日本では広くは知られていないプログレのキャメル 半世紀に及ぶ一貫した曲づくりに痺れたファンが確かにいる

日本では広くは知られていないプログレのキャメル 半世紀に及ぶ一貫した曲づくりに痺れたファンが確かにいる

キャメル(Camel) は、1969年に、英国はイングランドのロンドン南西部に位置する郊外都市:ギルフォードの出身者で結成された「ブリュー」というバンドが前身。1973年にレコードデビューしたイギリスのプログレッシブ・ロック・バンド。


「キャメル」というプログレッシブ・ロック集団

キャメルの横顔

数あるプログレグループの中でも叙情派サウンドで知られる。
小説やエピソードなど逸話の世界から着想を得て作品をつくりあげるプログレッシブ・ロック・バンドとしてはユニークであり、異色の存在。
ブルージーなサウンドでありながら心に響くメロウでメロディアスなギターと、情感溢れるキーボードとのコンビネーションが編み物のように絡み、幻想的なサウンドを紡ぎ出す。
キング・クリムゾンではロバート・フィリップがバンド・オーナーであったように、キャメルもアンドリュー・ラティマーが唯一一貫したバンドマスターを務めるセッションバンドといえる。
二人とも、ギブソンのレスポールモデルを愛用しているのは共通しているが、奏法や曲づくりは全く違った。
1969年の前身「ブリュー」は英国にありがちの白系ブルースを基調としたグループサウンドだったが、その後はプログレッシブ・ロック路線に転換していった。

キャメルの音づくり

アンドリュー・ラティマーは、キャメルのサウンドづくりに重要な位置を占める泣きのエレキギターを特徴としているが、彼はマルチプレイヤーで、ギターの他にキーボードとフルートにボーカルまで務める。
ラティマーのボーカルは、囁き呟くような優しいボーカルが特徴で、癒されるような声の響きを持つ。
サックスは、キングクリムゾンにもよく顔出しするメル・コリンズがキャメルの重要なパートを幾度も務めている。
キング・クリムゾンが半世紀の歴史の中で音造りが大きく発展していき、概ね8段階のプロセスに変化していったのに対し、キャメルは同じく約半世紀の間リーダーのアンドリュー・ラティマーが創る幻想的でファンタジックなサウンドが、一本の赤い糸となって貫かれている。
良く言えば叙情の旋律でブレていないが、悪く言えば半世紀経ても変わらない一貫した保守的なサウンドともいえる。

アルバムを持たずして、先行のライブ活動

デビューは、コンサートから

1972年春、バンド名を「キャメル」としてコンサートを敢行。興業的にも一定程度成功し、以後キャメルをバンド名として活動する事となる。
コンサート・デビュー初期は、アンドリュー・ラティマーの哀愁漂うエモーショナルなギターとピーター・バーデンスの軽快なキーボード、アンディ・ウォードの多彩なドラムを軸に、美しいメロディをテクニカルな緊張感のある演奏で聴かせていた。なおラティマーは、クリムゾンのロバート・フィリップ同様、ギブソン・レスポールを使用している。アルバムの発表がなくとも、イギリス国内での演奏活動を行う。

一年に1枚ペースの驚くべきアルバム制作力

ファーストアルバム発表から1970年代前半

1973年にデビューアルバム「キャメル」を発表。前身のバンド:「ブリュー」から3年に渡るライブ活動を経た集大成。秀作で知られる「ネヴァー・レット・ゴー 」 「秘密の女王」を収録。
次いで1974年、アルバム「蜃気楼(Mirage)」を発表。叙情的なメロディーはあるが、ハードロック的な要素も多い曲づくりである。
「Mirage」はバンド初の全英アルバムチャート入りを果たし、23位を記録。以降レコード会社とも契約もあり、毎年のようにアルバムを制作。
さらに1975年には、アメリカの作家ポール・ギャリコの短編小説「スノーグース」を基調にしたコンセプト・アルバム「The Snow Goose」を発表。全曲インストゥルメンタルで構成。

