いやだ公害(ニューフェニックス)⇒公害問題
戦後、急速な経済発展を遂げた日本。しかし、そのツケとして、水質・大気の汚染が進み、60年代頃から公害が社会問題化していきました。

1967年に公害対策基本法・環境庁が発足してもなお、公害の脅威は続いた
大気汚染 - Wikipedia
こうした時局を憂いでか、ニューフェニックスというグループによって発表された楽曲が『いやだ公害』です。70年代といえば、フォークソングで反戦を歌うことが流行っていた時代。そんな中、より身近な「公害」をテーマとして扱い、それをムードコーラス歌謡調に歌った同曲は、かなり異色の存在といえるでしょう。
手紙(岡林信康)⇒部落差別
プロテストフォークの第一人者として、カルト的人気を誇った岡林信康。彼が部落差別について歌った楽曲は2曲あり、『チューリップのアップリケ』と、本稿で紹介する『手紙』です。どちらも「放送禁止歌」とされています。
『手紙』は、部落に生まれた若い女性の一人称語りの歌。大好きな彼と、将来一緒にお店を持つという夢があった「私」。しかし、厳然と存在する「差別」が障壁となり、その夢はかなわず。結局、彼の前から身を引くことを決断したと語っています。
そんなメッセージが胸に刺さります。
大平エレジー(高田耕とはじらいエコーズ)⇒過疎化
1960年代以降。高度経済成長によって、農村部から都市部へ、労働力としての人口流出が続き、工業基盤を持たない地域は過疎化を余儀なくされました。

1990年代のバブル崩壊以降も過疎化は進行した
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そんな折に起こった出来事が、1970年の長野県大平宿における集団離村です。 同年11月には全住民28戸が移住を完了し、250年続いた宿場町は終わりのときを迎えました。『大平エレジー』は、そんな大平宿終焉の黄昏を歌ったムード歌謡。曲途中、離村者による語りも入り、変わりゆく時代に取り残された、さびれた宿場町の哀愁を、たっぷりと滲ませます。
ノーモア・スモンの歌(横井久美子)⇒薬害スモン
整腸剤キノホルムに由来する薬害スモン病。激しい腹痛、下肢の痺れ、脱力、歩行困難、さらには、視力障害といったさまざまな症状で患者を苦しめ、特に、1967~1968年頃に大量発生しました。
フォークシンガー・横井久美子が歌った『ノーモア・スモンの歌』では、そんなシンプルなメッセージを提唱しています。

ノーモア・スモンの歌(横井久美子)
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はぐれつばめ(野田淳子)⇒中国残留孤児
1945年8月9日、ソ連対日参戦の混乱により、肉親と離ればなれになり、中国大陸に取り残された中国残留孤児たち。1972年9月に日中の国交が回復してからは、より問題視されるようになり、肉親たちはわが子を探すための働きかけを活発に行うようになりました。
そういった時局もあって、残留孤児を歌った歌は、この『はぐれつばめ』をはじめ数多く作られました。

はぐれつばめ(野田淳子)
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傘がない(井上陽水)⇒学生運動
陽水が『傘がない』を制作した当時は、学生運動が盛んだった時期。学生が声高らかに政治を語り、世の変革を目指して武力行使も厭わない構えを見せていたのです。そんな時代の空気を多少皮肉る意味をこめて、陽水は、以下のような歌詞を書きました。

学生運動の様子
神田カルチェ・ラタン闘争 - Wikipedia
要するに、世間でいわれているような大きな問題よりも、他に考えること(自分の幸せとか)があるだろ、と言いたいわけです。
府中捕物控(THE ALFEE)⇒三億円事件
1968年12月10日。東京都府中市で、東京芝浦電気(現・東芝)の従業員に支給される予定だったボーナスが、白バイ隊員を装った男に強奪されました。世にいう「約3億円事件」です。

誰もが一度は見たであろう、犯人のモンタージュ写真
警視庁が作成した3億円強奪事件のニセの白バイなどの遺…:3億円事件 写真特集:時事ドットコム
劇場型犯罪にして完全犯罪…。不謹慎ながらも、ロマンをくすぐる出来事だっただけに、後世の物書き・クリエイターへ多大な影響を及ぼし、幾度となく、小説・映画・ドラマなどの題材にされてきました。

三億円事件~20世紀最後の謎~
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THE ALFEEも、そんな「三億円事件」に魅せられた作り手の一組。彼らは、同事件のパロディ曲『府中捕物控』を制作し、事件の公訴時効日である1975年12月10日に発売しようとしたのですが、「不謹慎だ」とのそしりを受けてあえなくリリース中止に。音源化されたのは、なんとこの39年後。デビュー40周年記念アルバム『青春の記憶 [+2]』に収録され、ようやく、日の目を浴びることとなったのでした。
老人と子供のポルカ(左卜全とひまわりキティーズ)⇒学生運動、交通事故、ストライキ
軽快なリズムに乗って歌われる、ナンセンス極まりない歌詞。一見すると、ただ、年寄と子供を一緒に歌わせただけの無意味なコミックソングのようですが、ちょっと意味を調べてみれば、しっかりとしたメッセージソングになっていると分かります。
「ゲバ」とはつまり、内ゲバのことで、ここでは学生運動を指します。さらに、2番では「ジコジコ(=交通事故)」、3番では「ストスト(=ストライキ)」と歌詞が変更されており、これらの被害者は老人と子供であることを示唆しているのです。
(こじへい)