「おしりだって洗ってほしい」TOTOウォシュレットを爆発的なヒットに導いた戸川純のCM

「おしりだって洗ってほしい」TOTOウォシュレットを爆発的なヒットに導いた戸川純のCM

1982年、不思議系キャラクターの戸川純が「おしりだって、洗ってほしい。」と語るTOTOのCMは大きな衝撃を視聴者に与えた。 温水洗浄便座の普及に絶大な貢献をもたらした歴史的CMについて当時の動画や誕生秘話を紹介。


1982年、お茶の間を騒がせたCM「おしりだって、洗ってほしい。」

トイレ、洗面器などの衛生設備メーカーTOTOは、1982年9月。
温水洗浄便座「ウォシュレット」のテレビCMを放送した。

不思議系キャラクターの戸川純が「おしりだって、洗ってほしい。」と語る姿は大きな衝撃を視聴者に与えた。
いまや生活に無くてはならないものになった温水洗浄便座を普及させる要因となった歴史的なCMについて振り返る。

『コピーライターの神様』仲畑貴志が手掛けた珠玉のキャッチコピー

あまりにも有名になったこの「おしりだって、洗ってほしい。」のコピーを考えたのは、『コピーライターの神様』と呼ばれる仲畑貴志。

1980年代「コピーライターブーム」の時代から第一線を走り続け、50年のクリエイター人生で4000点以上の作品を世に送り出した。
代表作は「ココロも満タンに」(コスモ石油)、「目のつけどころが、シャープでしょ」など。

仲畑貴志(なかはた たかし)

1981年12月、TOTOのウォシュレット開発チームはソニーのウォークマンや、サントリーのウイスキーなど、数々の名作コピーを手がけていたコピーライター仲畑貴志のもとを訪れる。

しかし、コピーを依頼された仲畑は「ウォシュレットの商品価値がピンときません」とコメント。
そこで立ち上がったのが、トイレで一番長い時間実験をしてきた若手技術者の池永だった。

池永は青い絵の具を自分の手のひらに塗り付け、「紙で拭いてください」と仲畑にに言った。
仲畑は紙で絵の具を拭いたが、きれいには落ちなかった。
「お尻だって同じです。水で洗えばきれいになります。これは常識への挑戦なんです」
この言葉に動かされた仲畑氏は承諾した。
青い絵の具を使ったテレビCMはこのときのエピソードがそのままつながっている。

当時、下品なイメージを持たれる『おしり』というワードは宣伝にはタブーであった。
だが、仲畑はあえてこのタブーを犯して「おしりだって、洗ってほしい。」とのキャッチコピーを作り上げる。
そして、TOTOには「これは、ソニーのウォークマンやニコンのカメラ、そうした商品に負けない技術です。堂々と勝負しましょう」と説得したのだった。

キャッチコピーの魅力を引きだした戸川純のインパクト。

「おしりだって、洗ってほしい。」のキャッチコピーはたしかに素晴らしい。
だが、たった15秒や30秒のテレビCMでその言葉を視聴者に印象付けるのは難しかしく、短いフレーズでも画面に注目させる「何か」が必要であった。

そこで、選ばれたのが不思議ちゃん的なキャラクターの戸川純。
戸川は、その特徴的なハスキーボイスと独特の間で、言葉を発するだけで注目を集める何とも言えない個性を持っていた。

1961年3月31日、東京生まれ。
個性的なキャラクターでテレビ、映画、CMなどで活躍。 
1980年に元ハルメンズの上野耕路とレトロ・ユニット、ゲルニカを結成、1984年にアルバム『玉姫様』でソロ・デビュー。
また、のちにバンド、ヤプーズとしても活躍(活動初期は戸川純とヤプーズ名義)。
変幻自在のヴォーカルとエキセントリックなパフォーマンス、独特の世界観で人気を集め、その後に与えた影響は計り知れない。

戸川純(とがわ じゅん)

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クレームが殺到した食事の時間へのCM放送

こうして生まれたウォシュレットのテレビCM。
放送時間はあえて夜7時過ぎ、まさに一家団欒で晩御飯を食べている時間帯に絞った。

そこで流れる「おしりだって、洗ってほしい。」のCM。
直後からTOTO宣伝課の電話が一斉に鳴り始めた。

「飯を食っている時間にお尻だ便所だとは何だ!」という激しい抗議であった。
宣伝の責任者・岩塚は自ら電話を代わり、「皆さんは今、食事をされています。それと同じくらい、排泄も尊い行為です。暮らしを快適にする商品です。自信と誇りを持って作っています。」と懸命に説明した。
部下たちもそれに倣い、次から次へと掛かってくる抗議の電話に応対し続けた。
すると、一月後にはクレームの電話はゼロになったという。

