Chinatown
チャイナタウン
1974年に公開されたアメリカ映画「チャイナタウン」は、アカデミー脚本賞、ゴールデングローブ賞 作品賞、ゴールデングローブ賞 主演男優賞、ゴールデングローブ賞 監督賞、ゴールデングローブ賞 脚本賞を受賞したフィルム・ノワールの傑作です。
舞台は1930年代後半のカリフォルニア州ロサンゼルス。ハードボイルドには30年代、そしてロサンゼルスという街がよく似合います。
離婚問題を専門に扱う私立探偵がミステリアスな事件に巻き込まれてゆくという、まさにレイモンド・チャンドラーの小説を彷彿とさせる時代背景とストーリーです。
私立探偵ジェイク・ギテスを演じるのは、ジャック・ニコルソンです。
ジャック・ニコルソン
ジャック・ニコルソンは今や押しも押されもせぬハリウッドを代表する名優ですが、本作出演当時は「イージー・ライダー」で注目されていたとはいえ、将来を期待された若手といったポジションです。
そして相手役を務めたのはフェイ・ダナウェイです。彼女も大女優としてのポジションを確立していますね。
フェイ・ダナウェイ
まさにクールビューティーといった佇まいには惚れ惚れします。
Staff
監督はロマン・ポランスキーが務めています。
ロマン・ポランスキー
「水の中のナイフ」、「ローズマリーの赤ちゃん」などで既に成功を収めていたロマン・ポランスキーでしたが、「ローズマリーの赤ちゃん」の翌年に女優であり妻でもあったシャロン・テートがカルト教団に襲われ惨殺されるという忌まわしい事件が起こりました。
このことによりロマン・ポランスキーはアメリカを去り活動拠点をヨーロッパに移します。「チャイナタウン」はロマン・ポランスキーのハリウッド復帰第一作になります。
そのためか、よほど気合が入っていたのでしょう。監督以外にもジェイク・ギテスの鼻を切るというアブない用心棒役として出演もしています。
監督といえばもう1人、ジョン・ヒューストンが役者として、しかも悪役で出演しています。
ジョン・ヒューストン
ジョン・ヒューストン監督といえば、ハードボイルド映画の最高傑作ともいわれる「マルタの鷹」の演出で知られていますが、「チャイナタウン」への出演はロマン・ポランスキーがオマージュを捧げたのでしょう。
それにしても上手く使っています。はまり役です。
本作でアカデミー賞を受賞した脚本のロバート・タウンはもちろん素晴らしいのですが、スタッフの中では撮影を担当したジョン・A・アロンゾの仕事ぶりが目を引きます。「チャイナタウン」で第47回アカデミー撮影賞にノミネートされましたが、陰影のある美しい画面が印象的です。
音楽はジェリー・ゴールドスミスです。ジェリー・ゴールドスミスといえば、「猿の惑星」、「パピヨン」、「オーメン」、「エイリアン」、「スタートレック」に「ランボー/怒りの脱出」などなど数え上げるときりがないほど多くの映画音楽を担当している映画音楽界の巨人ですね。
「チャイナタウン」でも素晴らしく雰囲気のある音楽を披露しています。
Story
ロサンゼルスの私立探偵ジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)は、ある日「モーレイ夫人」と名乗る女性から夫の浮気調査を依頼されます。モーレイ夫人の夫は市の水道局で部長を務めているホリス・モーレイで、新しいダム建設に反対していました。
捜査の結果、ホリス・モーレイが若いブロンドの女性と関係していることを突き止めるのですが、このことがスキャンダルとして先に新聞にスクープされてしまいます。
モーレイ夫人(フェイ・ダナウェイ)はジェイク・ギテスを名誉毀損で訴えると言って事務所にやってきたのですが、なんと最初に調査依頼してきた「モーレイ夫人」とは別人物だったのです。
数日後、ホリス・モーレイは溺死体で発見されます。
最近は不仲になっているもののホリス・モーレイにはノア・クロス(ジョン・ヒューストン)という仲間がおり、その娘がモーレイ夫人であることをジェイク・ギテスは知ります。
ノア・クロスは市郊外の砂漠地帯を買い占めていました。そのことを調べてみると新しいダム建設に関わる巨大な陰謀が次第に分かってきます。同時にノア・クロスとモーレイ夫人のねじ曲がった愛情も!
そして悲劇が起こります。そう、チャイナタウンで。
イギリスの「ガーディアン」紙が選んだ、映画史上最高の「ラストの名セリフ」ベスト10に「チャイナタウン」は入っています。
それは、「忘れろ、ジェイク、ここはチャイナタウンだ」という何とも切ないセリフです。
尚、1990年には続編である「黄昏のチャイナタウン」が公開されています。