長谷川和彦という監督を知っていますか?!

長谷川和彦という監督を知っていますか?!

僅か2本の監督作のみで伝説的映画監督と化している長谷川和彦。それは何故か?言うまでもなく70年代に制作されたこの2作品があまりにも素晴らしいからにほかなりません。未だ熱烈な支持者を持っているのもそのためです。


長谷川和彦を知ってますか?「いや、知らん」と即答される感がありますが、まぁ、確かにね。一般的に映画は好きでも製作スタッフにはあまり興味がない人って多いですもんね。しかも携わった作品が少ないとなれば、映画ファンであっても長谷川和彦を知る機会は限られる。結果、無名のような扱いを受けてしまうことになるかと思います。
しかし、長谷川和彦を知っていて損はない!彼が関わった作品は数こそ少ないながら、どれもこれもバツグンの面白さなんですよ。

濡れた荒野を走れ

シナリオライターとして注目されたのは、1973年の日活ロマンポルノ「濡れた荒野を走れ」です。ちょっと解説を覗いてみましょう!

どうです?面白そうでしょう?まぁ、日活ロマンポルノってことでエロシーンを期待した方には残念かもしれませんが、普通に映画として見ると文句なしに面白いです。

続いて1974年に公開された「青春の蹉跌」がこれまた素晴らしかった。素晴らしかったのですが、当時の日本映画はどん底だ。萩原健一主演ということもあり注目されたのですが、どんなに素晴らしい映画であってもなかなか大ヒットしなかったのです。
時代は映画からテレビに移ってましたからね。で、長谷川和彦もテレビの仕事を手掛けます。それが大いに話題となったんですよ。

悪魔のようなあいつ

日本の映画界に大きな影響を与えた長谷川和彦。その長谷川和彦が一般的に知られるようになったのはテレビドラマ「悪魔のようなあいつ」です。いや、そうではないか。「悪魔のようなあいつ」は、お茶の間でも知られるようになった長谷川和彦の作品というべきですね。知られたのは作品で、長谷川和彦の名はまだこの時点では一般的には浸透してなかったように思います。
では、どの時点で長谷川和彦の名が浸透したのかといえば、今でも一般的には浸透していないような気がしないでもありません。。。しかしそれでも長谷川和彦が日本の映画界に与えた影響はデカイのです!この作品はその始まりといってよいでしょう。

まぁ、長谷川和彦を知っていようといまいと話題となっただけあって「悪魔のようなあいつ」はとにかく面白いです。

原作:阿久悠、上村一夫
監督:久世光彦
制作:TBS
放送局:TBS系
放送期間:1975年6月6日~1975年9月26日
話数:全17話

悪魔のようなあいつ

そもそもプロデューサーだの監督だのシナリオライターだのといった製作スタッフって一般的に名前はほんと知られていないわけですから長谷川和彦の名を知らなくても、そりゃ普通ってもんでしょう。問題なしです。問題はありませんが、知っておいて損はしない存在であることは確かです。

で、この「悪魔のようなあいつ」ですが、主演が沢田研二で、劇中で歌われる「時の過ぎゆくままに」が大ヒットしました。それだけでも話題性は十分ですが、沢田研二以外に、若山富三郎、藤竜也、荒木一郎、安田道代に篠ヒロコといった一癖も二癖もある実力者が脇を固め、当時飛ぶ鳥を落とす勢いの久世光彦が監督を務めていますからね。間違いなく一級の作品というわけです。

ところで「悪魔のようなあいつ」で長谷川和彦は何をしているのかと言えば、彼はこの作品でも脚本を担当しています。「濡れた荒野を走れ」も「青春の蹉跌」も脚本担当です。
では、長谷川和彦は脚本家なのか?と言われると否定も肯定もしにくいのですよ、実は。
長谷川和彦は監督。それも映画監督!で、いいと思うのですが、いかんせん監督作品は僅かに2作品。シナリオライターとしての仕事の方が多いときてるところが否定も肯定もできない理由です。
それなのになぜ映画監督なのか?と言われれば、その2作品があまりにも素晴らしいからなんですよね。

青春の殺人者

待望の監督デビューは1976年。作品は中上健次原作の「蛇淫」を脚色した「青春の殺人者」。主演は若き水谷豊。ヒロインには原田美枝子だ。
それまでにも監督の話はいくつかあったようですが、ようやくチャンスが巡ってきたわけですね。長谷川和彦は30歳。新鋭映画監督の誕生です。

監督:長谷川和彦
脚本:田村孟
原作:中上健次
製作:今村昌平、大塚和
製作総指揮:多賀祥介
出演者:水谷豊、原田美枝子
音楽:ゴダイゴ
撮影:鈴木達夫
編集:山地早智子
製作会社:今村プロ、綜映社、ATG
配給:ATG
公開:1976年10月23日
上映時間:132分

