『鬼切丸』とは?
上記のマンガ作品を原作とし、1994年にVHSにてオリジナルアニメが制作・発売されました。
その5年後となる1999年にはDVD化も果たしています。全4話で構成されており、アニメ独自のオリジナル要素はなく、原作エピソードの序盤をそのまま忠実に映像化したといった印象です。
『鬼切丸』のあらすじ
Wikipediaではこのように紹介されていますが、ボリューム的にも、内容的にも、これでは物足りないと思われますので、もう少し付け加えさせていただきます。
主人公の青年には名前がなく、日本刀を携える謎に包まれた存在。その正体は角を持たない鬼だといい、その代わりに、鬼の肉を両断できる刀『鬼切丸』を持ち、同族であるはずの鬼の退治を天分としています。
本編では主人公に名前がないこともあって、便宜的に、刀の名前である『鬼切丸』を青年の呼称として用いられる場面があります。しかし、正確には”鬼切丸の少年”と呼ぶべきだと、原作コミックを出版している小学館から正式に公表されています。
主人公・鬼切丸の少年は、世の中に存在する全ての鬼を斬り殺せば人間になれると信じており、同族殺しと呼ばれ、忌み嫌われながらも、平安の世からひたすら鬼退治を続けているようです。
人間たちに寄り添いながら、現代の世にはびこる鬼たちを斬るため、鬼切丸の少年が暗躍する姿を描いたヒューマンドラマとなります。
『鬼切丸』OVA全4話のエピソード
鬼切丸〈前〉 [DVD]
第一章 小角の章
女子高生・萌子は驚くべき強運の持ち主で、これまで自身に降りかかる数々の事故を回避してきました。しかし、その強運の理由は、萌子自身に宿っていた鬼によってもたらされたものだったのです。とうとう臨月を迎えた鬼は、母体である萌子から生まれて具現化してしまいます…
第二章 大嶽丸の章
古の世に封印されたはずの悪鬼・大嶽丸。しかし、その効果も薄れ、浮遊する大嶽丸の魂は具現化して、人間たちを襲うようになっていました。鬼切丸の少年は、四つの寺院仏閣に分割されていた封印を解き、本体を復活させて退治しようと奔走します…
鬼切丸〈後〉 [DVD]
第三章 般若の章
なかなか子宝に恵まれず、悩んでいた節子。とうとう地元で鬼が祀られていることで知られている寺院にお参りしてしまいます。その寺院は、子供を授かれる代わりに、生まれた子供は5歳までに神隠しに合うことでも有名でした。
そして、時は流れ、節子の娘・朱根は5歳の誕生日を迎えようとしていました…
第四章 怨鬼哀歌の章
幼いころに両親に売られ、名家の家政婦としてお世話になっていた良子。その扱いは奴隷のようで、虐待を受ける日々を過ごしていました。名家で行なわれた舞踏会に鬼が現れたことで、良子は鬼切丸の少年と出会い、どこか似た雰囲気を感じた両者はお互い心を通わせるようになっていくのですが…
『鬼滅の刃』との比較検証
鬼退治のアニメといえば、現在、大人気のコンテンツ『鬼滅の刃』を思い浮かべますよね。こちらでは『鬼切丸』と『鬼滅の刃』の相違点・類似点を抽出して、それぞれを検証していきたいと思います。
類似点
作品タイトル
同じ鬼を扱ったコンテンツということもあり、作品タイトルは両者近いイメージがありますよね。
鬼を斬る『鬼切丸』。
鬼を滅する『鬼滅の刃』。
そして、『鬼切丸』においては、主人公に名前はなく、『鬼切丸』は主人公の携える日本刀のことを指します。『鬼滅の刃』にも、”刃”という言葉が入っており、どちらの作品においても、鬼を退治するための”刃”を作品タイトルにしているという共通点があります。
人間になるために
鬼切丸の少年は人間のような外見をしていますが、本当は鬼であり、人間になりたいという気持ちから鬼退治をしています。
『鬼滅の刃』の主人公・炭治郎は人間なので、全く違うように思えます。しかし、不幸な事故によって鬼になってしまった妹・禰豆子と重複する部分は多いのではないでしょうか。妹を人間に戻すために鬼退治をする炭治郎、人間になるために鬼退治をする鬼切丸の少年。シチュエーション・設定には少し違いがありますが、”人間になる”という共通した目標を持っていますよね。
相違点
時代背景
『鬼切丸』は現代を中心に描かれた内容なのに対し、『鬼滅の刃』は大正時代を背景にした物語となっています。そういった意味では、現代劇・時代劇という部分に決定的な違いがあります。
しかし、『鬼切丸』において、第四章の怨鬼哀歌の章では、現代劇というよりも大正・昭和初期を背景にした時代劇のような雰囲気を漂わせていました。鬼切丸の少年は平安・戦国時代から活動していたという設定もあるため、『鬼切丸』のほうが時代背景に幅があることになります。
作品ジャンル
両者における決定的な違いは、どろどろとした人間ドラマを描く『鬼切丸』に対し、冒険活劇とバトル展開が両立している『鬼滅の刃』の方向性にあるといえるでしょう。
『鬼滅の刃』にも、『鬼切丸』と同じような人間ドラマを描いた部分はありますが、現代劇として描かれる『鬼切丸』のほうがリアリティーを感じさせますよね。『鬼切丸』は人間社会にある不条理や闇を切り取ってフォーカスしているのに対し、『鬼滅の刃』は主人公たちが不条理や闇を乗り越えて成長していく様子を描いているように思えます。
どちらが良いという評価は置いておいて、それぞれ根本的にテーマが違うことは間違いないですね。
『鬼滅の刃』との比較まとめ
同じ鬼退治のコンテンツでありながら、どこか雰囲気が違う両作品。そう感じる理由は、時代背景・作品ジャンルといったところにあるのではないでしょうか。『鬼滅の刃』は時代劇という特性があったため、その分野ではヒット要素となる”新撰組”のテイストを取り入れたことも爆発的な人気に繋がったと言われています。
しかし、共通点も多く、時代背景が重なる場面もあることや、人間になるために鬼退治をしているという前提は同じだということもお伝えさせていただきました。
『人間になりたい』
この記事をご覧になった機会に、まだOVA作品『鬼切丸』を視聴したことがないようなら観てみてください。大人気アニメ『鬼滅の刃』と同じようなテイストもあって、惹きつけられるものがあると思いますよ。
視聴されたら、皆さんの感想を当記事のコメントに書き込んでもらえると嬉しいです。