下剋上!氷上の芸術だった女子フュギュアスケートをスポーツに変えた伊藤みどり

下剋上!氷上の芸術だった女子フュギュアスケートをスポーツに変えた伊藤みどり

2022年冬季北京オリンピックのフュギュアスケート女子シングルでは、ロシアの3人娘が4回転を難なく跳び女子も4回転時代に入ったことを印象付けました。現在は高難度ジャンプを飛ぶ女子選手も増えましたが、1980年代後半までの女子シングルは技術よりも芸術性や美しさが重視されていました。今回はそんな1980年代後半~1990年前半に起こったフュギュアスケート界の革命とも呼ぶべき変化をご紹介します。


カルガリーオリンピックの女王カタリナ・ビット

1984年のサラエボオリンピックの出場権を逃した伊藤みどりさんが、初めて国際大会で頭角を現したのは1988年のカルガリーオリンピックでした。

カルガリーオリンピックの女子シングルスで金メダルを獲得したのは、旧東ドイツのカタリナ・ビットさんです。
生年月日:1965年12月3日
出身地:旧東ドイツ・シュターケン
身長:165センチ

長身で長い手足を活かした美しい演技が、多くの人々を魅了しました。
オリンピック優勝2回(1984年サラエボ・1988年カルガリー)
世界選手権優勝4回
欧州選手権優勝6回
という輝かしい経歴を誇り、カルガリーオリンピックの後のブダベストの世界選手権で優勝した後、引退しました。

引退後プロに転向したカタリナ・ビットさんでしたが、プロの出場が解禁された1994年のリレハンメルで再度オリンピックに出場します。

テクニカルプログラム(現在はショートプログラム)で、かろうじて6位に入り翌日のフリースケーティングの最終滑走者に残りましたが、ジャンプのミスが響いて7位に終わりました。

ただ当時1984年に金メダルを獲得した思い出の地であるサラエボが、ユーゴスラビア紛争で破壊されたことを悲しみ、反戦歌「花はどこへ行った」を選び情感あふれる演技を披露しています。
さすがに元女王の表現力で、観客の大喝采を受けています。

カタリーナ・ビットさんは女子で初めて3フリップに成功していて、技術力にも定評がありました。

その後のカタリナ・ビットさんは、1995年に世界フィギュアスケート殿堂入りを果たしました。
その後は映画に出演したり、「PLAYBOY」でヌードを披露するなど芸能活動も行っています。
小説も出版するなど多才な才能を発揮し、2008年にプロスケーターを引退しました。

アルベールベルオリンピック銀メダリスト伊藤みどり

女子で史上初の3アクセル成功者となった伊藤みどりさんのプロフィールです。
生年月日:1969年8月13日
出身地:愛知県名古屋市
身長:145センチ

1981年に女子で初めて3フリップに成功したカタリナ・ビットさん。
トリプルジャンプの難易度は、基礎点順にこのように考えられています。
1.アクセル(8.2)
2.ルッツ(6.0)
3.フリップ(5.5)
4.ループ(5.0)
5.サルコゥ(4.5)
6.トゥループ(4.0)
当時は採点基準が違い、審判それぞれの判断に任されていました。
そのため現在と比べることは難しいですが、伊藤みどりさんは3アクセルを含む3回転ジャンプをフリーに7回組み込み、成功させましたが結果は5位。

カタリナ・ビットさんは3回転ジャンプを5回組み込み、そのうちの3ループがダブルループになるミスがありました。

動画を見るとスピードやジャンプのダイナミックさなど、伊藤みどりさんが異次元に見えます。
伊藤みどりさんは男子でも通用するのではないか?と思う位の技術力がありますよね。

ただ芸術性を競う競技という伝統があったため、伊藤みどりさんの演技は賛否が分かれていました。

ただ技術点はトップだったのに、芸術点が低く5位に抑えられたため、会場の観客からは大ブーイングが起こっています。

1989年のパリの世界選手権では、トリプルアクセルを決め初優勝を果たします。
続く1990年のハリファックスの世界選手権では準優勝。
そして金メダルが期待された1992年のアルベールビルオリンピックのオリジナルプログラム(現在はショートプログラム)では、失敗が続いていた3アクセルを3ルッツに変更し、臨みましたが失敗し4位になってしまいます。

続くフリースケーティングでは、でトリプルアクセルを失敗して転んでしまいますが、後半残り1分で再度挑みました。
そして伊藤みどりさんは銀メダルを獲得すると共に、オリンピックで史上初めて3アクセルを成功させた女子選手になったのです。

伊藤みどりさんの3アクセルの成功によって、ジャンプの高度化が起こりました。
芸術性を競う競技のフュギュアスケートは、芸術性だけでなくスポーツとしての魅力が高まっていったのです。

そして日本のスケート人気を高め、後の荒川静香さんや安藤美姫さん、浅田真央さんというスターを輩出するきっかけとなったのでした。

アルベールビルオリンピックから30年が経過しましたが、現在でも3アクセルはとても難しいジャンプです。

特にオリンピックでは、伊藤みどりさんのほかに浅田真央さん(2010年バンクーバー、2014年ソチ)、長洲未来さん(2018年平昌)、カミラ・ワリエラさん(2022年北京)の3人のみですので、いかに高難度で凄いことなのかがわかりますよね。

まとめ

今回は「下剋上!氷上の芸術だったフュギュアスケート女子シングルスをスポーツに変えた伊藤みどり」についてご紹介しました。
芸術性も技術性もどちらも大きな魅力があるフュギュアスケート。
ただ伊藤みどりさんの異次元の技術力が、技術革新に繋がったことは同じ日本人として誇らしいですね。
フュギュアスケートの今後にも期待したいです!

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