極道の妻たち
ヤクザ映画に市民権を持たせることに成功した「極道の妻たち(極妻)」
「極道の妻たち」(極妻)は、1986年に東映京都撮影所製作・東映配給により公開されたヤクザ映画。監督五社英雄。主演岩下志麻。
好評を博し、主演女優・監督を替えながらシリーズ化された。なかでも人気だった岩下志麻の劇場シリーズは1998年のシリーズ10作目「極道の妻たち 決着(けじめ)」で一応の完結となっている。

極道の妻たち
映画スチール 極道の妻たち その7 1986年 東映 ... - ヤフオク!
岩下志麻の圧倒的な佇まいに、本物の極道を感じた人も多かったのではないでしょうか。
「極道の妻たち」は家田荘子のルポルタージュを原作にそれまでのヤクザ映画では脇役が多かった女性側の視点から描いた異色のやくざ映画シリーズ。
愛する夫を組同士の抗争や内部の謀略で失った「極妻」が自らの手で仇を取るという復讐劇です。
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「極妻=岩下志麻」といってもよいほどのハマり役だったキャスティングの経緯
シリーズを通して岩下志麻、かたせ梨乃が輝いていました
1960年代に全盛期だったヤクザ映画のオールナイト興行では、体制に不満を持つ学生を中心に、底辺で働く若者や水商売の女性、あるいは都会の片隅で孤独に生きる人たちが多かったのに対して、バブル期直前の1980年代半ばの日本では、OLや女子学生にも広く受け入れられる映画が要求されました。
そこでマンネリと言われたヤクザ映画の見方を変えるべく、主婦やOLに違和感なくヤクザ映画には縁のない、テレビなどで好感度の高い大物女優を主人公に起用するアプローチがとられました。
「極妻」は当初、一作目の主演女優を岩下志麻、二作目を十朱幸代、三作目を三田佳子、四作目を山本陽子、五作目を吉永小百合とする構想がありましたが、四作目に再び岩下が主役を演じて以降は長く岩下が主演を務め、「極妻は岩下」の代名詞となるほど岩下志麻の当たり役シリーズとなりました。
かたせ梨乃
そしてもう一人、「極妻」に欠かせないのがかたせ梨乃。
かたせ梨乃は、官能的で毒の部分を表現できる女優が、ヤクザの男たちの好みのタイプとしてキャスティングされました。
第1作ではかたせと世良公則の濡れ場シーンが大きな話題に。最初はお色気担当のような役割だったものの、次第に姐さんとともに闘う重厚な役どころに変身していきました。かたせ梨乃は出演者の中で最多の8作品に出演し、女優として大きな成長を遂げました。
「極妻」岩下志麻の役作り

とにかくカッコよかった「極妻」の岩下志麻
映画スチール 極道の妻たち その15 1986年 東映 ... - ヤフオク!
以下はwikipediaの解説より。
「刺青」
京都撮影所の俳優センターに「刺青部屋」が当時あり、専属の刺青師が朝の5時から3時間かけて岩下の背中の刺青を描いた。勿論実際の彫り物ではなく後で落とせるものであるが、絵の具を伸ばす際に使う刷毛がチクチクするのと、絵の具を乾かすときに塗るベンジンに刺激があり、少し痛みがあったという。
「ファッション」
衣装は五社監督と相談したものだが、着こなしは岩下自身が工夫したもの。着物にピアスやネックレスをすると下品になるが、岩下はあえて、ちっちゃいイヤリングとプチネックレスをつけた。着物は襟首の下で合わせるのが普通だが、岩下は胸のところにほくろがあり、ほくろを目安に襟を開けた。
また着物を着たときは内股が常識だが、歩き方も外股にし、あごを上げて上から見下すような感じで、声のトーンをなるべく下げてものを喋ってみた。一作目はそんなに低くないが『新極道の妻たち 覚悟しいや』(1993年)あたりがかなり低い。
「くわえたばこ」
岩下はもともとたばこを吸ってなかったが役作りのために、周りの同世代が禁煙を始めるころからたばこを吸い始めた。以来たばこ中毒になったが、"極妻"が終わって5年くらいでたばこをやめた。
「イメージ」
岩下は『グロリア』(1980年、ジョン・カサヴェテス監督)が大好きで、"極妻"をやってるときにはいつもジーナ・ローランズのイメージがあったという。『グロリア』をベースにした脚本やシノプシスを自身で作り、企画を出していたが実現できずに結局諦めたが、「実現できててたら『レオン』(1994年)よりずっと早かったのに」と話している。
極道の妻たち(1986年)
岩下志麻主演の「極道の妻たち」を振り返っていきます。
「極道の妻たち」シリーズ最大のヒット作にして 「極妻」の名を世に知らしめた作品。
岩下志麻の演技にくぎ付けになりました。