早くも円熟の名作発表が続く1970年代後半

1976年、アルバム「月夜のファンタジア(MOONMADNESS)」を発表。後に、まとめ役的存在であったダグ・ファーガソンを演奏能力の限界を指摘され脱落。
元キャラヴァン(CARAVAN)のリチャード・シンクレアをベースの後任に据え、ゲストメンバーとして、キング・クリムゾンでも活躍するメル・コリンズをサックスで迎えて活動する。
1977年、アルバム「雨のシルエット(Rain Dances)」を発表。
1978年、アルバム「ブレスレス~百億の夜と千億の夢(BREATHLESS)」を発表。このアルバムの「サマー・ライトニング」に注目。ラティマーのギターがむせび泣きながらまるでサンタナのように躍動する。
アルバム収録後、ピーター・バーデンスがラティマーとの軋轢から脱退。後任に元キャラヴァンのヤン・シェルハース(キーボード)、さらにツアーメンバーとしてやはり元キャラヴァンのデイブ・シンクレアをキーボード奏者として参加させた。オリジナルのCAMELより元CARAVANメンバーの方が多くなり、「CARAMEL(キャラメル)」と揶揄される。
1978年、2枚組アルバム「ライブ・ファンタジア」を発表。これは初の公式ライブアルバム。初期からのライブ録音から選んだ楽曲と1977年発売の「雨のシルエット(Rain Dances)」までの曲にロンドン交響楽団と共演し「スノーグース」全曲を演奏したライブ録音を収録。
どのアルバムも秀作であり、数々の名作が織り込まれている。

日本との関わりの中で

初来日は、「ブレスレス」ツアーで

1979年1月に初来日を果たし、「ブレスレス・ツアー-Japan Tour '79」と銘打って、東京、大阪、名古屋で、5公演を開催した。
1979年のツアー後、キャラバン再結成のためデイブ・シンクレア、リチャード・シンクレアが脱退、さらにメル・コリンズも脱退。コリン・バスとキット・ワトキンスが加入。
なお、キャラバンとはキャメルを加入と脱退を繰り返したシンクレア兄弟なを介して、キャメルとのサウンドとは一脈通じるサウンドを持っている。
1979年、アルバム「リモート・ロマンス(I Can See Your House From Here)」を発表。
1980年1月に来日公演(リモート・ロマンス・ツアー-Japan Tour '80)。東京、大阪、名古屋にて、5公演を開催。
1981年、アルバム「ヌードの物語 ~Mr.Oの帰還~(Nude)」を発表。
このアルばむは、太平洋戦争での日本の敗戦を受け入れず、フィリピンのルバング島で29年間投降しなかった、元日本兵の小野田寛郎氏を題材としている。
その小野田氏の当時の生活の模様等を書いた本を、1979年の来日時、アンドリュー・ラティマーが日本のプローモーターより贈られ読み、心が動かされ制作したコンセプトアルバムとなった。
ところで、この「ヌードの物語 ~Mr.Oの帰還~(Nude)」では、女流詩人のスーザン・フーヴァーがコンセプト面で重要な役割を担うようになり、このアルバム以降もキーパーソンとなる。
彼女は詩人であり、音楽関連のライターなどで活動し、後にラティマー夫人となる。

1980年代初頭 盟友の脱退で孤塁を護るラティマー

1981年、ドラムスのアンディ・ウォードが、アルコールと薬物を乱用し体調を崩して脱退。「キャメル」としてのオリジナルメンバーはアンドリュー・ラティマーただ1人となる。
1981年、アルバム「シングル・ファクター(The Single Factor)」を発表。しかしこれは、事実上ゲストプレイヤーを集めて制作したラティマーのソロプロジェクトアルバムとなった。
以後「『キャメル」そのものが、アンドリュー・ラティマーのソロプロジェクトの性質を持つようになる。
1984年、アルバム「スタショナリー・トラベラー(Stationary Traveller)」を発表。これはドイツの東西分裂とベルリンの壁をモチーフとしたコンセプト・アルバムである。
このアルバム以降約5年後に、ベルリンの壁を作る体制は崩壊する。
1984年5月、キャメル結成20周年記念のライブを、イギリス・ロンドンのハマースミス・オデオン劇場で開催。
元メンバーのピーター・バーデンスがゲストとして参加し数曲を共演。(後に、公演の模様を「プレッシャー・ポインツ~キャメル・ライヴ~(Pressure Points)」としてリリース。
ここで、82年から84年の間で契約を消化し、活動休止。アンドリュー・ラティマーは自宅を売却し、活動の拠点をイギリスからアメリカに移し、1年間の休暇を過ごした。アンドリュー・ラティマー自身が「キャメル・プロダクション」を設立。

1990年代の復活へ ただラティマーは病魔に

1991年、復活アルバム、ジョン・スタインベックの小説「怒りの葡萄」をもとにしたコンセプト・アルバム「DUST AND DREAMS」を発表。
1992年 Dust And Dreams Tour(ダスト・アンド・ドリームス・ツアー)を、東京、大阪、名古屋でのライブハウスで公演。
1996年、アルバム「ハーバー・オブ・ティアーズ 港町コーヴの物語(Harbour Of Tears)」を発表。
1997年 Harbour Of Tears Tour(ハーバー・オブ・ティアーズ・ツアー)を、東京、大阪、名古屋でのライブハウスで公演。
1999年、アルバム「ラージャーズ 別れの詩(Rajaz)」を発表。

