『ガンプラり歩き旅』その69 ~HGUC発売を直前にして、あえて旧作1/220 バイアランを試験機カラーで仕上げてみる!~

『ガンプラり歩き旅』その69 ~HGUC発売を直前にして、あえて旧作1/220 バイアランを試験機カラーで仕上げてみる!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、メカ単位での紹介をする大好評連載。 新展開では『機動戦士Zガンダム』(1985年)『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)まで、旧キットから最新のHGUCまで、商品の発売順に、再現画像と共に網羅紹介していこうという趣向になっております!


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復讐に燃えるジェリドが、まだテスト中のバイアランに乗り込んで出撃する!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、 再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。  

今回紹介するのは、『Zガンダム』で、ジェリドの愛機としてZガンダムを苦しめた、異形の強敵モビル・スーツ、バイアランの、放映当時の1/220旧キットのご紹介です!

バイアラン 1/220 42 1986年4月 400円(機動戦士Zガンダム)

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バイアランの旧キットのボックスアート。背景にドダイ改が描かれているのは、バイアランが初の単独飛行可能型モビル・スーツであるため

「それ」が、当初からの予定調和だったのか、止めるに止められなくなったスタッフサイドの暴走ゆえなのか。
『機動戦士Zガンダム』に登場するロボット群、いわゆるモビル・スーツは、どんどん2つの要素でインフレを起こし始めていた。

番組スタートからしばらくは、登場するモビル・スーツは敵も味方も、どこかしらに前作『機動戦士ガンダム』(1979年)のモビル・スーツデザインの影響や痕跡を遺す意匠がほとんどであった。
それは、この時期粗製乱造されていた、自他社含めての「リアルロボットアニメ」のメカとの差別化を図るためでもあっただろうし、「ガンダム」というブランドは、やはりここまでを支えてきた登場モビル・スーツのデザインラインを支持する層に支えられていたからというのもあった。

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完成したバイアラン。こちらはメインで活躍するカラーリング版である

しかし、富野由悠季監督の構想としては、ドラマもテーマも演出もメカデザインも「前作を踏襲する」だけでは、一過性の、ありがちな続編で終ってしまうわけで、踏まえるところは踏まえつつも、新境地を切り開いていかねばならないというプレッシャーもあっただろう。この時期「ガンダム」は、そこまでのビジネスに膨れ上がりつつあったのだ。

そこでのメカを「翔ばせる」策は、そもそもの『Zガンダム』のビジネス的企画意図でもあった「『超時空要塞マクロス』(1982年)のバルキリーや、タカラの『トランスフォーマー』のように、戦闘機に変形するガンダムが最終的に主人公メカになる」は、合意の上でのスタートだったわけで、そこでのゴタゴタ果てしなく、はここでは割愛するが、そうなると自然と、「変形モビル・スーツ」というカテゴリが、敵味方にも入り乱れて登場しなければ、世界観が自然に見えなくなる。
それと同時に、メカ同士を同じ画面に入れる時、大きな敵に立ち向かう図という方が、自然に盛り上がるのは普遍的な活劇のセオリーゆえに、敵のモビル・スーツがどんどん巨大になって主人公サイドに立ちはだかる図がエスカレートしていった。

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正面から見たバイアラン。シルエットの異形さは、Zガンダムのモビル・スーツの特徴だったりする

およそ、同時期のライバルコンテンツだった『超時空』シリーズを看板に掲げていたスタジオぬえ関係者以外の、当時のアニメ界隈で頭角を現し始めていたメカデザイナーの、ほとんどと言ってもよいバイタリズムでかき集めた『Zガンダム』は、「変形するモビル・スーツ」「巨大化していく敵モビル・スーツ」という条件を兼ね備えれば、どれだけ突飛なデザインのメカが登場しても不思議ではないという画面を生むに至り、これは当時や、映像作劇の基本から見れば混沌でしかないのだが、結果として「ガンダムというビジネス」を、40年スパンのジャンルにまで広げたのは、この時期の『Zガンダム』の、「なんでもありさ加減」がベースになったのではないかと思われる。

そんな中で、藤田一巳氏の生み出した「巨大」で「可変する」メッサーラというモビル・スーツの登場は、『Zガンダム』のメカ概念を一気に改変加速させた。
詳しくは、いずれ紹介するメッサーラの回で語るが、要するにバンダイ・ガンプラは「この現象」に、慌てて追いつこうとするしかなかったのである。

