『ガンプラり歩き旅』その34 ~ゲルググに、当たりキットはなかったのか!?~

『ガンプラり歩き旅』その34 ~ゲルググに、当たりキットはなかったのか!?~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第34回は、ゲルググの1/144 HGUCをご紹介!


テキサスコロニーで、ガンダムに襲い来るシャア専用ゲルググ!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、これまでに「当たりなし」と言われ続けてきたゲルググの、2000年代1/144キット決定打のHGUC版の紹介です!


ゲルググ 1/144 HGUC 070 シャア専用 2006年10月 1500円

やはりテキサスコロニー戦を背景に、煽りでビーム・ライフルを向ける深紅のゲルググ!

ゲルググ 1/144 HGUC 076 量産型 2007年3月 1600円

こちらは最終決戦を背景に、コンパチで組み上げられる、量産型ゲルググとゲルググキャノンの競演がボックスアート

「ドムにハズレなし。ゲルググに当たりなし」は健在なのか!?
ガンプラで初めてドムとゲルググが1/144でキット化されてから26年、いくらなんでも、HGUCの時代になってまで、「ドムにハズレなし」は当たり前としても、「ゲルググに当たりなし」は、あり得ないだろう! だって、いくらなんでも、そんな立体化に際して複雑怪奇なデザインじゃない、普通のモビルスーツなんだぜ、ゲルググは!

いつものシャアピンクと赤茶系のシャア専用色のゲルググと、深緑とグレーが印象的な量産型ゲルググとの対比

80年代までならいざ知らず、2000年代になってまで、そんなジンクスが実存していたら、もうそれジンクスじゃなくって呪いだよね!?
実際、90年代前半までに、ゲルググの派生デザインとして、リゲルグ(『機動戦士ガンダムZZ』(1986年))、ゲルググJ(『機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争』(1989年))、ゲルググM(『機動戦士ガンダム 0083 STARDUST MEMORY』(1991年))などが、それぞれの作品時代でキット化されてはいるが、どれも珠玉の出来を誇り、ハズレ感は全くしなかった。
そう、そんな、呪いのようなジンクスなど、もうどこにもないのだ。過去の逸話でしかないのだ。……と思っていたが。

砂塵渦巻くテキサスコロニーに、シャアが来る!

しかし、現代における「ドムにハズレなし。ゲルググに当たりなし」は、既に90年代中盤に1/100マスターグレード(MG)シリーズで、一度やらかしてしまっていたのだ。
1/100 MGゲルググ(1996年発売)は、腕は華奢だわ、関節が弱すぎて立ってられないわ、武器も持てないわ、誰も喜ばないデザインアレンジが施されたわで、その後の1/100 MGドム(1999年発売)の出来の良さと、またまた比較されてしまうオチを迎えていたのだが。

「ララァ、奴との戯言をやめろ!」

捲土重来。今度は逆に、ドムよりも発売を遅らせて、さらに先にゲルググM、ゲルググJを先行して開発販売をして、「より確実に、よりベストな、ゲルググの立体化ノウハウ」を、HGUCコンセプトの中で積み上げてきた上での、万感を排しての「最初の『機動戦士ガンダム』(1979年)のゲルググのHGUC化」であったはずの本商品。

背後から実妹のセイラの乗るコア・ブースターが迫る中、ビーム・ナギナタを振るうシャアのゲルググ!

確かにこのHGUC ゲルググ、昔のキットのような、何もかもがダメな子感はない。
むしろ、頑張っている。確かに、あのゲルググを今の技術で再現しようと頑張って立体化に踏み切ってはいる。
頭部パーツも上手く分割されていて再現度も高く、ビームナギナタはクリアイエローで成型され、脚部の可動範囲も、革新的なスカートの分割で良好。
肩の可動も、35年前の1/144への怨嗟を晴らすべく、無駄に可動がいつも以上に広く動く。

ジオン初のビーム・ライフルを撃つシャアのゲルググ!

“そういう意味”では、このHGUCは、旧キット版やMG版の汚名返上の役目は十分に果たしている。
可動のためのデザインアレンジは、折衷案としては及第点であり、全体構造も悪くない。
では、なにを以てして「ゲルググに当たりなし」を踏襲してしまったのか?

ABS。

それは、ガンプラを中心とした、可動型のプラモデル素材の歴史の中で、ほんの数年間、救世主のような存在として崇め奉られ、縦横無尽に使用された素材である。
ガンプラの可動システム概念は、初期の「プラスチック部品同士をはめ合わせて可動させる」から、「プラスチック部品の間にポリキャップを仕込んで、それへ軸を刺して稼働させる」へ進化し、「ボールジョイントとポリキャップの合わせ技」の時代を経て、ちょうどこの、2000年代の初期から中期、ABS素材という新境地を開拓して、それを多用していた時期だった。

ABSは共重合合成樹脂とも呼ばれ、プラスチックよりも剛性があり、曲げ疲労性や摩耗耐性も高く、ガンプラの関節や可動部に、ポリキャップ収納スペースを設けずに、パーツの大きさとディティールを見た目重視で確保しながら、可動ギミックを仕込める素材としては、確かに大発見だった。
ABS素材導入ノウハウを会得した当時のバンダイは、すぐさまこのABSを率先してガンプラに取り入れた(筆者の記憶では、ABSが初めて導入されたガンプラは、『機動戦士Vガンダム』(1993年)の、1/60 V2ガンダムではなかったかと思う)。

テレビアニメ版では水色だったビーム・ナギナタのビーム部分が『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』新作画ではイエローに統一。その設定はその後も継承された

一応、ABSの一つ目の弱点として、プラモデル用接着剤ではプラ部品とも接着できないということが挙げられるが、この頃既にガンプラは、総スナップフィット(接着剤不要の、はめ込みだけで組み立てられる仕様)になっていたので、あまりバンダイはそこを気にしていなかった。
パーツ同士の接着ができないと、すなわち接着後のパーツ同士の合わせ目消しもできないわけであるが、主にABSは外装部品に使われることはまずなく、関節パーツや可動部品に使われるので、その辺は割り切ればまだ我慢もできる(どうせ筆者は合わせ目消しとかはしないし……)。

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