表すというコンセプトであれば、これぐらいガッツリとカトキアレンジが入ったガンダムである方がすがすがしい。
実際、このFGガンダムは、可動こそ値段なみでしかないが、施されているディテールやデザインは、直前期のPGガンダムを、そのまま小さくしたように1/144に落とし込んでいる。

ビーム・ライフルの比較。上がFG版。したが旧1/144キット版。さすがにFGでは、グリップが丸棒一本ではなくなったが、手首の孔と微妙に形が違うので、実はライフルを根本まで差し込めない

成型色が白一色なのも、価格を300円と決めた以上は仕方がないのだろうとは思うが、イマドキ「塗装が必須」なガンプラが、果たして「初心者向け」と言えるのかどうかは、はなはだ疑問である。
この「あえてキットの(メーカー側の)技術論的クオリティを落とすことで、組み立てやすさや単価を下げて、金銭的にお小遣いが少ない年少のユーザーにも買ってもらえる仕様にする」は、このFG以前だと『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(1991年)の1/144シリーズ、HGUC展開以降だと、『機動戦士ガンダムSEED』(2002年)のコレクションシリーズ、『機動戦士ガンダム00』(2007年)のFGシリーズ等でも試みられているが、どれも商品として評価が高いとは言い難い。

ビーム・サーベルの比較。上がFG版で下が旧1/144キット版。実は本体よりライフルより、一番「20年の差」が見えるのがこのサーベル。旧キット版はまるで道路工事の誘導灯(笑) しかし、旧キット版は4本(FG版では1本しかない)が付属されている

しかし、このFGガンダムがそういった低評価を逃れているのは、ひとえに「ガンプラ始祖の1/144ガンダムの、純粋なリメイク」という、ある種の出オチのようなエクスキューズがあるからだろう。
バンダイやガンプラファンは「合わせ目消しや塗装の練習台としても最適」と、このキットの「いいとこ探し」をアナウンスするが、合わせ目消しや塗装の練習なら、それこそ旧キットでも当然出来るわけで、逆に言えばこのFGガンダム(とFGザク)は、HGUCと並べようとするとカトキアレンジが強すぎてデザインで違和感が出るし、元のPGのデザインを、あまりにも忠実に移植できた恩恵からか、完成品を手に持って動かしていても、いかにも動きそうなところが、実は動かないという、イマドキのガンプラに慣れた勢いで作ってしまうと、自業自得のストレスに悩まされてしまう(笑)

これが原点回帰の証明としてのボックスアート比較。どっちがどっちかは……書かなくても分かるよね?(笑) ガンダムの背景がわざと似せられてるところはいろいろ深読みすべし

もっとも、それらは筆者のわがままであるし、個人的な主観ではあるので、では「1/144 300円ガンダムキットの完全リメイク」として物申してみよう。

このFGは、その旧1/144 ガンダムから20年の歴史を、デザイン面以外は否定したところで、同じレギュレーションで勝負してみるところに醍醐味があるはずである。
確かに、成型色は白一色、武装はビーム・ライフルとビーム・サーベルとシールドだけ、手首は武器持ち手を兼ねた握り拳一種類だけ、と、なかなか忠実に「300円ガンダム」を踏襲している。

付属物は、やはり旧キットと同じ3点セット。3つとも1パーツ成型なのも旧キットと同じで、ここも比較すると面白い

しかし、可動。
可動も20年で蓄積された技術の証であり、しかしそれを活かすために費やされた、歴代のポリキャップ、ABS樹脂、MSジョイント、KPS等の新素材や構造論は、300円ガンダムにフィードバックさせてはならないし、コスト的にもさせられないはずだ。
実際このFGガンダムはポリキャップすら使われてなく、完全プラ素材同士のはめ込みによって関節が構成されている。
ならば。
20年の歳月を経て、当時の300円ガンダムと純粋に比較させる意図があるのであれば、その関節の可動箇所とギミックは、レギュレーションとしては旧1/144 ガンダムと同じにするべきではなかったか? それを貫いたゆえの「リファインデザインの趣き」ではなかったのか?

 旧1/144キットとは違って、背中のバックパックに刺すサーベルの柄は、ビーム・サーベルとは別に2つ用意されているが、現代キットらしく、バックパックとの接続がボールジョイント処理になっている

今回のFGガンダムは、旧1/144 ガンダムと比較して、以下の部分の可動箇所、ギミックが増えている。

・股関節が開く
・上腕にロール軸が設置されたので、腕が肘上で回転可動する。
・シールドがバックパックにマウント出来る

どれも些細な違いかもしれない。
「インフレを起こしすぎたガンプラを、初心者向けに安価で作りやすくする」だけがコンセプトであれば、これらは嬉しいバリューだろう。
しかしそこで、わざわざパッケージデザインまで酷似させて初代1/144 ガンダムキットを踏襲したのであれば、それらギミックの「箇所概念」は、初代1/144と揃えるべきだったと思う。
実際、FGガンダムの設計は素晴らしく、本来、MGやPG、HGUCであれば、可動分割するスカートがあってこそ前後に可動が生きる両脚も、実際は分割状態になっているように見せながらも一体成型の箱型の腰でありながらも、絶妙なクリアランスの取り方で、初代1/144や、このキットを初めて手に取った時の想像以上に、前後に可動するのである。
「こういうところ」を見せつけるべきが、このコンセプトの本来の目的であって、「可動箇所が増えました。だから昔のキットよりよく動きます」を安易に取り込むのであれば、だったら価格があと200円上がってでも、スカートは分割するべきだし、さらに300円上がってもいいから、肘は二重関節にするべきだし、さらに500円上がってもいいから、全関節ポリキャップ装備にするべきだし……と、結局本末転倒な問題提起に逆戻りしてしまうのだ。

FG版は上腕がロールするので、ポージングの表情の幅は格段に向上している。シールドも自然に構えられる

だからだろうか、当初からHGUC版が出るまでの繋ぎだったのか、出オチのネタでしかなかったのか、FGシリーズは、ガンダムのあとすぐにシャア専用ザクと量産型ザクを出しただけで、その後は継続商品が出るわけでもなく、やがてガンダムもシャア専用ザクも量産型ザクも、このFGよりも数百円高いだけで、殆どの色分けが最初から出来ており、組み立てやすく、ポリキャップで二重関節や肩の引き出しまで可能という、HGUC版が発売され、ガンプラ内での立ち位置を失ってしまう。

シールドはバックパックにマウント出来るので、裏面にも一応アリバイ程度のディテールがモールドされている

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