映画史のなかに深く刻まれながらも、いま、私たちの前から劇場という空間を通じて姿を消そうとしている至宝の作品群があります。近年、立て続けに進められてきた60年代から80年代のハリウッドメジャースタジオ作品のリバイバル公開。そのなかでも、巨匠たちが国家や文明の闇を容赦なく抉り出した極めて先鋭的な5作品の日本国内上映権が、いよいよ終了間際であることが発覚しました。
これを受けて、東京・目黒シネマにて急遽<緊急集中最終上映>の開催が決定しました。対象となるのは、『ソイレント・グリーン』、『クルージング』、『バッドランズ』、『殺しの分け前/ポイント・ブランク』、『砂丘』の5作品です。8月24日(月)、8月27日(木)、8月29日(土)の3日間、すべての日程において全5作品が一挙に上映されるという、まさに映画ファンにとってまたとない最後の機会となります。
『バッドランズ』
出演:マーティン・シーン シシー・スペイセク ウォーレン・オーツ ラモン・ビエリ
脚本・製作・監督:テレンス・マリック 製作総指揮:エドワード・R・プレスマン
撮影:ブライアン・プロビン、タク・フジモト、ステヴァン・ラーナー 美術監督:ジャック・フィスク
1973年|アメリカ映画|94分|DCP|原題:BADLANDS
(C) 2025 WBEI
表現規範を破壊し、アメリカの闇を暴いた巨匠たち
今回のラインナップを手掛けた監督の名前を見るだけでも、いかにこの5作品が映画史において特異で重要な存在であるかが分かります。リチャード・フライシャー、ウィリアム・フリードキン、テレンス・マリック、ジョン・ブアマン、ミケランジェロ・アントニオーニ。彼らはスタジオ主導の金儲け優先の製品的映画とは一線を画し、自らの表現者としての覚悟をスクリーンに焼き付けた真の巨匠たちです。
初公開当時はMGMやユナイテッド・アーティスツ、ワーナー・ブラザースといったハリウッドメジャーが配給を手掛けたこれらの作品群は、アメリカン・ニューシネマの起点からその崩壊へと至る激動の軌跡を完全に網羅しています。観客に安易に媚びることなく、人間の狂気や文明の終焉を突きつけた硬派なドラマは、現代の映画シーンにおいても色褪せることのない強烈な輝きを放ち続けています。
『クルージング』
出演アル・パチーノ ポール・ソルヴィーノ カレン・アレン
脚本・監督ウィリアム・フリードキン 製作ジェリー・ワイントローブ 原作ジェラルド・ウォーカー 音楽ジャック・ニッチェ
1980年|アメリカ映画|102分|DCP|原題:WILLIAM FRIEDKIN‘S CRUISING
(C) 2024 WBEI
ニューシネマの起点から極限のディストピアまで
時系列の起点となるのは、英国の巨匠ジョン・ブアマンがハリウッドデビュー作として放った『殺しの分け前/ポイント・ブランク』です。時空間を断片化し、鮮烈な色彩で夢と記憶を交錯させた本作は、後の名だたるクリエイターたちに絶大な影響を与えたニューシネマの衝撃作です。また、イタリアの巨匠アントニオーニがメジャーの莫大な予算でアメリカの神話を解体した『砂丘』は、自由を謳歌する文明の裏側に潜むディストピアを冷徹に予見していました。
さらに、娯楽の名匠リチャード・フライシャーが人口爆発と環境破壊の末路を描いた『ソイレント・グリーン』は、50年後の現代において現実となった恐怖の未来予想図を突きつけます。テレンス・マリックの長編デビュー作にして美しくも残酷な逃避行を描いた『バッドランズ』や、NYのアンダーグラウンドを舞台に男の精神の闇に迫ったウィリアム・フリードキン監督の『クルージング』など、いずれの作品も一筋縄ではいかない強烈な問題作です。
『ソイレント・グリーン《デジタル・リマスター版》』
出演:チャールトン・ヘストン、リー・テイラー・ヤング、エドワード・G・ロビンソン、ジョセフ・コットン、チャック・コナーズ
監督:リチャード・フライシャー 原作:ハリイ・ハリスン「人間がいっぱい」
製作:ウォルター・セルツァー、ラッセル・サッチャー
音楽:フレッド・マイロー
1973年|アメリカ映画|97分|DCP|原題:SOYLENT GREEN
(C) 2024 WBEI
劇場で本物の作品と向き合う最後のチャンス
過剰なサービスや消費されるための娯楽に満ちた現代において、これらの映画は観る者の感性を大きく揺さぶり、思考を強制するほどの強いエネルギーを持っています。「作り手の意思が完璧に刻まれた本物の<作品>」を、大スクリーンと音響が揃った映画館で体験できる機会は、今回を逃せば二度と訪れないかもしれません。
上映権の消滅という切迫した状況のなかで実現した今回の目黒シネマでの集中上映。消費社会の中で麻痺してしまった感性を取り戻し、巨匠たちが対峙したアメリカの闇を全身で受け止めるために、ぜひ劇場へと足を運んでみてください。
『殺しの分け前/ポイント・ブランク』
出演:リー・マーヴィンアンジー・ディキンソン ジョン・ヴァーノン シャロン・アッカー キーナン・ウィン
監督:ジョン・ブアマン製作:ジャド・バーナード ロバート・チャートフ
脚本:アレクサンダー・ジェイコブス、デイヴィッド・ニューハウス、レイフ・ニューハウス
原作「悪党パーカー/人狩り」by リチャード・スターク 撮影監督:フィリップ・H・ラスロップ
1967年|アメリカ映画|92分|DCP|原題:POINT BLANK
(C) 2025 WBEI
【開催概要】
企画名: 目黒シネマ<緊急集中最終上映>
開催日程: 2026年8月24日(月)、8月27日(木)、8月29日(土)の3日間
会場: 目黒シネマ
上映作品:
『ソイレント・グリーン』(1973年/監督:リチャード・フライシャー)
『クルージング』(1980年/監督:ウィリアム・フリードキン)
『バッドランズ』(1973年/監督:テレンス・マリック)
『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(1967年/監督:ジョン・ブアマン)
『砂丘』(1970年/監督:ミケランジェロ・アントニオーニ)
<上映スケジュール>
『ソイレント・グリーン』
8/24(月)9:30
8/27(木)16:30
8/29(土)11:15
『クルージング』
8/24(月)13:10
8/27(木)9:30
8/29(土)21:05
『バッドランズ』
8/24(月)21:15
8/27(木)10:55
8/29(土)13:05
『殺しの分け前/ポイント・ブランク』
8/24(月)11:20
8/27(木)14:45
8/29(土)9:30
『砂丘』
8/24(月)19:10
8/27(木)12:40
8/29(土)16:50