極道の妻たち(1986年)
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その日も服役中の夫をもつ極道の妻たちの会、「懲役やもめの会」は華やかににぎわっていた。会を主催する粟津環(岩下志麻)は堂本組若頭補佐・粟津組組長の妻である。彼女もまた四国の刑務所に収監された夫の帰りを待ちながら組を守る身であった。環の実家は貧しい町工場。借金と病に苦しみながらも父(大坂志郎)はコツコツと仕事を続け、妹の真琴(かたせ梨乃)も慣れないスナック勤めで家計を助けている。そんな実家に母の法事で戻った環は真琴に縁談を持ちかける。
劇中の名台詞
「うちは極道に、惚れたんやない。惚れた男が、たまたま極道だったんや」
「あほんだら、撃てるもんなら、撃ってみぃ」
任侠映画の世界では脇役であった'極道の妻'に焦点をあて、'強い女'を描く異色の作品。家田荘子の原作ルポルタージュをベースにした大ヒットシリーズ'極妻'の記念すべき第1作である。五社英雄監督がヤクザ社会の裏側で生きる妻たちの泣き笑い、生き様をリアルに描く。
極道の妻たち 最後の戦い(1990年)
十朱幸代演じる「極道の妻たちII」(1987年)、三田佳子演じる「極道の妻たち 三代目姐」(1989年)を経て、再び岩下志麻が主演を務めた作品。
待ち望んでいたファンも多かったかもしれません。

極道の妻たち 最後の戦い(1990年)
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関西の広域暴力組織の中松組が跡目相続問題で分裂して5年、抗争を続けていた川越会は疲弊し抗争終結を模索していた。だが、そんな川越会にあって夫の組長(小林稔侍)が服役中の瀬上組の姐芙有(岩下志麻)だけが強硬策を主張する。そんな折、かつて中松組に夫を射殺された夏見(かたせ梨乃)という女が現れる。女ながらに兄弟分の盃を交わした芙有と夏見。見かけは終結したと思われていた抗争だったが中松組の政略によって燻ぶっていた火種がはじけようとしていた。
劇中の名台詞
「これが極道の女房としての、わての決着(けじめ)や」
さよなら、戦争を忘れた男たち。女の手に拳銃(チャカ)は重かった。知られざる「極道の妻たち」の世界を描いて大ヒットを記録した人気シリーズ第4弾。極道が戦争を放棄した時、その妻たる女たちは、どんな行動に打って出るのか!?ラディカルで激しい女の殴り込みなど大胆シーン満載!華々しくハードなファイナルにふさわしいシリーズ最高最大の波乱が巻き起こる。
新極道の妻たち(1991年)
組の存続と母親の間で揺れる岩下志麻が印象的な作品。

新極道の妻たち(1991年)
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二代目亡き後、未亡人・加奈江(岩下志麻)が取り仕切る藤波組。そのシマを狙って巨大暴力団の尖兵・角谷組の動きが活発化し始める。藤波組も加奈江の娘婿で若頭の宗田(桑名正博)を三代目に据え対抗する構えを見せる。これに異を唱えたのは、加奈江の一人息子・直也(高嶋政宏)である。宗田の融和政策に対して直系の血をひく直也は、角谷組への徹底抗戦を主張。武闘派幹部・国井(西岡徳馬)の支持を得て直也を三代目に押す動きが先鋭化する。しかし直也に跡目をどうしても継がせたくない者が二人いた。角谷と密約を交わした宗田。そしてもう一人は、母としての心情を胸に秘めた加奈江であった。
劇中の名台詞
「わてを誰と思うとんのや、ここにおんのは、
あんたを産んだ母親やない。藤波組二代目霊代や」
肉は切れても、血は切れない。極道の妻に訪れた新しい局面と試練。ヤクザ社会の激変に、直撃波を受けて動揺する極道ファミリーに生じた跡目争い。追い詰められた極妻は、その生き地獄をどう生き、どう乗り越えていくのか!?「新・極道の妻たち」の新たなる旅立ちがドラマチックに告げられる!
新極道の妻たち 覚悟しいや(1993年)
男性陣のキャスティングが実に豪華だった作品。
香港までが舞台となりました。

新極道の妻たち 覚悟しいや(1993年)
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暴対法が施行され暴力団への世間の目が厳しくなる中、愛知に古くから続く極道一家・千之崎組の組長万乃助(梅宮辰夫)と妻安積(岩下志麻)も、地元住民らから立ち退きを迫られ対応に苦慮していた。騒動に目をつけた大阪の巨大組織・淡野組幹部の雁田(中尾彬)が、万乃助の実弟で若頭の高明(草刈正雄)と妻千尋(かたせ梨乃)の前に現われた。それが、香港のヒットマン組織を巻き込んだ抗争へと向かう序幕であった。女の意地と男への愛を賭け極道の妻たちの壮絶な戦いが始まった。
劇中の名台詞
「わてがあんたを買うわ」
新極道の妻たち 惚れたら地獄(1994年)
川島なお美さんの体当たり演技も印象的だった作品。
極道の家族の絆がクローズアップされていたのが印象的でした。

