カセットテープAXIA(アクシア)×斉藤由貴
斉藤由貴の曲、『AXIA~かなしいことり~』を語るには、まずカセットテープのブランドAXIA(アクシア)との切っても切れない両者の関係について説明しなければならない。

斉藤由貴は1985年2月に『卒業』で歌手デビュー。

AXIA(アクシア)ブランドも1985年に誕生。
徹底したユーザー調査を実施し、ブランド志向がまだ低いカセットテープを使い始めの中高生にターゲットを絞ったAXIAはイメージキャラクターにデビュー間もないアイドル斉藤由貴を起用することを決めた。
記念すべきAXIA初代CMソングに起用されたのは、タイアップを強く意識して「AXIA」の文字をタイトルに含めた『AXIA~かなしいことり~』であった。
この曲はシングルカットされてはいないが、1985年6月21日リリースのデビューアルバムに収録され、そのアルバム名は『AXIA』である。
後にリアレンジされ、12インチシングル「土曜日のタマネギ」のB面に収録されている。
作詞&作曲はメランコリーの女王『銀色夏生』
この『AXIA~かなしいことり~』の作詞・作曲は共に銀色夏生(ぎんいろ なつを)。
編曲は『卒業』と同じく武部聡志。
銀色夏生は、心に雨を降らすメランコリーな詞を書かせたら右に出るものはいない女性詩人である。
男女の視点の違いはあるが、その能力は大沢誉志幸の『そして僕は途方に暮れる』(1984年)の作詞でも存分に発揮されていた。
爽やかなCMと裏腹に惨い歌詞だった『AXIA~かなしいことり~』
明るく軽快なタッチのカセットテープ『AXIA』のテレビCM。
斉藤由貴の清純そうなルックス・癒し系の美声・素朴な歌い方。
メロディだって爽やかだ。
こうした印象もあって、甘酸っぱい恋愛を描いた歌かと思って全編を聴くとその幻想は木端微塵に砕かれる。
歌詞に注目して聴こう『AXIA~かなしいことり~』斉藤由貴
AXIA 〜かなしいことり〜 - 斉藤由貴 - 歌詞 : 歌ネット
AXIA(アクシア)とは、ギリシャ語で『価値あるもの』という意味。
富士フイルム『AXIA』のCMソング、『AXIA~かなしいことり~』。
もちろん、カセットテープ『AXIA』を意識して作られた曲である。
AXIAの文字はタイトルに含みながらも、歌詞には一切登場しない。
AXIA(アクシア)とは、ギリシャ語で『価値あるもの』、『大切なもの』という意味である。
彼氏のいる女の子が二股を掛けていたというこの歌になぜそのタイトルが付いたのか?
男性にとって辛い想い出であってもいずれ『価値あるもの』に変わるという意味なのか。
それとも彼女にとって、彼以外の男性を好きになる経験も『価値あるもの』だったというこのなのか。
銀色夏生が1988年7月に発行した書籍『Go Go Heavenの勇気』のカバーに書いてある言葉を読むと、なんとなく『AXIA』と付けた理由が伝わってくる。
カセットテープAXIAの快進撃を支えた斉藤由貴。
『AXIA~かなしいことり~』から始まった斉藤由貴の富士フイルム『AXIA』のCMキャラクター起用は1987年まで約2年に渡って続いた。
『スケバン刑事』やNHK連続テレビ小説『はね駒』の主演など次々に領域を広げて活躍していく斉藤由貴に後押しされるように、カセットテープ『AXIA』の知名度も向上。
半透明ハーフ・ポップなカラーリングの特徴的なデザインと、低価格を武器に小中学生に高い支持を得て5%前後であった市場シェアは20%台まで飛躍的な成長を遂げた。
もちろん、『AXIA』のCM出演が斉藤由貴の知名度向上・人気定着に貢献した側面も見逃せない。

斉藤由貴 AXIAカセットテープ 広告&ポスター①

斉藤由貴 AXIAカセットテープ 広告&ポスター②

斉藤由貴 AXIAカセットテープ 広告&ポスター③
あらためて聴きたい斉藤由貴の歌
デビュー曲『卒業』の大ヒットがあるものの、女優という印象の方が強い斉藤由貴。
しかし、心に染み渡る癒し系の美声はアイドル戦国時代においても独自の輝きを放っていた。
『AXIA~かなしいことり~』から始まったカセットテープ『AXIA』のCMソング起用を振り返りながら、じっくりと聴きなおしたい。