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サイドビューとバックビュー

メッサーラ以降、それまでどことなく「ガンダム風」「ザク風」「ゲルググ風」なデザインが占めていたメカ戦闘のシーンを、斬新で巨大で、手品のように変形するモビル・スーツが続々と現れるようになった。ギャプラン、アッシマー、そしてついには、メインスポンサーのバンダイの「天皇」村上克司氏までが、真四角に変形するサイコガンダム(当初はスポンサーから提示された、主役ガンダムデザインだったとも聞くが、変形システムはまさに『大鉄人17』(1977年)であった)を登場させ、まさに時代が「巨大可変モビル・スーツがトレンド」になりつつあった。

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可動範囲の紹介。まずは開脚から

今回、1/220 バイアランの解説で、なにゆえこんな戯言を書き連ねているかというと(註・バイアランは可変MSではない)、要するに激化していくガンダムのメカデザインのスパイラルに、商品化技術とコストバランスをコントロールすることが不可能になったバンダイが、ガンプラのアイデンティティでもある「1/144と1/100」から一度撤退し、巨大化していくモビル・スーツ群を、的価で商品化していくために、その場しのぎで急ごしらえしたのが、サイコガンダム系の「1/300」と、このバイアランが属する「1/220」という商品カテゴリだったというのが今回の話のポイント。

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この辺りまで脚は開く。1/220スケールキットでは、かなり可動範囲は広い方

『Zガンダム』では、当初は1/144と1/100という、お約束のスケールでガンプラ商品化が展開していたが、徐々に巨大化していく新モビル・スーツの登場に、1/144のままでは児童層がお小遣いで気軽に買えないという問題が出てきたのと、サイズ的には昔と変わらなくても、ギミックが増えた分パーツ数やコストがかかり、時代と共に進んだ物価の上昇もあって、No.20の百式ですら600円と、初期のガンプラの倍の値段になってしまった。
そして、その後登場する新型MSはさらに大きく、複雑な変形ギミックを保有する見通しの中、バンダイは、それまで1/144で商品化してきたモビル・スーツも含めて、もう一回り小さく、組立もシンプルな「1/220」という商品カテゴリを増やして、そこへ大型MSをラインナップさせようと試行錯誤を始めたのだ。

具体例を挙げていくなら、1/220商品化第1号は、上でも挙げたメッサーラだが、一応これは1/220スケールながら、簡易的だがMA形態に変形が可能な商品になっている。
その次の1/220は、これも可変MSのアッシマーだが、これはなぜか変形は不可能な仕様。
しかし、その間に発売された1/144 ギャプランは、設定上はメッサーラとほぼ同じサイズと変形機構なのに、こちらは1/144で、しかもしっかりと変形するという錯綜っぷりが伺える。

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膝の曲がり角度は当時レベルだが、膝アーマーが腿側に付いているのは見栄え的にポイントが高い

さらにその後は「1/144だが、変形できないガブスレイ」や「1/144なので、しっかり変形できるハンブラビ」等を挟みつつ、『Zガンダム』ガンプラNo.34からは、1/220スケール枠が、ガンダムMK-Ⅱやリック・ディアス、Zガンダム等を「小サイズで出し直す」路線も兼ねていくことになる。

なので、『Zガンダム』でのガンプラ商品数は、全部で43までナンバーがあるが、「ガンプラ化されたモビル・スーツの数」は半数程度で、特に中盤以降に劇中に登場したガザCやバーザム、ジ・Oなどは、近年のHGUC化まで、1/144でのガンプラ化には恵まれていなかった。
それどころか、当時も今も、過去から現在に至るまで、どのスケールででもいっさいキット化されていないボリノーク・サマーンやバウンド・ドッグのようなモビル・スーツもあるのだ(SDガンダム系除く)。

『Zガンダム』と、続編の『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)に登場したモビル・スーツは、当時人気とは関係なく、個々にさまざまな商品化系譜を辿っている、まるで「人間模様」のように見えることもある。

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うまく説明しにくい、独特の形状と構造を持つ腕

ここまで読んできてくださった読者の中には、きっとアンテナの鋭い人もいて「なぜ市川大河は、いまさら1/220のバイアランの紹介などするんだろう。待っていればもうすぐ8月末に、HGUCで待望の1/144バイアランが発売されるのに」と首をかしげているだろう。
実際、『Zガンダム』でのメッサーラやアッシマー、ガブスレイのように「HGUC化されたことで、初めて1/144で変形まで完全再現されたガンプラになった」例もあれば、『ガンダムZZ』初期のガルスJやRジャジャ、ハンマ・ハンマのように、「後の作品で登場した派生機の方が商品化されたが、元ネタの自分が1/144キット化されない」という例もある。

そういった流れでバイアランも、派生作品でのバイアランカスタムの金型を経て、ようやくこの度HGUC化されるに至ったわけだが、それが分かったのも2018年に入って春になってからであり、それまではずっと、この旧キット版を再現に用いる予定であった。

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阿波踊りをしているようにしか見えないかもしれないが(笑)、うでの可動範囲を解説している一枚である

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