ラティマーのキャメルも2000年代に突入するが

2000年代以降の活動

2000年 Rajaz Tour(ラージャーズ・ツアー)を、東京、大阪、のライブハウスで公演。
2002年、過去のライブ音源より、アルバム「ノッド・アンド・ウィンク(A Nod And A Wink)」を発表。元メンバーのピーター・バーデンスが肺癌で死去。
2006年、アンドリュー・ラティマーの「キャメル・プロダクション」が、活動拠点をアメリカからイギリスにUターン。
2007年5月、今度はアンドリュー・ラティマー自身が1992年以来、骨髄線維症に罹っていた事を妻のスーザン・フーヴァーが公表。病気の進行状況の悪化により予定していたツアーを中止した。
けれども2007年後半に、アンドリュー・ラティマーは骨髄移植を受け、2008年9月「彼は徐々に回復しており、音楽活動を再開する意欲を示した」と妻のスーザン・フーバーが公表。
2010年には、音楽活動も徐々にではあるが奇跡の復活を果たした。
2013年10月、ロンドンにて「The Snow Goose」を完全再現するライブを行う事が発表される。

キャメルのメンバー構成

初期からの現メンバー

アンドリュー・ラティマー - Guitar, Vocal, Flute (1972-現在)
コリン・バス - Bass, Vocal (1979-1981,1991-現在)

発足時のオリジナルメンバー

ピーター・バーデンス - Keyboards(1972-1978)
アンドリュー・ラティマー - Guitar, Vocal, Flute (1972-現在)
ダグ・ファーガソン - Bass (1972-1977)
アンディ・ウォード - Drums (1972-1982)

過去のメンバー

リチャード・シンクレア - Bass, Vocal(1977-1979)
デイビット・シンクレア - Keyboards , Vocal(1977-1979)
メル・コリンズ - Sax, flute(1977-1979)
ヤン・シェルハース - Keyboards (1972-1978)
キット・ワトキンス - Keyboards, flute (1979-1980)
ミッキー・シモンズ - Keyboards (1992-1996)
トン・スケッペンツェル - Keyboards 
クリス・レインボー - Vocal, Keyboards
トム・ブリズリン - Keyboards

アルバム-ディスコグラフィ

1973年 キャメル・ファースト・アルバム Camel ファースト・アルバム。
1974年 蜃気楼 Mirage
1975年 The Snow Goose ポール・ギャリコの同名の短編小説「スノーグース」を基にしたコンセプト・アルバム。
1976年 月夜のファンタジア Moonmadness 全英15位。
1977年 雨のシルエット Rain Dances 全英20位。
1978年 ブレスレス~百億の夜と千億の夢~ Breathless 全英26位。
1978年 ライブ・ファンタジア A LIVE RECORD キャメル初のライブアルバム、2枚組。LPのC面とD面には、「スノーグース」を、ロイヤル・アルバート・ホールでロンドン交響楽団と共演したライブ演奏を収録している。
1979年 リモート・ロマンス I Can See Your House From Here 全英45位。
1981年 ヌードの物語 ~Mr.Oの帰還~ Nude 終戦後、フィリピンで29年間も戦闘を続けていた小野田寛郎を基にした、2枚目のコンセプト・アルバム。全英34位。
1982年 シングル・ファクター The Single Factor 「キャメル」名義であるが、実質的には、ラティマーが豪華ゲストを集めて制作したソロ・プロジェクト・アルバム。アンソニー・フィリップス(元ジェネシス)、フランシス・モンクマン、サイモン・フィリップス等が参加。全英57位。
1984年 スタショナリー・トラベラー Stationary Traveller ベルリンの壁をテーマにしたコンセプト・アルバム。全英57位。本作に伴うツアー終了後、キャメルは一旦活動を休止。
1984年 プレッシャー・ポインツ~キャメル・ライヴ~ Pressure Points 1984年5月11日 ハマースミス・オデオンでの「キャメル」結成20周年記念のライブを収録。ゲストでピーター・バーデンスが参加し数曲演奏。他にも、メル・コリンズも参加。
1992年 ダスト・アンド・ドリームス 怒りの葡萄 Dust And Dreams 復活作。ジョン・スタインベックの小説「怒りの葡萄」を基にしたコンセプト・アルバム。当時のライヴで完全再現された。
1996年 ハーバー・オブ・ティアーズ 港町コーヴの物語 Harbour Of Tears ラティマーの祖母が体験した一家離散の悲劇を基にしたコンセプト・アルバム。アイルランドの伝統音楽の影響を受けた、美しいメロディが特徴的。
1999年 ラージャーズ 別れの詩 Rajaz
2002年 ノッド・アンド・ウィンク

2016年も来日コンサートを行なった

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