杉浦茂
杉浦茂をご存じでしょうか?残念ながら2000年に既に亡くなられているのですが、日本を代表するギャグ漫画家です。いえ、ギャグというよりもナンセンスといった方が相応しいかもしれませんね。

杉浦茂
もしかすると写真を見てもピンとこないかもしれないですね。
明治41年の生まれですが、平成に入っても執筆活動を続けていたという驚きの漫画家です。
影響力は絶大で、現代日本漫画の父である手塚治虫やギャグ漫画の巨匠である赤塚不二夫をはじめとして日野日出志やいしかわじゅん、みなもと太郎、花輪和一、タイガー立石といった漫画家たちは杉浦茂からの影響を認めています。
また、SF作家のかんべむさしや横田順彌、ミュージシャンの細野晴臣なども杉浦茂から大きな影響を受けファンであることを公言しています。
そうそう、杉浦茂のファンとして忘れてはならないのが、アニメーション監督の宮﨑駿です。2009年にはスタジオジブリ(演出は長男の宮﨑吾朗)によって杉浦作品の「猿飛佐助」、「太閤記」、「八百八狸」などを原作にして読売新聞のCMが制作されています。
それでは、作品を見てみましょう。
ドロンちび丸

ドロンちび丸
如何です?ご存知ないですか?たとえ知らなくとも、この絵はどうです?カワイイとは思いませんか?と、「?」マークだらけの文章になっていますが、これが杉浦茂の代表作のひとつである「ドロンちび丸」です。
ストーリーは、主人公の「ちび丸」が忍術を覚えたいと「うずまき仙人」の弟子になり様々な人忍術を使って最強の忍者になるという、最近で言うと「NARUTO -ナルト-」のような、「ドラゴンボール」のような物語です。
しかし、これ昭和30年の作品です。キャラクターは、もう既にイラストとして今日でも使えるほどに完成されていますよね。
そして魅力はそれだけではありません!独特のセリフ回しがなんとも脱力してしまうほどに素晴らしいのです。緊張感のかけらもありません。

ドロンちび丸
何と言ったらいいのでしょう。この登場人物たちのネーミングは!どうです?脱力しちゃいますよね。
更にこんなセリフが。

ドロンちび丸
ね?なんだか力が抜けてしまうセリフでしょう?確かに命がなくなると死んでしまいますけどね。杉浦作品はこんなセリフばかりなんです。

ドロンちび丸
そうなんです。「怒りましたよ」と言ってるわりには、表情も含めてまったく怒ったように感じないんですよね。こうしたことは、何も「ドロンちび丸」に限ったことではありません。杉浦作品はほとんどこんな感じなんです。
それにしてもキャラクターの造形は素晴らしいです。現在でも人気があるようで、いろんなグッズにもなっています。

フィギュア
こんなものとか、こんなものまで!

Tシャツ
ファンでなくとも思わず欲しくなってしまいませんか?!
キャラクター
杉浦茂の作品には奇妙なといますか、奇想天外なといいますか、独特なキャラクターが多数登場しきます。それがまたなんとも独特の魅力になっているのです。

ドロンちび丸かるた
「ドロンちび丸かるた」の中の1枚です。人なのか何なのか分かりませんね。分かりませんが、愛嬌があります。
因みに、この「かるた」、色が良いですね!本物のレトロって感じがします。
更にはこんなものも!

ドロンちび丸
奇妙なキャラクターですが、注目すべきは絵のタッチをキャラクターによって変えているところですね。バラバラといってよいキャラクターをひとつのコマに入れ込むとは!杉浦茂恐るべしといったところですね。
他の作品でも同じように想像力の限りを尽くして生み出されたのであろう奇想天外な登場人物のオンパレードです。

少年児雷也
食べ物
これこそ時代でしょうね。高度成長前の昭和という時代を反映した食べ物が多く登場するのも杉浦作品の特徴といえます。
「ドロンちび丸」には「ほしいも小僧」というキャラクターが登場しますが、干芋は当時の代表的なお菓子だったのでしょう。「ほしいも」は「ドロンちび丸」に限らず杉浦作品には盛んに出てきます。

ドロンちび丸
ところで、ちょっと驚かされるのが、登場人物は動物(ここではタヌキですが)と普通に話をします。しかも気の抜けた。

カエルなんかも普通にむしゃむしゃやってますもんね。
豆もち、力もち、饅頭、カツレツ、がんもどきにコロッケ。昭和を感じさせる食べ物がたくさん出てきます。そういえば、「コロッケ五えんのすけ」や「うどんこプップのすけ」、「ふうせんガムすけ」に「やさいサラダのすけ」なんてキャラクターもいました。
この中では「野菜サラダ」というのがとてもモダンに感じますね。ハイカラです。そういえば、風船ガムは最近ではあまり見かけなくなりましたね。
映像作品
残念ながら杉浦茂の作品はテレビアニメや映画にはなっていません。ただ広告にはいろいろと使われていて80年代後半の西武デパートのCMはファンにとっては貴重といえます。
CMのつくりやモデルにはさすがに時代を感じますが、杉浦茂のキャラクターは古臭さを感じさせません。かわいくて、ちょっと不気味で、なんだか不思議なキャラクターですね。
「ドロンちび丸」と並んで代表作といえる「少年児雷也」を使った、ちょっと面白い映像作品があります。
いゃ~、面白いですね。素晴らしいですね。ネット時代ならではの漫画の見せ方ですね。
時代を超えて今なお愛され続けている杉浦茂。奇想天外なストーリーとキャラクターは、いつまでも大切にしたい日本の宝です。