新極道の妻たち 惚れたら地獄(1994年)
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大阪・ミナミの御蔵組。病弱な木村組長(高島忠夫)に代わり組を仕切るのは妻の芙由(岩下志麻)だった。幹部の新谷夫婦(山下真司・斉藤慶子)、野田夫婦(小西博之・中野みゆき)、権藤夫婦(世良公則・川島なお美)らも芙由を慕い、小さいながらも組は家族的な絆で結ばれていた。大阪球場跡地の再開発利権を手に入れ、組の基盤を立て直そうと画策する芙由。しかし、その動きを牽制する坂本会長(中条きよし)率いるキタの巨大組織・侠和会の妨害工作で、夫の木村は命を落とし芙由もまた瀕死の重傷を負わされてしまった。
劇中の名台詞
「極道に惚れたら、女御は地獄や」
「極道の妻として、かく致すしかほかなく、
ただいま決着(けじめ)をつけさして貰いました」
極道の妻たち 赫い絆(1995年)
萩原流行、渡辺裕之、宅麻伸といったシブい男性陣に加えて元光GENJIの赤坂晃も出演した「極妻」10周年記念作品。

極道の妻たち 赫い絆(1995年)

極道の妻たち 赫い絆(1995年)
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劇中の名台詞
「極道は、なあ、筋を通すためには惚れた男も殺すのや」
これまでに7本、各作品毎に様々な極妻がスクリーンに登場し、さまざまな「姐」が大輪の花を咲かせ、観る者を魅了してきたが、今回もまた大阪のヤクザ一家で育った生粋の極妻がこれまでにない生き様の凄みを見せる。大ヒットシリーズとして多大な人気を誇る「極妻」シリーズの公開10周年記念作品である。
極道の妻たち 危険な賭け(1996年)
工藤静香、原田龍二などの顔ぶれに加えて火野正平といったシブいどころも登場した作品。

極道の妻たち 危険な賭け(1996年)
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日本最大の組織暴力団の4代目を決める幹部会選挙が行われる事になり、敗色濃い佐渡(北村和夫)が頼みとしたのは北陸の女帝須崎(岩下志麻)だった。須崎の財力と協力を得た佐渡は過半数を越えようと工作を始めた。しかし、対立候補は北陸の地に鉄砲玉(火野正平)を送り込み、須崎と盟友関係にある神取組との抗争を画策、にわかに北陸の地が血の抗争の場と化した。須崎の一人娘(工藤静香)と神取の義弟(原田龍二)の若い二人も否応なく抗争に巻き込まれていく。
劇中の名台詞
「わてがてっぺんに立ってみせたるわ」
第一作目の大ヒットから満10年を飾る最新作第9作目。シリーズ最大最高のスケールでダイナミックな人間群像ドラマを狙い、迫真の抗争劇に加えて母と娘、夫と妻、男と女それぞれの愛が、音をたててきしみ。叫びをあげる娯楽大作となっている。
極道の妻たち 決着(けじめ)(1998年)
「極妻」10作目にして、岩下志麻主演の最後の作品。
岩下志麻は「これだけの作品をやれた、娯楽作品でこれだけのシリーズを持たせていただいたというのは、私の大きな素晴らしい財産です」と語っています。

極道の妻たち 決着(けじめ)(1998年)
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井出組傘下の秋葉組組長(竹内力)が殺された。秋葉殺しの犯人・玉城(トミーズ・雅)は、あっさり捕まり犯行は組長・井出(名古屋章)の指示だと自供。井出は逮捕される。井出の妻・春日(岩下志麻)は夫が、かわいがっていた秋葉を殺害したことに不審をいだき、秋葉の妻・杏子(とよた真帆)と秋葉の兄弟分・番水(大杉漣)の妻・(かたせ梨乃)と協力し事件の裏をさぐり始める。そんなとき、同じ井出組傘下の組長・名越兼良(中条きよし)が、番水に接近し始める。名越は死んだ秋葉が握っていた信用金庫理事長のスキャンダルを、理事長秘書(細川ふみえ)から手に入れていた。
劇中の名台詞
「女には女の決着(けじめ)がおます。極道の女房として、この戦争(でいり)、
なんとしても、あんたら男に譲るわけにはいきまへんのや」
「死ね!」
大ヒットシリーズとして多大な人気を誇る「極妻」の最新作、文字通り豪華に贈るシリーズ第10作目にして遂にファイナル!突然の一人の組長の死によって音を立てて崩壊していくヤクザ組織の中で、疑惑が渦巻き、強固な運命共同体に、亀裂と動揺が走る時、極妻たちはいかに行動し、いかに戦うのか。
その後の『極道の妻たち』

極道の妻たち 地獄の道づれ
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劇場シリーズの完結後もレンタルビデオで好評のため、東映ビデオの企画として高島礼子主演で新シリーズが製作されました。
しかし、レンタルビデオ主導の企画であることから予算規模は大幅に縮小され、劇場用の35ミリフィルム撮影ではなくスーパー16ミリでの撮影となりました。