膝の上に乗るラップトップコンピューターよりも小さい!手のひらに乗るパームトップコンピューターが見せてくれた未来。

膝の上に乗るラップトップコンピューターよりも小さい!手のひらに乗るパームトップコンピューターが見せてくれた未来。

パソコンの小型化が進んでラップトップコンピューター(いわゆるノートパソコン)が出始めた頃、さらなる未来を見せてくれたのが手のひらの上に乗るサイズのパームトップコンピューターです。スマホに負けて消えてしまったものの、そのアイデアは時代を確かに先取りしていました。そんな小型コンピューターたちを紹介します。


コンピューターを小さく!の歴史

世界初のコンピューターは何か、というのは見解が分かれるところなのですが、一般的には1946年に完成したENIACとされています。アメリカが軍事目的で開発したこのコンピューターは幅30m、高さ2.4m、奥行き0.9m。総重量は27トンというあまりにも巨大な装置でした。

そして時は流れて1977年。スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックという2人の天才が、世界最初のパーソナルコンピューターを発売しました。名前はApple II。発売したのは、ご存知アップルコンピュータです。幅39cm、高さ10cm、奥行き45cm。重さは5.2kgでした。
約30年かけて、個人用のコンピューターが登場し、机の上に乗ったのです(個人用ということに注意なのですが)!
机に乗るサイズですので、これをデスクトップコンピューターとも呼びます。

では膝の上に乗るサイズのコンピューターであるラップトップコンピューターの世界最初は何か、というと1985年に東芝が発売したT-1100とされています。これは日本国外でのみ発売されました。ラップトップとは膝の上という意味ですが、現在はデスクトップパソコンより小さくて、ノートパソコンよりも大きいサイズのパソコンの事をこう呼んでいます。
ちなみにノートパソコンの最初は、同じく東芝が1989年に発売したDynabook J-3100SSとされています。

デスクトップ、ラップトップと小型化してきたコンピューターですが、さらに小さくしようと技術開発が進められました。そこで登場するのがパームトップコンピューターです。パームとは手のひらのことで、文字通り今度は手のひらの上に乗るサイズのコンピューターなのです。
初めて市販されたパームトップは、1989年にアタリから発売されたAtari Portfolioとされています。

Atari Portfolio(Atari)1993年発売

以下は、1989年にAtariから発売された世界初のパームトップAtari Portfolioの基本性能です。比較対象としてiPhone Xを例にいたしました。

CPUはIntelの16ビット(iPhone Xは64ビット)
OSはマイクロソフトのMS-DOSの一種(iPhone XはiOS)
内蔵ROMは256KB(iPhone Xは3GB)
内蔵RAMは128KB(iPhone Xは最大256GB)
LCDは白黒で240x64ピクセル(iPhone Xは2436x1125ピクセル)

今から見るともちろんその性能は低いですね。ただしシリアルポートとパラレルポートがあり、拡張性は高かったようです。
アプリケーションとして、テキストエディタ、表計算、電話帳、スケジューラ等が内臓されていました。キーボード付きの、ちょっとした電子手帳という感じです。

そもそもパームトップって何?

と、世界初のパームトップコンピューターをご紹介したのですが、ここで一度立ち止まって、確認しなければならないことがあるようです。それは、そもそもパームトップって何なんだろう、ということです。
じつはこれ、非常に難しい定義問題なのでした。一般的には「大きさがB6サイズ以下、重さが1kg以下のパソコン」と定義されています。しかしポケットパーソナルコンピューターと呼ばれる製品もありますし、ハンドヘルドパーソナルコンピューターと呼ばれる製品もありますし、パーソナルデジタルアシスタント(携帯情報端末。いわゆるPDA)はパームトップの一種だとされているのです…。
なので本記事では、手のひらの上に乗るコンピューターをあくまでも中心にして、キーボードのないPDAも含めて紹介させていただきたいと思います。

ザウルス PI-3000(シャープ)1993年発売

PDAと言えば『ザウルス』シリーズ! もうこの名前だけで、懐かしく思われる方も多いのではないでしょうか。
この製品は、モノクロですが、まだ当時は珍しかったタッチパネルを採用しています。何と文字認識機能があり、手書き文字を認識できました。
メモ帳、電話帳、スケジューラ、電卓の他、国語・英和・和英と3冊も辞典を収録し、名刺管理までありましたから、やはりサラリーマンに向けた製品と言えるでしょう。

ThinkPad220(IBM)1993年

この製品の登場で、パームトップコンピューターは注目されるようになりました。
キーボードが付いていて、これぞ!という感じの形状です。小型ノートパソコン、当時の流行ではサブノートとも呼ばれていましました。本当に定義が難しいのです。
A5ファイルサイズで、重さ1kg。当時のノートパソコンの半分ぐらいのようでした。
モノクロで、バックライトを消しても使える液晶ディスプレイを採用しています。乾電池が使用できることが売りのひとつでした。

HP200LX(ヒューレット・パッカード)1994年

その性能が驚きを呼んだ製品です。キーボード付きのパームトップコンピューターと言えば、この製品を思い出す方も多いのではないでしょうか。なにせ大きさは16x9cm、重さはたった320gなのです。単3形乾電池2本で連続20時間以上動作するというのも売りでした。

Pilot1000(Palm)1996年

最後にご紹介するのは、これなくしてPDAはなし、とも言える製品です。会社名がそもそもパームなのですから、やはり最初から気合いが違います。大きさは120x80x18mmで、重さは160gです。ポケットに入れて持ち運びすることを考えて、生み出された形状です。
縦長の画面の下には、物理ボタンが並んでいます。これはそれぞれ、メモ帳、アドレス帳、スケジューラ、To Doに対応しており、わかりやすくイラストが書いてあります。このボタンを押せば、その機能がすぐに使えるのが売りでした。OSは独自のPalmOSです。

パームトップコンピューターが見せてくれた未来

パームトップは、もちろんデスクトップよりも性能は劣ります。初期の製品は、画面はモノクロでしたし、処理能力も低いですし、記憶容量も少ないです。PDAのように、電子化された高性能の『手帳』のような製品もあります。
しかしパームトップは間違いなく、未来を見せてくれた製品たちなのでした。
きっといつか、画面はカラー化するだろうと期待させてくれました。
デスクトップでしかできないような複雑な処理も、いつか手のひらの上のコンピューターでできるだろうと期待させてくれました。それは家でも喫茶店でも、どこにだってパソコンを持ち歩けるという未来の姿です。

将来はもっと小型化するだろう。将来はもっと高性能化するだろう。一時期のパームトップは、これからのコンピューター社会の、最先端にあった製品だったのではないでしょうか。

パームトップコンピューターの終焉

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パソコン 1990年代

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