モックンこと本木雅弘主演の映画『シコふんじゃった。』
1992年に公開された映画『シコふんじゃった。』。
脚本・監督を務めたのは「ファンシイダンス」や「Shall we ダンス?」の周防正行(すお まさゆき)。
主演はモックンこと本木雅弘。撮影は「風、スローダウン」の栢野直樹が担当している。
本作は「第16回日本アカデミー賞」にて最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀主演男優賞(本木雅弘)、最優秀助演男優賞(竹中直人)や「第66回キネマ旬報ベストテン」でも委員選出日本映画部門第1位、読者選出日本映画部門第1位、監督賞を受賞している。他にも受賞多数。

映画『シコふんじゃった。』DVD
軟派なサークルに所属している男子学生(本木雅弘)が、単位取得の目的で、相撲部に臨時入部することで物語が動き始めるコメディ映画。
「若貴ブーム」に沸いていた92年当時に公開された。また、そのブームの盛り上がりについて劇中でもセリフで語られている。
挿入歌で使われたおおたか静流「悲しくてやりきれない」「林檎の木の下で」が、非常に柔らかく、物語に温かみを与えている。
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あらすじ
舞台はキリスト教系の教立大学。
主人公である山本秋平(本木雅弘)は、シーズン・スポーツ愛好会というサークルに所属する4年生。親類のコネで超大手企業への就職も決め、サークルで行く沖縄旅行でのスキューバ・ダイビングを楽しみにしていた。

山本秋平(本木雅弘)
しかし、卒業するための単位が足らず、卒論の指導教員である穴山教授(柄本明)の研究室を訪ねることに。
普段授業は”代返”で出席している秋平は、穴山の顔も分からず、同室にいた大学院生の川村夏子(清水美砂)を穴山と勘違いしてしまう。その様子を見た穴山に出席について突っ込まれ、タジタジとなった秋平。さらに穴山から単位を与えないと言われてしまう。
動揺する秋平に穴山は、相撲部の助っ人として大会に参加すれば、単位を与えると交換条件を提案する。

相撲部顧問の穴山は元・学生横綱!

ヒロイン・川村夏子は自分の意見をはっきり持っている才女!
渋々提案を受け入れた秋平は、土俵のある相撲部の部室に入る。そこには、唯一の相撲部員で、8年生の青木(竹中直人)がいた。
まわしをふんどしと言い間違える秋平に何度も「ま・わ・し」と注意しながら、大会へ出るために他の部員を勧誘しに行く。
そこで、肥満体型の田中豊作(田口浩正)の勧誘になんとか成功する。
また、大学院生の夏子は、相撲部のマネージャーも務めており、プロレス部で女装レスラーでの試合を強要されていた秋平の弟・春雄(宝井誠明)をスカウトしてくる。その後、留学生のイギリス人で体格の良いスマイリー(ロバート・ホフマン)を引き込むことができ、メンバーが揃った。

取組前には緊張から決まって”下痢ピー”になる青木

青木は、実力も無いくせに秋平に先輩風を吹かせる。
かつては名門だった教立相撲部。顧問である穴山は、小柄ながら学生横綱にもなったほどの実力者だった。しかし、年を追うごとに相撲部は弱小となり、現在では三部リーグのしかも最下位と成り下がってしまった。
そして、秋平率いる寄せ集め集団で、団体戦に臨むが、現実は厳しく、一勝も出来ずにぼろ負けを喫した。青木に至っては相撲愛はあれど、これまで一勝もしたことがないという体たらく。
対戦相手の北東学院大学にコケにされても、何も言い返せない秋平達だった。
その夜に行われた激励会で、秋平達と観戦に来ていたOB達が口喧嘩を始めてしまう。その場で秋平は「勝ってやるよ、絶対勝ってやるよ!」と力強く宣言する。
以降、春雄に憧れて教立大学相撲部マネージャーとなった巨体の間宮正子(梅本律子)も加わり、秋平達は本音では嫌々ながらも相撲道に精進していく。
穴山の田舎の実家での夏合宿を経て、惨敗から3か月後に行われたリーグ戦に出場する。

