ASUKAで連載された少女漫画『あなたに逢いたい』とは…
少女漫画雑誌「ASUKA」にて1992年から連載された『あなたに逢いたい』。
川原由美子さんの他代表作
「前略ミルクハウス」や「観用少女(プランツ・ドール)」などで知られる川原由美子さんによる作品です。
幼なじみの柊一に、もう一度舞台に立ってほしいと願う澄寿(すず)。
けれども「NO」とはっきり断るばかりで……。
話せば話すほど、会えば会うほど柊一が遠くなっていく距離に澄寿は――。
リリカルヒューマンドラマでした。

「あなたに逢いたい①」
あなたに逢いたい のあらすじ
7歳上の幼馴染の役者・柊一に恋している澄寿。
ひょんなことから小劇団を手伝うことになった澄寿は
ある日、怒鳴っている役者の一人の沢中 仁(さわなか ひとし)に出会う。
澄寿は自前の料理の腕で沢中をてずなける(?)が、
実は今稽古をしている影(ディム)役はもともと柊一がやることだと知り激昂する。
そしてその時に澄寿の心が柊一に向かっていることに気づいて、
沢中は自分の恋心に気がつくが……。
あなたに逢いたい の登場人物
澄寿(すず)

料理と植物が大好きな女の子らしい女子高生。17歳。
7歳上の柊一が好き。
沢中のアプローチに対しては迷惑だと思っているが、
沢中のけしかけや演じている舞台を見続けていく度に
皮肉にも柊一の本音を知るきっかけとなり、その本質を知ろうとする決心に繋がっていく。
永館柊一(ながだてしゅういち)
沢中のライバル。
元・名子役。澄寿の想い人。
つかみどころのない人物で、役者のくせに舞台から逃げている。
沢中仁(さわなかひとし)
フリーで場数を踏んでいる努力家の役者。
劇中・ディム役を演じる。
負けん気強く、クールなようでいて熱血マン。
澄寿の料理の腕前で胃袋を掴まれたり、思いがけのない言葉をもらったことで澄寿に恋する。
割と単純一直線。
主人公は女の子の澄寿なんだけど……

筆者がもろに沢中の素直な澄寿への恋心にきゅんきゅんしたので、(←)
今回は彼をクローズアップします。
柊一のせつない恋心を持つ澄寿に対して、
どうにかどうにかこっちを向かせようとする力強さがとても読み応えがございました。(*´▽`*)
彼は、柊一がやるはずだった役を任される形が多く、
柊一に対してへんな、こだわりのもったライバル心を燃やします。
澄寿が柊一を好きで、このディム役も実は本来は柊一がやるものだと知ると……。
同じ土俵に立ってくれないライバルに対して、逃げるように勝っている柊一に
(しかも「実力はおまえが上だよ」と柊一も沢中の才能を認めている)
沢中はとらえどころのない亡霊と戦っているような気で、もやもやするんですね。
そして、澄寿に恋した沢中は、こんなようなことを言います。
「永館のどこが好きなわけ? 好きと嫌いがあるから、好きがあるんだよ」
「お前は永館のいいところ、見たいところしか見てないんじゃないのか」
と、ホレたが負け。
その後で真っ向に、柊一へ挑むように舞台を演じます。柊一がやるはずだったディムを。
澄寿は沢中の演技を見ていくたびに気づくのです。

柊一がやるはずだったディム役の像が沢中のディムに塗り替えられていくことで、
皮肉にも沢中の思惑を外れていって、
柊一の表面だけでない、「裏側の部分を知りたい!」と思うようになります。
そして、夜、澄寿は柊一の家に乗り込みます。
はたして澄寿は、柊一の“裏側”を知ることが叶うのか!?
そんなお話でした。
沢中くんの思いは報われるのか、それは可能性のひとつとしてあるかもしれない的にこの物語は終わりになっています。がんばれ、沢中。
感想

柊一がとらえどころなく明らかにムズカシイ男性に対して、
沢中くんはとても単純でわかりやすかった。
好きだから嫌いもある。
「柊一は実はこんな男だぞ」と看破するかのように沢中の見る柊一像を語るたびに、
澄寿ちゃんはぼんやりと輪郭を掴むようになります。柊一の。
そんで、澄寿ちゃん、沢中くんじゃなくて柊一に立ち向かっていくんですけどね!
却って幻想を打ち破って、ほんとうのずるい柊一の部分を知りたくなる。
いわゆる当て馬役ですが。
そんな沢中くん、かっこよかったです。(*´ω`*)