スパイク・ジョーンズの傑作映画『マルコヴィッチの穴』
1999年に制作されたスパイク・ジョーンズの初監督作品。
脚本家はチャーリー・カウフマンが務め、実在する俳優である「ジョン・マルコヴィッチの頭に通じる穴を見つける」という脚本が受け、数多くの賞を受賞した。

スパイク・ジョーンズ監督

脚本を担当したチャーリー・カウフマン
本作での主な受賞(ノミネート含む)は以下の通り。
・第56回ヴェネツィア国際映画祭 国際批評家連盟賞
・第72回アカデミー賞 監督賞、助演女優賞、オリジナル脚本賞 (ノミネート)
・第57回ゴールデングローブ賞 作品賞、助演男優賞、助演女優賞 (ノミネート)
・第25回ドーヴィル映画祭 グランプリ、批評家賞
・第65回ニューヨーク映画批評家協会賞 助演男優賞、助演女優賞、処女作賞
・ボストン映画批評家協会賞 最優秀脚本賞
など受賞多数。
出演者には「すてきな片想い」(1984年)「スタンド・バイ・ミー」(1986年)のジョン・キューザック、「マスク」(1994年)「メリーに首ったけ」(1998年)のキャメロン・ディアスなどが顔を揃えている。
また、本作のタイトルにも起用され、劇中で頭の中にも入られてしまう個性派俳優のジョン・マルコヴィッチも出演している。
ロケはリンカーン・センターが使われている。

ジョン・マルコヴィッチ

ニューヨーク・マンハッタン区にある総合技術施設リンカーン・センター
奇想天外な物語(あらすじ)
人形師のクレイグと、ペットショップ店員の妻ロッテは倦怠期の夫婦。
クレイグは小さな子供相手に卑猥な内容の人形劇を行うなど、やや問題ありの人物。
貧しい生活レベルから脱するために、定職に就こうと新聞の求人からレスター社の募集をピックアップする。
面接に出向いたクレイグだったが、会社は「7 1/2階」にあるため、エレベーターでどのボタンを押せば良いのか分からない。一緒になった女性にボタンを押してもらい、なんとか該当の階で降りることが出来た。

夫・クレイグ(ジョン・キューザック)と妻・ロッテ(キャメロン・ディアス)
「7 1/2階」は、天井が極めて低く、屈まないとならない奇妙なフロアだった。そして、秘書らしき女性もトンチンカンな受け答えであり、社長も変わり者のようだった。
意外にも面接をパスし、採用が決定。また、クレイグは同階で見かけた色気のある女性・マキシンに心を奪われていく。
しかし、オタク丸出しのクレイグは女性の扱いに慣れておらず、バーに誘うも全く相手にされない。

会社のある「7 1/2階」でマキシン(キャサリン・キーナー)と出会ったクレイグ
夫婦生活もうまくいかないある日、会社で、有名俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中に15分間だけ入れる穴を見つけてしまう。妻のロッテにそれを伝えるとすぐに自分も体験すると言い始め、しぶしぶ体験させる。すると妻は異常な出来事であるのに、興奮を抑えきれない様子だった。
そしてクレイグは穴を使ってマキシンと共に商売を始め、次々と客をマルコヴィッチの穴に入れていく。商売は繁盛し、会社の廊下は長蛇の列が出来るほどだった。

扉を開けるとそこはマルコヴィッチの頭の中だった!
しかし、異常事態が発生する。マルコヴィッチ本人が頭の中で行われていることに気付いてしまうのだった。そして、クレームを言いに会社を訪れたマルコヴィッチ本人がマルコヴィッチの穴に入るという事態に陥る。マルコヴィッチは驚きをもってその世界を体験する。
さらに話がこじれ始める。ロッテがその穴に入り、マルコヴィッチの身体を通して心が通い始めたマキシンとなんと性体験をして子供まで作ってしまうのだ。それにクレイグが猛烈に嫉妬したりと、収拾がつかないカオスな状況になっていく。
クレイグはマルコヴィッチの身体を乗っ取り、しばらく生活するが、マキシンを盾に脅され、最後は自らマルコヴィッチの身体から出て、元の人形師に戻っていく。
頭に入られちゃった「マルコヴィッチ」って誰?
ジョン・マルコヴィッチ。
1953年12月9日生まれ。アメリカ・イリノイ州出身。
イリノイ州立大学で環境を専攻していたが、演劇に変更。演劇は大学に入ってから興味を持ったといわれ、一説には好きになった子が演劇の専攻だったことで興味を持ち始めたと言われている。

ジョン・マルコヴィッチ
1976年以降、舞台で高い評価を得て、ブロードウェイでも「True West」や「セールスマンの死」などでオビー賞などを受賞している。
映画では悪役を演じることが多いが、主役・準主役を演じることもある。
【主な出演作】
・「キリング・フィールド」(1984年)
・「ウディ・アレンの影と霧」(1991年)
・「ザ・シークレット・サービス」(1993年)
・「ジャンヌ・ダルク」(1999年)
・「アイ・アム・キューブリック!」(2005年)
など多数
作品データ
監督 スパイク・ジョーンズ
脚本 チャーリー・カウフマン
出演 ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス、キャサリン・キーナー、ジョン・マルコヴィッチ等
公開 1999年(日本公開は2000年)
配給 USAフィルムズ、アスミック・エース
時間 112分

マルコヴィッチ、マルコヴィッチ、マルコヴィッチ・・・。
誰かがマルコヴィッチを占有している。それに気付いたマルコヴィッチがマルコヴィッチの穴に入る。では、マルコヴィッチとはいったい何者なのか。
ネット上のアバターのようにも思える存在だったマルコヴィッチだが、しかも実在している点が非常にユニークだった。
90年代後半、世紀末の斬新な一作だった。