隠れた名作サッカー漫画・アニメ『がんばれ!キッカーズ』
『がんばれ!キッカーズ』は1984年から1989年まで『月刊コロコロコミック』誌を中心に、『小学五年生』、『小学六年生』にも連載されたサッカー漫画。
作者は、ながいのりあき。
コロコロコミック編集部から、当時人気を博していた「キャプテン翼のようなサッカーものをやろう。」という企画が持ち上がったのがきっかけで生まれた作品。
サッカーの知識が無く、当初はこの企画に困惑していたながいは、悩んだ末に高校時代に愛読していたちばあきおの野球漫画『キャプテン』を手本に、「等身大の登場人物達がたとえ敗れても何らかの経験を得る、超人的なプレーの必要ないサッカー漫画」として描くことになったという。

漫画『がんばれ!キッカーズ』
1986年にアニメ化された『がんばれ!キッカーズ』
漫画『がんばれ!キッカーズ』は1986年には第32回小学館漫画賞児童部門を受賞。
全日本少年サッカー大会の大会ポスターに起用されるなど、当時サッカー漫画としてはキャプテン翼に次ぐ人気作品となった。
また、この大会が10周年を迎えたことを記念し、サッカー少年にアピールすることを目的としてテレビアニメ化された。
1986年10月15日~1987年3月25日まで日本テレビ系ほかで放送。
放送時間は水曜19:30~20:00。

アニメ『がんばれ!キッカーズ』
主題歌はオープニング・エンディングともに西村知美。
西村知美は、女子だけで構成されたサッカーチーム・立花パープルズのキャプテンである同姓同名キャラクターの声優も担当した。
キャプテン翼との類似点・相違点
原作の漫画自体が「キャプテン翼のようなサッカーものをやろう。」というコロコロコミック編集部の意向から発足したため、意図的に似せたところや、逆に全く違う要素にしたところなど両極端の特徴を持っている。
【キャプテン翼との類似点】

主人公の共通点

天才ゴールキーパーが登場
【キャプテン翼との相違点】
キャプテン翼との差別化として、超人的なプレーはほとんど登場させず、大会で優勝するとか主人公がスターになるとかではなく、『弱くても、大好きなサッカーを仲間と夢中になって頑張る』作品となっている。
アニメ版では、さらにそのコンセプトを追求。
サッカーアニメの度合いを少し薄めて、青春ドラマ的な演出が採り入れられた。

女子キャラクターとの恋愛も♪

弱小チームの友情と成長が主体

練習風景もふんだんに登場
アニメ『がんばれ!キッカーズ』に登場する超人的なプレー
アニメ版を制作したぴえろ(当時の名称はスタジオぴえろ)は、選手の動作を細部まで丁寧に描写したリアルな試合シーンが魅力の一つとしているが、キャプテン翼のように実現不可能と思える超人的なプレーがいくつか存在している。

倍速シュート

ダブル攻撃

トライアングル大車輪シュート
アニメ『がんばれ!キッカーズ』の打ち切りと評価
キャプテン翼の大ファンである少年には評判が悪く、主人公の設定など類似点があるため、「二番煎じ」や「パクリ」と批判されることも少なくなかった。
そうした影響からか、全26話が制作されたが放送されたのはそのうち23話で途中打ち切りとなってしまった。
1987年3月限りで放送終了となったが、特番の関係で放送されなかった第15話は8月26日にスペシャル枠として、打ち切りのために未発表となっていた3話分のエピソードは1988年1月5日に『がんばれ!キッカーズスペシャル ひとりぼっちのエースストライカー』として放送された。
1988年に出版された『TVアニメ25年史』は「基本的には原作に忠実な内容であり、サッカーのプレー描写も堅実。『キャプテン翼』とは対照的に演出のメリハリで見せる作品」と評している。
脚本を担当した静谷伊佐夫は打ち切りの決定した直後の『アニメージュ』1987年4月号において「この作品が全く理解できない。流行の絵からは外れ、主人公は能天気。なぜアニメ化をするのかと真剣に悩んだ」と前置きをした上で「それでも作品に関わるうちに少しづつ愛着がわいてきた」と評している。
批判されることが多かった一方で、超人的・天才的なプレーをあまり描かず、どこにでもいるサッカー少年たちの日常を丁寧に描いた作品スタイルは「キッカーズ派」と呼ばれる根強いファンを獲得した。
Jリーグ・プロサッカー選手の播戸竜二は「キャプテン翼ではなく、がんばれ!キッカーズ派だった」と発言している。
また、ドイツなどヨーロッパでも放送され、海外にも多くのファンがいることが判明している。
今も愛され続ける『がんばれ!キッカーズ』
漫画『がんばれ!キッカーズ』は現在、電子コミックとしてKindle版も発売されている。
がんばれ!キッカーズ | ながい のりあき | Amazon.co.jp
2001年「ワンツーマガジン社」より、てんとう虫コミックスにて未収録だった話を含む完全版として全6巻が刊行された。
2002 FIFAワールドカップ開催記念として愛蔵版として再発刊された。
2006 FIFAワールドカップの時には開催記念として「株式会社G.B.」より、南陽戦が完全収録された「熱闘編」と西山戦が完全収録された「涙の友情編」が「G.B.ベストコミックス」として出版された。
同書には書き下ろしの中学生編が収録されており、内容は、中学生になった本郷、翔、水島兄、上杉らが北原中学校でドリームチームを結成して全国大会に挑むというもの。
「熱闘編」では地区予選決勝、「涙の友情編」では全国大会決勝戦で水島弟が率いる宮城県代表の中学と対戦した。
「熱闘編」、「涙の友情編」ともに中古本として高価で取引されている。