青春の殺人者

当時は長谷川和彦が映画を撮るということが話題とまるほど注目されていました。業界や映画ファンの期待が大きかった「青春の殺人者」は裏切ることなく各方面から、高い評価を受けキネマ旬報ベスト・ワンに選出されています。因みに新人監督の第1回作品がベスト・ワンになるのは異例のことだったそうですよ。

注目を集め評価も高かった「青春の殺人者」ですが、製作費は僅か3500万円。1976年のこととはいえ、厳しい。しかも長谷川和彦はそのうちの1500万円は自腹を切ったといいます。封切上映は日本中で4館だけだったそうですから仕方のない事なのでしょうけど…
当然のように長谷川和彦はノーギャラ、ついでに水谷豊もノーギャラだったのだそうです。水谷豊はテレビドラマ「傷だらけの天使」で一躍人気者となっていた時期ですよ。これってやっぱり役者魂!というやつなのでしょうね。水谷豊もこの作品に情熱を注いでいたということでしょう。他の出演者、スタッフも含め、この情熱が「青春の殺人者」を面白くしていることは間違いありません。

太陽を盗んだ男

公開当初から評価の高かったで「青春の殺人者」ではありますが、一般的には徐々に評価されていったように思います。それはひとつに配給がATGだからですね。良質な作品を生み出しているATGとはいえ、やはり規模が小さい。仕方のないこととはいえ、なかなか浸透しないです。
その点、監督2作目となる「太陽を盗んだ男」は豪華です。なんせ東宝ですからね、沢田研二と菅原文太のダブル主演ときたもんだ。
上映館も全国157館。さすが東宝です。
そしてさすが東宝なのが製作費。実に3億7000万円。「青春の殺人者」とは雲泥の差ですね。最終的には3億9千万円だったそうですが、それでもスタート時から1億7000万円足りないと言われていたそうですよ。

監督:長谷川和彦
脚本:長谷川和彦、レナード・シュレイダー
原作:レナード・シュレイダー
製作:山本又一朗
製作総指揮:伊地智啓
出演者:沢田研二、菅原文太
音楽	作曲:井上堯之、編曲:星勝
撮影:鈴木達夫
編集:鈴木晄
製作会社:キティ・フィルム
配給:東宝
公開:1979年10月6日
上映時間:147分

太陽を盗んだ男

1979年度キネマ旬報 日本映画ベスト・テン第2位。同読者選出日本映画では第1位。
1979年度毎日映画コンクール監督賞。
1979年度報知映画賞 作品賞、主演男優賞(沢田研二)。
映画芸術誌ベストテン第3位。
第1回ヨコハマ映画祭 作品賞、監督賞。
第3回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞(菅原文太)とまぁ、様々な賞を獲得し、「青春の殺人者」同様高い評価を獲得しました。

が、鳴り物入りで封切られたものの、なんと制作会社は再起不能なのではないかと言われるほどに興行的には成功しませんでした。
それでも公開後口づてに評判が広まり、今日では更に評価を高めている作品です。
近年でも2009年度キネマ旬報 オールタイムベスト映画遺産200(日本映画篇)で第7位。しかも2018年のキネマ旬報<1970年代日本映画ベスト・テン>では堂々の第1位に輝いています。
更には2020年、英国映画協会選出による1925~2019年の優れた日本映画95本にも選ばれました。

立て続けに優れた作品を作り上げたにも関わらず「太陽を盗んだ男」以降、長谷川和彦は映画をまったく撮っていません。理由は諸説あるようですが残念としか言いようがありませんね。
その代わりと言ってはなんですが、映画製作や後進の育成など裏方として映画業界を支えてくれています。
映画関係者のみならず、多くの文化人などからリスペクトされている長谷川和彦。なんとかまた映画を撮ってもらいたい!というのは、ファンの高望みなんでしょうかねぇ。

関連する投稿


俳優・水谷豊の真実に迫る著作『YUTAKA MIZUTANI』発売!監督としての人生と秘められた過去を解禁

俳優・水谷豊の真実に迫る著作『YUTAKA MIZUTANI』発売!監督としての人生と秘められた過去を解禁

俳優・水谷豊の著作『YUTAKA MIZUTANI』が発売される。「傷だらけの天使」や「熱中時代」、そして「相棒」と、各時代でトップを走り続ける彼が、自らの監督作品を通じて「誰も知らない本当の水谷豊」を明かす。サイン本お渡し会や、代表作『青春の殺人者』の50周年記念Tシャツ発売など、ファン必見の情報が満載だ。


【6月生まれの有名人】生年月日が全く同じ!同じ日に生まれた意外な美女と・・・!?

【6月生まれの有名人】生年月日が全く同じ!同じ日に生まれた意外な美女と・・・!?

