ムード歌謡

決定盤 ムード歌謡ベストコレクション
ムード歌謡。ムードというだけで何やら怪しげですが、その歴史は意外に古く第二次世界大戦後にまでさかのぼります。特に1952年頃から日本独自に発達したポピュラーミュージックのひとつ、それがムード歌謡です。
サウンド的には聴いてもらうしかありません。因みにムード歌謡の中でもコーラスを主体としたものは、ムードコーラスとよばれています。
もともとはナイトクラブで客のリクエストに応じてダンス音楽を演奏したことから始まったとされるムード歌謡。そのあまりにもディープでオリジナルな世界を覗いてみましょう。
ブランデーグラス
ムード歌謡にはカラオケボックスは似合いません。歌うのであればスナック。ママに「いつものヤツ」と一言いってから思い入れたっぷりに歌いだすのが正しいように思います。いえ、そうであってほしいと切に願います。
で、それが似合う男性像と言えば、ズバリ、裕ちゃん。石原裕次郎ではないでしょうか。いえ、そうであってほしいと切に、切に願います。
これです。「女泣かせ」、そんな言葉が聞こえてきます。やはり、声ですかね。それと、アイテムとしてムード歌謡には酒が似合います。とは言え、日本酒や焼酎では演歌になってしまいますから、やはりここは水割りでしょうか。そうですね、ブランデーなのでしょうね。
実はお薦めしたいのはムードコーラスなのですが、ムード歌謡にしろムードコーラスにしろ、ボーカリストに求められるのがビジュアル。2枚目の中でも、のっぺりとした日本人顔でなければいけません。
そういった意味では石原裕次郎は異質ですが、ムードコーラスに移る前に、楽曲、ビジュアル、声などムード歌謡の全てを兼ね備えたアーティストをご紹介します。
うそ
中条きよしが歌う1974年発売の「うそ」ですが、これはもうムード歌謡として完璧です。嘘ではありません、ホントのはなしです。
如何です?メロディやアレンジもさることながら歌詞が、歌詞がもうムードしています。
そして、しみじみ感じるのですがムード歌謡のボーカリストは、やはりホスト顔でなければいけません。ホストといっても勿論70年代のホストです。
さて、それでは以上をふまえてムードコーラス、いってみましょう!
ラブユー東京

ラブユー東京
う~ん、これぞムードコーラス!と思わずうなってしまうのが、1966年に発表された黒沢明とロス・プリモスの「ラブユー東京」です。
しかし、発表当時はヒットせず、ジャケットを一新し再発売されたことで大ヒットしました。
1968年1月4日付のオリコンで見事1位となっているのですが、実はオリコンチャートが正式に発表されるようになって最初の1位獲得曲なんです。
うっとりしますね。この曲は現在までにナント250万枚も売れているんですよ。
星降る街角
ムード歌謡の帝王と異名をとるのが、敏いとうとハッピー&ブルーです。1971年のグループ結成後、1974年「わたし祈ってます」、1977年「星降る街角」と立て続けにヒット曲を放ちその地位を築きました。
リード・ヴォーカルを務めるのは森本英世。完璧なムード歌謡歌手と断言できます。

よせばいいのに
そして1979年に大ヒットしたのが「よせばいいのに」です。
実はこの曲、1976年に三浦弘とハニーシックスが発売したのがオリジナルで、敏いとうとハッピー&ブルーはカバーということになります。
もちろん好みによるとは思いますが、敏いとうとハッピー&ブルーに限らず、全ムード歌謡の中で最高傑作ではないかと思うのが「星降る街角」です。
ロックを聴きなれた耳には、な、な、な、なんでと思わずにはいられない冒頭の「うぉんちゅう」。この掛け声にいきなり度肝を抜かれてしまいます。
いやぁ~、「色気」というのでしょうか、この艶っぽいボーカルがもう最高ですよね。
知りすぎたのね
黒沢明とロス・プリモス、敏いとうとハッピー&ブルーとくれば、ロス・インディオスを紹介しないわけにはいきませんね。
ロス・インディオスは、ロス・インディオス&シルヴィアなどのように、女性ボーカルをメインとしたイメージがありますが、もともとラテン好きが集まった男性だけのラテンバンドで、都会派のムードコーラスグループです。
シルヴィアとの「別れても好きな人」が大ヒットしたことで、そのイメージがついているのでしょうね。。
しかし、男性だけのロス・インディオス。これがまた良いんですよ。
渋いなぁ。素晴らしい、さすがですね。
女性ボーカルいらないんじゃないのと思ってしまいますが、ロスインディオスはシルヴィア以外にも、フローレス、嵯峨聖子 、ルナ 、桑江知子、坂田真由美、MAIKO 、ALICIA、Ninaと実に様々な女性ボーカルを迎え入れています。
東京砂漠
お笑いもこなせるムードコーラスグループとして、お茶の間の人気者となったのが内山田洋とクール・ファイブ。
1969年2月発売のデビュー曲「長崎は今日も雨だった」がいきなりの大ヒットとなり、その後も立て続けにヒット曲を連発しました。
ちょっと特異なのが、ボーカルの前川清がボケというところでしょう。それまでのムード歌謡イコール2枚目というイメージを大きく覆しました。
ん~、スナックに行こう。水割りを注文し、「ママ、いつものヤツ」と言おう。もう、じっとしていられなくなる、それがムード歌謡というものです。
それにしてもムード歌謡には「魅惑」という言葉が良く似合いますね。