「お尻は拭くものではなく、洗うもの。」と意識を変換させたウォシュレット。

お尻を洗うと言う画期的なコンセプトは、斬新なCMによって一気に日本中に広がり、ウォシュレットは瞬く間に大ヒット商品になっていった。

その後も、TOTOは積極的な宣伝活動を行い、
「人の、おしりを洗いたい。」
「ナニを隠そう、おしりもきれい。」
「やっぱり、おしりは締まり屋さん。」
「好きな人のもにおうから。」
などのコピーを仲畑貴志が続々生み出しては、戸川純がテレビCMで広げていく。

TOTOウォシュレットの新聞・雑誌広告

おしりだって、洗ってほしい。

紙じゃ、きれににならないものね。

実はINAX(現LIXIL)が先行していた温水洗浄便座

「ウォシュレット」は温水洗浄便座の代名詞のように使われることが多いが、ソニーのウォークマン同様にウォシュレットはTOTOの登録商標である。

この秀逸な「ウォシュレット」のネーミングは、当時TOTO宣伝課長だった重岡洋昭によるもの。
「これからはお尻を洗う時代です。さあ洗いましょう」と呼びかける「レッツ・ウォッシュ」を逆さにしたものであったという。

「ウォシュレット」というネーミングの浸透によって温水洗浄便座の元祖はTOTOであると認識している人も多い。
しかし、実は国内で温水洗浄便座を初めて開発・販売したのはTOTOではなくINAX。
INAXは1967年に温水洗浄便座一体型便器の「サニタリーナ61」を発売、1976年にはシートタイプの「サニタリーナF1」を発売していた。
しかし、「お尻は拭くもの」という概念を覆すことができずに苦戦していた。

そこに参入したTOTOは、『コピーライターの神様』仲畑貴志と、『元祖・不思議ちゃん』戸川純によるTOTOのテレビCMによって、『温水洗浄便座=ウォシュレット』というイメージを瞬く間に構築した。

INAXは10年以上のアドバンテージがありながら、TOTO「ウォシュレット」に抜き去られ、「シャワートイレ」の名称で挽回を図ったが今日までその高き牙城を崩せていない。

最高のトイレ品質と、最高のトイレ宣伝で世界を獲れ!

ウォシュレットの果敢な宣伝によって、広がった温水洗浄便座。
なんと一般世帯での普及率は81.2%である。
(2014年 出典:内閣府 消費動向調査)

日本のトイレはこうして、その機能性や品質から世界一と言われるようになった。
温水洗浄便座を日本で経験し、病みつきになってしまった訪日外国人も多い。

世界中では水洗式のトイレ自体も先進国のわずかな国しか普及していなく、温水洗浄便座の認知度はかなり低いという。

日本の温水洗浄便座が世界を席巻するためには、機能や品質だけでは難しい。
やはり、効果的な宣伝によって「お尻は洗うもの」という概念を刷り込んでいく必要がある。
そして、TOTOが日本市場の開拓に成功したこの「おしりだって、洗ってほしい。」のCMに大きなヒントが隠されているのではないか。

いつか世界中で日本の温水洗浄便座が使われるようになったとき、その要因の一つとして改めてこのテレビCMが見直される日が来るのかもしれない。

世界一のトイレ ウォシュレット開発物語 (朝日新書) : 林 良祐

ウォシュレット、暖房便座、排泄の音を消す「音姫」、脱臭装置に自動開閉のふた、節水機能。 携帯電話と同じように日本独自にガラパゴス的に開発しながら、なぜ日本のトイレは世界で受け入れられるようになったのか。 知られざる開発秘話と世界戦略成功の秘訣をTOTOウォシュレットテクノ社長が語る。

プロジェクトX 挑戦者たち 第VI期 革命トイレ 市場を制す[Kindle版]

NHK『プロジェクトX〜挑戦者たち』 古来「ご不浄」と呼ばれ、不潔の代名詞だったトイレのイメージを、「快適」で「清潔」な空間へと変えた革命的な製品「温水洗浄便座」。 その開発の影には、ひたむきにトイレと向き合い続けた技術者たちの姿があった。 数々の困難を克服し、「不潔なトイレ」のイメージを覆した「トイレ革命」を成し遂げた男たちの逆転のドラマを描く。

トイレの歴史に興味を持った方は「TOTOミュージアム」へ

日本が世界に誇るトイレ等の衛生器具メーカー「TOTO」の軌跡を学べる施設。
創立100周年記念事業の一環として開設された”水まわりの文化や歴史とともに、TOTOのものづくりへの想い、製品の進化を学べる。

福岡県北九州市小倉北区中島2-1-1

TOTOミュージアム

TOTOミュージアム | TOTO

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CM トイレ 戸川純 1982年

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