80年代、日本映画界を席巻した薬師丸ひろ子の初主演作『翔んだカップル』
80年代、角川春樹がメディアミックスで数々のヒット映画を生み出し、
そのブームの先頭に立っていたのが、秘蔵っ子、薬師丸ひろ子だ。
もう、この神秘さ、清廉さはほかのアイドル歌手や女優、
タレントなどの追随をまったく許さなかったといえる。
あまりにも個性的であまりにも特別なオーラをまとっていたために、
アンチもかなりいたはずだ。
それでも、彼女はつぶれることなく、いま女優として確固たる地位を築いている。
それはファンとしてはとても喜ばしいことだ。
そして、この『翔んだカップル』はそんな薬師丸ひろ子の初主演映画なのだ(『セーラー服と機関銃』ではないのだ!!)。
当初、薬師丸ひろ子は『翔んだカップル』への主演を固辞していた!?
『翔んだカップル』は、鶴見辰吾と薬師丸ひろ子の初主演映画として、1980年東宝系で全国劇場公開された青春映画。相米慎二の初監督作品でもある。1980年度のキネマ旬報ベストテンでは日本映画ベストテン第11位、読者選出第9位となっている。興行的にも目標とする数字はクリアし、映画としての評価も良かったとか。とにかく、薬師丸ひろ子を主演させただけでも、価値のある映画である。なお、1982年4月にディレクターズ・カット版に当たる『翔んだカップル オリジナル版』が公開された。
エピソード ~薬師丸ひろ子出演までの道のり~
あらすじ
翔んだカップル | Movie Walker
キャスト&スタッフ
田代勇介:鶴見辰吾 山葉圭:薬師丸ひろ子 中山わたる:尾美としのり
杉村秋美:石原真理子 絵里:前村麻由美 和田先生:円広志
織田隼人:西田浩 サル:吉見秀幸 キツネ:酒井康明 タヌキ:斉藤建夫
榊:岡竜也 静子:長谷川純代 マリ:石川ルミ 教頭:三谷昇
スナックジョーカーのマスター:柳生博 文化祭のバンド:H2O
星田:真田広之 志津:原田美枝子
監督 : 相米慎二 製作 : 多賀英典 プロデューサー : 伊地智啓、金田晴夫
脚本 : 丸山昇一 撮影 : 水野尾信正 美術 : 徳田博 編集 : 井上治
音楽 : 小林泉美 助監督 : 渡辺寿
主題歌 「BOYS」ルイス 挿入歌 「ローレライ」H2O
“ 最後の映画女優” そして稀有な個性派シンガー、薬師丸ひろ子
薬師丸ひろ子は『野生の照明』でデビューする。演技経験がなかったとは思えない存在感は、その後の活躍を予感させるのに十分であった。オーディションで彼女を強く推したのは角川春樹だという。日本映画の新たな時代を切り開いた怪物角川春樹の人を見る目はやはり確かだったということだろう。
その後、薬師丸ひろ子は主演映画『セーラー服と機関銃』で社会現象とでもいうべき、薬師丸ひろ子ブームを巻き起こす。まさに時代の寵児だったといえる。仕事と学業を両立するその姿は、彼女の真面目で清廉なパーソナリティを証明するものだったし、その中でもしっかりとキャリアを積んでいったことは大きく評価するべきだろう。
その後、結婚、離婚を経験し、女優という仕事に対する迷いなどを乗り越えて、『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得。十分な経験と実績を積み重ね、現在があるのだ。デビュー後の映画中心の活動スタイルから、「最後の映画女優」などと呼ばれることもあった。
また、歌手としての評価も非常に高い。高い歌唱力と個性的で美しい声質は、デビュー当時から今日まで変わることはない。というよりも、さらに磨きがかかっている。ただ、表現力が豊かになった現在と、透明感を前面に押し出したような抑揚のない80年代の歌い方、どちらにも熱烈な支持者がいる。
『野生の証明』(1978年)
薬師丸ひろ子が語る高倉健との出会い
薬師丸ひろ子、「野性の証明」高倉健との思い出語る - 映画ナタリー