監督は1994年にスティーヴン・キングの中編小説を映画化した『ショーシャンクの空に』で一躍その名を轟かせた、アメリカの脚本家、映画監督、映画プロデューサー、テレビ監督のフランク・ダラボンです。

日常の「ちょっとした不思議」を奇才が垣間見せる
原作のスティーヴン・キングはジャンルとしてホラーであるにもかかわらず、舞台は主にアメリカのごく平凡な町で、具体的な固有名詞をはじめとした詳細な日常描写を執拗に行うのが特徴です。
その作風から、従来の「非現実的な世界を舞台とした、怪奇小説」とは異なるモダン・ホラーの開拓者にして第一人者とされています。
日常の中に潜む「ちょっとした不思議」を題材にした作品も目立っています。
デビュー作は1974年の『キャリー』です。

ホラーの帝王が一番恐れていることは?
「あらゆるものの中で? 死かな。でも、死でさえアルツハイマーや早老症にはかなわないな。僕にとってのホラー映画は『アリスのままで』(※)なんだ。
僕が恐れたり、何年もの間、興味を抱き続けるものは、ドライブインシアターのホラー映画とかではなく、実生活で見つかる心の底から恐ろしいと思わせられるものなんだ」

※『アリスのままで』(2014年公開、アメリカ映画)
言語学者のアリス・ハウランドは、医師である夫ジョンと3人の子どもと充実した人生を送っていました。
しかし、ある日からアリスには、単語が出てこなくなる、道に迷うなどの症状が出始めました。
アリスは医師から若年性アルツハイマー病と診断され、アリスと家族の苦悩が始まりました。
名キャスト相まみえる!!
主演はアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を総なめにしてきたアノ男…
アメリカ・カリフォルニア州出身の俳優、映画監督、映画・テレビプロデューサーのトム・ハンクス演じるコールド・マウンテン刑務所Eブロックの看守主任で、在職中は78回の死刑執行の指揮をとったポール・エッジコムが、1999年現在の老人ホームで、友人に60年以上も前の話を聞かせるというものです。
年老いたポールが白黒の古い映画、1935年のマーク・サンドリッチ監督のRKOミュージカル『トップ・ハット』を観て、泣き崩れるところから映画は始まります。

もう一人の主人公、アカデミー賞候補の男
本作で少女殺害容疑をかけられた知能が低いが優しい心を持ち、超能力で人を癒す大男の囚人ジョン・コーフィを演じたのはブルース・ウィリス主演の大ヒットSF映画『アルマゲドン』(1998)主演のアメリカ・イリノイ州出身の俳優、声優、マイケル・クラーク・ダンカン(Michael Clarke Duncan、1957年12月10日 - 2012年9月3日)です。
不思議な力を持つ囚人を好演したマイケルは本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされました。

更なる活躍が期待されていましたが、2012年9月3日アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスにて、わずか54歳でこの世を去っています。
摩訶不思議な世界へようこそ!!
1932年、アメリカの刑務所、死刑囚監房で看守を務めるポール・エッジコムのもとに、一人の大男が送られて来ました。
双子の少女を強姦殺人した罪を持つ死刑囚ジョン・コーフィは、その風貌や罪状に似合わないほど弱く、繊細で純粋な心を持っていました。
これと同時期に、知事の妻の甥であるパーシーが看守となり、傲慢な態度で他の看守たちから嫌われる存在でした。

僕たちは世界で一番美しい魂を握りつぶそうとしていた!!
コーフィは触れるだけでポールの重い尿路感染症を治したり、パーシーに重傷を負わされたネズミのMr.ジングルスの命を救いました。
これを見た看守たちは、彼はその不思議な力を神から授かった特別な存在なのではと考え始めます。
コーフィが電気椅子に送られること、それを行う自分たちは大きな過ちを犯しているのではないかとポールは悩みます。

双子の少女を殺害したのは誰か…!!
しばらくして、ウィリアム・ウォートン、通称“ワイルド・ビル”という凶悪な死刑囚が送られてきました。
コーフィは刑務所所長のハルの妻・メリンダから吸い取った病気をすぐに吐き出さず、パーシーに移すと、パーシーは錯乱状態となりウォートンを銃で撃ち殺し、まもなく精神病院に送られました。
それからコーフィはポールの手を取って双子の少女の殺人事件の真相を伝え、ウォートンが双子の少女を殺害した真犯人だったと知ります。
ポールが泣き崩れたわけ…
しかし、コーフィの冤罪を覆す証拠は存在せず、死刑執行が決定されました。
ポールたちはコーフィに脱獄を勧めるが、「毎日のように、世界中の苦しみを感じたり聞いたりすることに疲れたよ」と言いコーフィはそれを拒否して死ぬことを選びました。
処刑の2日前、コーフィは映画を観たことがないので、一目観たいと願い出ます。
最初で最後、一生に一度の「映画体験」で、彼が選んだのは、マーク・サンドリッチ監督作品で、フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャース主演のRKOミュージカル『トップ・ハット』(1935年) でした。
そして数日後、コーフィは電気椅子に送られ、ポールの手で処刑されました。

罰なのか恩恵なのか??
その後、ポールは108歳になっても健康に生き続け、Mr.ジングルス(ネズミ)も60年以上生き続けています。
これはコーフィの力の副作用によるものでしたが、ポールは自分がコーフィを処刑したことで神から罰を与えられ、家族や友人全員より長生きすることになると信じていました。
そしてMr.ジングルスの異常な長寿ぶりから、自分が死ぬのは遠い先のことだろうと考えるのです。

108歳のトム・ハンクス!!、実は…
当初、108歳となったポール・エッジコム役も、歳を取った特殊メイクを施したトム・ハンクスが演じるはずでした。
しかし、プロの手に掛かってもトム・ハンクスを劇中の役と同じ位の年齢に見せることができなかったため、急遽ダブス・グリア(当時82歳)をキャスティングしたそうです。
確かにいくら特殊メイクを施しても、撮影当時40代であったトム・ハンクスが演じるには無理があったのかもしれませんね。