メディアでは報じられることの少ない有名人の生年月日。実は、同じ生年月日の有名人は数多くいるものの、巷ではあまり知られていないの実情です。今回は、1950年頃〜1980年代の6月生まれの有名人を対象に、生年月日が全く同じ有名人の組み合わせをご紹介します。


【1975年】50年前に一番売れた曲は『昭和・・・』オリコン年間トップ10を振り返る!

【1975年】50年前に一番売れた曲は『昭和・・・』オリコン年間トップ10を振り返る!

今から50年前の1975年、歌謡界ではどのような曲がヒットしたのでしょうか。今回は、オリコンの年間シングルチャートトップ10を紹介し、ミドルエッジ世代の方にとって、恐らく聴きなじみがあるであろう10曲を振り返ります。第1位は、・・・・あのデュオの曲です。


没後10年!「仁義なき戦い」菅原文太の傑作評伝『飢餓俳優 菅原文太伝』が好評発売中!!

没後10年!「仁義なき戦い」菅原文太の傑作評伝『飢餓俳優 菅原文太伝』が好評発売中!!

新潮社より、日本中を熱狂させた深作欣二監督映画『仁義なき戦い』で主演を務めた俳優・菅原文太の素顔に迫る書籍『飢餓俳優 菅原文太伝』が現在好評発売中となっています。価格は825円(税込)。


岸部シロー  不死鳥は自分の身を焼いた灰の中から蘇る!!

岸部シロー 不死鳥は自分の身を焼いた灰の中から蘇る!!

ザ・レジェンド元金持ち! 伝説的バンド「ザ・タイガース」のギタリスト!! 「西遊記」の沙悟!!! 「ルックルックこんにちは」の司会者!!! 巨額の借金と暴かれた真の顔!!!!


最新の投稿


斉藤由貴、バースデーを祝う初フルオーケストラツアー決定!武部聡志プロデュースで9月から3都市開催

斉藤由貴、バースデーを祝う初フルオーケストラツアー決定!武部聡志プロデュースで9月から3都市開催

ビルボードジャパンは、斉藤由貴初となるフルオーケストラコンサートツアーを2026年9月より開催する。名匠・武部聡志プロデュースのもと、彼女のバースデーアニバーサリーを祝う特別なステージを展開。兵庫、東京、神奈川の3都市のプレミアムな音楽ホールを巡り、時代を超えて愛される名曲群を鮮やかに届ける。


世界が熱狂!杏里の北米ツアー最終公演レポが到着、シティポップがリアルなカルチャーとして根付いた夜

世界が熱狂!杏里の北米ツアー最終公演レポが到着、シティポップがリアルなカルチャーとして根付いた夜

アーティスト・杏里の北米ツアー「ANRI LIVE 2026 U.S.A Timely!!」の最終公演が、2026年5月21日にロスアンゼルスの名門劇場「ザ・ウィルターン」で開催された。チケットは早々にソールドアウト。海外の熱いファン2300名が詰めかけ、日本語の大合唱が巻き起こるなど、感動の一夜となった。


ハッピーターンが初のアニバーサリーブック化!宝島社からパッケージ再現ポーチ付きで全国発売

ハッピーターンが初のアニバーサリーブック化!宝島社からパッケージ再現ポーチ付きで全国発売

株式会社宝島社は、亀田製菓のロングセラースナック「ハッピーターン」を祝し、初となる公式アニバーサリーブックを全国発売します。特別付録には、おなじみのパッケージデザインをモチーフにした、チャーム付きのここでしか手に入らないユニークな限定リアルポーチが登場します。


ガリガリ君45周年×ポケモン30周年!限定パッケージの「大人なガリガリ君もぎたてぶどう」が発売へ

ガリガリ君45周年×ポケモン30周年!限定パッケージの「大人なガリガリ君もぎたてぶどう」が発売へ

赤城乳業株式会社は、ガリガリ君45周年とポケモン30周年を記念し、限定パッケージの「大人なガリガリ君もぎたてぶどう(6本入り)」を全国発売します。あわせて、抽選で合計1,000名様に「ポケモン・ガリガリ君冒険グッズ」が当たる特別なタイアップキャンペーンも同時開催いたします。


開園30周年のナンジャタウンが今夏大幅リニューアル!「お祭り」をテーマに新アトラクションが登場

開園30周年のナンジャタウンが今夏大幅リニューアル!「お祭り」をテーマに新アトラクションが登場

株式会社バンダイナムコエクスペリエンスは、屋内型テーマパーク「NAMJATOWN」が2026年7月6日に開園30周年を迎えることを記念し、今夏に大幅リニューアルを実施します。ファンへの恩返しとして「お祭り」をテーマに掲げ、複数の新アトラクションを導入します。