渡哲也
石原プロモーションを代表する俳優といえば、そりゃもちろん石原裕次郎ですね。そしてもう一人、石原裕次郎とのダブル看板、そう、渡哲也を忘れるわけにはいきません。
その渡哲也の代表作といえば、多くの人が思い浮かべるのは派手にライフルを打ちまくっていたテレビドラマ、石原プロが手掛けた「西部警察」でしょう。もしくは宝酒造「松竹梅」のCMか?
どちらも男らしく、そして優しい。そんなイメージが男女を問わず虜にしました。

渡哲也
もちろん渡哲也の魅力は「西部警察」や「松竹梅」のCMだけではありません。「西部警察」よりも「ゴリラ」の方が好きと言う方も多くいるでしょうし、渡哲也の才能は映画でこそ発揮されたと力を込める方だっていることでしょう。更に渡哲也には歌があります。
渡哲也の代表作品は数多くあれど、代表曲というと、1973年8月にリリースされた「くちなしの花」。これに関しては異存のある方はいないのではないかと思います。「くちなしの花」は1974年の年間オリコンセールスで77.4万枚、累計では、なんと150万枚を売り上げるという大ヒットを記録しています。
「西部警察」は石原プロにとっても渡哲也にとっても確かに代表作ではありましょうが、渡哲也には「ゴキブリ刑事」「仁義の墓場」「やくざの墓場 くちなしの花」といった優れた主演映画があるのですよ。が、今日では余りそれらの作品は取り上げられることがなく残念に思います。まぁ、タイトルがいかんのかもしれません。「ゴキブリ」や「墓場」、更に「やくざ」では女性が好むとは思えないですもんね。
それならばということで、石原プロの70年代に制作されたテレビドラマを中心に、女性にも受け入れられそうな渡哲也の代表作をご紹介しようではありませんか。
東京流れ者
「石原プロの70年代に制作されたテレビドラマを中心に」と言っておきながらいきなりで何なんですが、渡哲也を語る際にどうしても外せない、外したくない映画作品があるんです。それは、鈴木清順監督作品「東京流れ者」です。
日活時代の代表作としては1968年の「無頼より・大幹部」から始まる「無頼シリーズ」かもしれません。大人気を博しました。6作も続いています。が、それでも渡哲也にとって8作目の映画出演作となる「東京流れ者」は別格なんですよ。

東京流れ者
鈴木清順監督といえば、「肉体の門」「けんかえれじい」「殺しの烙印」「ツィゴイネルワイゼン」に「陽炎座」などなど話題作、問題作を死ぬまで発表し続けた日本を代表する偉大なる監督です。「東京流れ者」でもモダンでスタイリッシュな色彩と演出が冴えわたっているんですよ。
更には脚本!脚本を担当したのは川内康範です。…ご存じない方がいらっしゃるかもしれませんね。川内康範と言えば、テレビドラマ「月光仮面」の原作と脚本を手がけた方です。他にも「レインボーマン」「ダイヤモンド・アイ」といったヒーローものや、20年弱も続いたテレビアニメ「まんが日本昔ばなし」の監修でも知られています。
鈴木清順と川内康範。そこに若き日の渡哲也ですよ。観るしかないでしょう。
大都会
渡哲也といえば、どうしても外せない「東京流れ者」ではありますが、「ゴキブリ」「墓場」「やくざ」に続いて「流れ者」。これではますます新たな女性ファンの獲得は難しくなってしましまいました。
気を取り直して行きましょう。映画「やくざの墓場 くちなしの花」での熱演が評価されブルーリボン賞主演男優賞を獲得した後、渡哲也は映画を離れ、石原プロのテレビドラマに専念することになります。そうです。この後、渡哲也は石原プロを支え続けていくんです。
さて、記念すべき石原プロTV第一回作品といえば、そう「大都会 闘いの日々」です。

大都会 闘いの日々
石原裕次郎とのWキャストとはいえ、主演は渡哲也です。当時、石原プロとしては正念場といった状況だったようですが「大都会 闘いの日々」は見事にヒットし、続いて「大都会 PARTII」「大都会 PARTIII」と制作されました。
出演者は、佐藤慶、高品格、中条静夫、宍戸錠といったベテラン勢に加えて神田正輝。神田正輝はこれがデビュー作でなんですよ。そしてヒロインには篠ヒロ子です。そしてメイン脚本を務めたのは「北の国から」などで知られる倉本聰。豪華です。実に豪華です。石原プロの、失敗は絶対に許されん!という決意を腹の底から感じます。結果、良い作品が出来上がりました!
浮浪雲
「大都会」に続いて石原プロ製作の渡哲也主演のテレビドラマ「浮浪雲」。時代劇ではありますが、この作品こそ多くの女性に観てもらいたい。ぼんやりというか、ほのぼのとした主人公を原作に忠実に渡哲也が演じており実に感じが良いのです。