「ま・わ・し」姿の相撲部員達
秋平達はギリギリながらも何とか勝ち進んでいく。途中、春雄の骨折や青木の悲願の初勝利などを経て、チームが段々と一つになっていく。
そして、因縁の相手ともいえる北東学院大学と対戦。勝った方の勝ちとなる最後の取組で秋平が
粘りに粘って勝利する。歓喜の教立相撲部員とOB、応援の人々。
その後、三部と二部の入れ替え戦にも出場。春雄の代わりに”まさお”として出場した正子のド迫力の取組などがあった。大将戦でまたも勝ちを収めた秋平の活躍により、見事二部昇格を果たした。
昇格後、豊作は大相撲の世界へ、スマイリーは帰国、正子と春雄はロンドンへ留学、青木もついに卒業と、部員は秋平だけに。相撲に愛着を抱き始めた秋平は、せっかくのコネ入社を蹴り、もう1年相撲部を続けるという。
最後、夏子が男子禁制のはずの土俵に上がり、秋平と共にシコを踏む。そして、「シコふんじゃった。」と笑う。

夏子が思わず「シコふんじゃった。」と言うラストシーン。
”教立大学”は”立教大学”を逆にした校名など、周防監督のユーモアが至る所に散見!
物語の舞台である”教立大学”は、周防監督の出身校である”立教大学”を文字ったものである。
また、対戦校にも遊び心が垣間見える。”本日医科大学”は”日本医科大学”だろうし、”応慶大学”は当然”慶応大学”と予想される。
他にも劇中には、一工夫があり、学生達が先輩の噂話をする際に出てくる人物は、立教大学出身であるあの”長嶋茂雄”のことだと察しが付く。
噂とは最初の英語の授業で、THEをテヘって読んだこと、隣の席の人に「凄い便利だねその本、日本語訳が出てるんだ」と絶賛したら、普通の英和辞典だったといったものだ。
野球が好きで、中学はわざわざ越境入学までしたという周防監督らしい演出である。
本作はそもそもの展開からしてコメディであるが、こうした細かい部分を充実させることで、より遊び心を伴ったフィクション性が強まり、映画に親しみを覚えるのではないだろうか。

立教大学・池袋キャンパス本館(モリス館、東京都選定歴史的建造物)
エピソード
本作で主演を務めた本木雅弘は、前作『ファンシイダンス』に続く主役起用だったが、坊主頭の僧侶役に続き、まわし姿を披露した役者根性が高く評価されることになった。
また、配役では、間宮正子役は一般からのオーディションでの選考だった。週刊明星、月刊明星との合同企画で募集記事を掲載し、参加を募った。
記事では「映画で本木雅弘と共演出来る」と銘打っていたが、ストーリーや役どころなど具体的な内容は一切記載されていなかった。ただ「極度の肥満体型」「若い女性」のみが応募条件であった。

文庫「シコふんじゃった。 」(集英社文庫)
竹中直人が演じた「青木富夫」の名前は、その後の周防監督作品である「Shall we ダンス?」「それでもボクはやってない」「舞妓はレディ」でも使われ、竹中が演じている。
作品データ
監督 周防正行
脚本 周防正行
出演 本木雅弘、清水美砂、柄本明、竹中直人、田口浩正等
公開 1992年
配給 東宝
時間 105分
90年代初期、大相撲が人気のスポーツとなっていた頃。脂肪の全く無いモックンが相撲に挑戦した映画という事でも印象深い『シコふんじゃった。』。
DVDなどで今見直しても、非常に楽しめると思うので、オススメです。
ちなみに劇中ハイレグのお姉さんが登場し、当時を懐かしむことも可能だ。