
蛭子漫画 (タツミコミックス)
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地獄に堕ちた教師ども(1981年)
蛭子さんは、中学時代に不良グループから陰湿ないじめを受けているときや、社会人になって執拗に上司から怒鳴られたとき、そのルサンチマンを爆発させるかのごとく、ノートにそいつらを残酷に殺す漫画を描いていたといいます。そう。蛭子さんが書く漫画の根底に流れているのは、負のエネルギーであり、だからこそ、彼の書く絵にはどこか陰鬱な影があるのです。
そんな蛭子さんの初期の作品を集めた処女作品集である『地獄に堕ちた教師ども』。
「悪夢なら醒めてくれ!! このままじゃ脳味噌がブッ飛ぶぜ!!」
「処女作にして到達点! 漫画のひとりセックスピストルズ! 破壊せよ、とエビスが叫ぶ!」
これがキャッチコピーだそうです。
無能な教師が発狂したり、無垢な少女が人柱にされたりするという本作は、蛭子さんの闇の深さを存分に体感できる一冊となっています。

地獄に堕ちた教師ども
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私はバカになりたい(1982年)
実はかなり映画通の蛭子さん。昔、『虎の門』というテレ朝の深夜番組に出ていたときも、映画監督・井筒和幸のコーナー『こちトラ自腹じゃ!』で、よく映画についての造詣の深さをうかがわせる発言をしていました。ちなみに、蛭子さんが好きな映画は、『遊星からの物体X』『砂の女』『ゴジラ』などだといいます。

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そんな映画好きがこうじてなのか、この13編からなる短編集『私はバカになりたい』は、収録作品のタイトルすべてが映画からの引用になっています(まず、表題からして『私は貝になりたい』のパロディ)。
たとえば、『ペニスに死す』⇒『ベニスに死す』、『競艇時代』⇒『黄金狂時代』、『マッチ売りの主婦』⇒『マッチ売りの少女』、『サラリーマンは2度イライラする』⇒『007は二度死ぬ』など。

私はバカになりたい
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作品のすべては18禁。表題作である『私はバカになりたい』も、頭が良い(と思っている)がために、女とヤッてもすぐに冷静になってしまう男の話。行為の途中で「バカバカしくてやる気がしない…」と女に言い、アレコレと御託を並べた末に「面白くない人ね。帰ってよ!」と追い出され、「あーあ、私もバカになりたいよ」と言ってジ・エンド…。実にシュールです。
ちなみにキャッチコピーは、「御辞儀をすればヨダレがタレる バカが通れば道理もひっこむ 地獄の沙汰もバカしだい そのうちナントカなるだろう!!」。
私の彼は意味がない(1982年)
蛭子さんのギャンブル好きはあまりにも有名。1998年11月には、新宿の雀荘で賭け麻雀に興じているところを現行犯逮捕されたりもしました。
この短編集『私の彼は意味がない』にも麻雀の話が出てきます。ストーリーは、家に集まった4人が麻雀を始めると、なぜか、その家の奥さんが裸踊りをしはじめ、「大丈夫?」と主人に聞くと、「気にしなくていい」と答えるというもの。本当に意味が分かりません…。

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私は何も考えない(1983年)
どこか表紙の人物が笑うセールスマンの喪黒福造っぽいこちらの作品。相変わらず、エロ・グロ・ナンセンス爆発の不条理な内容になっています。

私は何も考えない
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なんとなくピンピン(1983年)
田中康夫が1980年に発表した小説『なんとなく、クリスタル』から引用して表題がつけられた本作。自身のファンクラブ会長が亡くなった際、棺の中にこの本が入っていたため、葬儀にも関わらず、笑いが止まらなくなったという都市伝説も語られています。

なんとなくピンピン
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こんなシーンも…
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お隣さん(1985年)
『お隣さん』は、性格が良い金持のおじさんと、性格が悪い貧乏なおじさんの話。しかし、ロバート・キヨサキ著の『金持ち父さん貧乏父さん』のような、金持ちの成功談を書いた話ではありません。
本作は、貧乏なおじさんが金持のおじさんを殺す話であり、それも、毎話違った方法で殺害するという内容なのです。さすがは蛭子さん。「絵は欲望の表れだ」という言葉がありますが、ここでも、長かった貧乏時代のうっぷんを晴らすかのように、にっくき金持ちを惨たらしく殺しているのです。

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サラリーマン危機一発(1985年)
「サラリーマンの仕事なんてみっともないことばかり、心の貧しい生活を強いられているのがサラリーマン」と断言している蛭子さん。それは、「自由に生きること」を標榜としながらも、看板屋やちり紙交換、ダスキンのセールスマンなど、貧乏ゆえに職を転々としてきた彼の切実な意見です。
このように会社員に対してマイナスなイメージがあるためか、蛭子さんの作品に登場するサラリーマンは、かならずと言っていいほど不幸そうです。この『サラリーマン危機一発』でも、「恐怖の会社生活」を描いています。

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狂ったバナナ-シュール・ド・エロ(1985年)
タイトルからして危険な香りプンプン。表紙はもっとぶっ飛んでます。もちろん18禁。シュールでエロい妄想が繰り広げられる蛭子ワールドが存分に楽しめます。

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家族天国(1986年)
内容はいつものように、100%地獄。なのに「天国」としているのは、皮肉でしかありません。父親・母親・男女の子供という作中の家族構成は、蛭子ファミリーとまんま同じ。であるならば、主人公のオヤジは、蛭子さんのアバターと考えるのが妥当でしょう。それが派手に不満をぶちまけて、暴れ回っている姿を見るに、やはりこの人、日常生活におけるうっぷんを晴らすために、漫画を描いているとしか思えません。

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(こじへい)