浮浪雲
原作は1973年から2017年9月まで青年漫画誌「ビッグコミックオリジナル」に連載されていた「浮浪雲」です。

浮浪雲
演技力なのか、渡哲也を想定してキャラクターが作られたのかは分かりませんが、なんか、渡哲也は漫画の主人公によく似ていますね。
石原プロはこの後、西部警察シリーズ(1979年10月~1984年10月)の製作に取り掛かり、渡哲也はご存じ「大門圭介」として角刈りにサングラスと言うキャラクターを確立することになります。
渡哲也とえばクールで熱い、そして優しいといったイメージかと思います。それは大門の印象が強いわけですが、プライベートでは温厚な方だったらしいので、案外「浮浪雲」は素に近かったのかもしれませんね。
ゴリラ・警視庁捜査第8班
石原プロは「西部警察」が1984年10月で終了し後、 同番組で人気が出た舘ひろし 主演の「ただいま絶好調!」を製作(放送は1985年4月~9月)。
この作品は、生前の石原裕次郎が関わった最後の石原プロ制作のテレビドラマです。そして渡哲也は石原プロの二代目社長に就任。
かなりのプレッシャーがあったのではないかと思われますが、渡哲也が社長に就任後初の石原プロ制作のテレビドラマが「ゴリラ・警視庁捜査第8班」で、1989年3月より放送開始されたのでした。

ゴリラ・警視庁捜査第8班
多用化・凶悪化し通常の警察力では対処困難な犯罪に対処するため、警視庁上層部が極秘裏に創設した警視庁捜査第8班、通称ゴリラの活躍を描く。
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石原プロといえば、やはりハードなアクション作品の印象が強いのではないでしょうか?「ゴリラ・警視庁捜査第8班」、期待を裏切りません。爆破、カーアクション、銃撃戦ですよ。特捜車両に特捜ヘリ。特殊任務にはこいつは欠かせない。当然興奮の連続となりますね。
しかも、渡哲也、舘ひろし、神田正輝と石原プロの看板俳優総出です。
失敗は絶対に許されん!という腹の底からの決意がこの作品からもまたビンビンに伝わってくるのですよ。
「ただいま絶好調!」から3年半。石原裕次郎の死後本格的な製作活動から遠ざかっていた石原プロによる久々のテレビドラマ「ゴリラ・警視庁捜査第8班」。「西部警察」を超える作品を作ろうと企画された作品です。「西部警察」のスタッフも多く参加していますし、後半には倉本聰も参加しています。海外ロケも決行し相当な資金が投入されたと思われますが、残念ながら、非常に残念ではありますが、ヒットには至らなかったんです。
時代はバブルですからねぇ。迷彩服を着たむさくるしい男たちは受け入れられなかったようです。
しかも、渡哲也は撮影中に「腓腹筋断裂」という大けがを負ってしまいます。更に1991年には直腸癌を患い長期療養を余儀なくされてしまったのでした。
渡哲也の復帰作品となるのは石原プロ製作で1992年7月16日に放映された単発のテレビドラマ「生命燃ゆ」でした。

生命燃ゆ
昭和電工の大分石油コンビナートでエチレンプラントの建設に尽力し、志半ばで病に倒れこの世を去ったひとりのエンジニアの壮絶な生き様を描く。
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派手な演出はないけれど、実に石原プロな作品です。角刈りにサングラスではないけれど、実に渡哲也な作品でもあります。
渡哲也の復帰作品であるにもかかわらず、ドラマ冒頭には「私たちの心の中に生きている石原裕次郎さんにこの作品を捧げます」という献辞があります。そんなところにまたグッとくるんですよね。
テーマもタイトルも重いですが、女性に観てもらいたい作品です。
それにしても、渡哲也の出演作品には女性受けしそうなタイトルがついたものが少ないような気がします。が、考えてみると、いえ、考えるまでもなく、私が心配しなくとも渡哲也には多くの女性ファンが付いているわけですから、全く問題はない!ですね。